金で買えるもの
「まあ、落ち着いてくれ。こっちはミトラ。そして彼の三匹の飼い猫」
「ぎゃあああああああ!!!!」
突然バルバラさんが叫んだ。おばあさんってみんなこんな感じなんだろうか。怖くて、隣に座った彼女から精一杯身を引いた。
「そ、そのネコたち、わたしのドレスにおしっこをかけたり、ひっかいたりしないでしょうね?!」
「大丈夫です。この子たちは大人しいから――あ! こら茶トラ!」
普段は一番静かな茶トラがぼくの膝を飛び越えて、バルバラさんの膝に飛び乗った。しまった! 殺されるかも知れないと思ったその瞬間――。
「どうちまちたか~。かわいいお目目でちゅね~」
別の意味で怖い……。バルバラさんが茶トラにおでこを付けてぐりぐりしている。
茶トラはとても慎重な子だ。
初対面の人にこんなに懐くなんて――あ、そうだ。魔法使いのおばあさんというのを培養カプセルで見たことがある。この人がもしかしてそうなのか?
「なによ」
バルバラさんに睨まれてしまった。
「いいえ……別に。ネコが好きなんですか?」
大人どころか同世代とも会話らしい会話をしたことがないのだから、どう振舞えばいいのか見当がつかない。
思わず、見ればわかることを口にしてしまった。
「そうよ、悪い? そうだ! あなたにいい物をあげるわ~」
もちろん前半はぼくに、後半は茶トラに言った言葉だ。
青ざめているぼくの事など気にも留めず、バルバラさんは羽織っていたダルメシアンみたいな柄のコートに手を突っ込んだ。
その爪も真っ赤で益々魔女疑惑が深まる。
「じゃーん! これよ」
その手には金色に光る硬貨付きの首輪がぶら下がっていた。
この人、いつも首輪を持ち歩いているのか?
「あんた、さっきからジロジロなによ。これは、ずいぶん前に死んだわたしのミケのネックレスよ。愛猫の形見なのよ!!」
そう言って茶トラにその首輪――ネックレスをつけた。
「ほら、ピッタリ! この子、ミケの生まれ変わりよ!」
たしかに金色のコインは茶トラに良く似合っていたけれど、ミケって三毛猫じゃないんだろうか……。
「まったく……。ネコに小判の実演だな」
ネロみたいな逞しい大人の男さえ、バルバラさんの前では子どものようだ。
「バルバラはわたし達のパーティーに多大な金銭的援助をしてくれている。この車も、水や食料の手配も、全て彼女の助けがなければ手に入らなかった。頭が上がらないんだ。情けないリーダーですまないな」
整った顔で自虐されても「いいえ、そんな」としか答えられない。
「この辺の土地もわたしの主人のものだったのよ。聖母会の施設が建設ラッシュの時に、いくつか所有してた土地を売ったんだけど、もう、死ぬまで使い切れないくらいのお金が入って――」
「バルバラ、なにか言いたいことがあったんじゃないのか?」
唾を飛ばす勢いで語りだした彼女をネロが静かに止めてくれた。
「ああ、それね。実はイヌを買ったのよ!」




