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What a friend  作者: SHIROKI
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アミクス

 湖が紫色に光っていた理由はこれだったんだ。


 驚いて、声すら出なかった。


 ぼくが今まで見たことのある浮遊車は、ただ地面の上を浮いて進むものだった。

 彼らのはなんと、湖から飛び出してきた。


 紫の鏡のようだった湖面を割って、その姿が現れた時は、思わず尻もちをつきそうになった。

 隣にいたネロが支えてくれたけれど。


 最初、紫色の巨大魚が現れたかと思った。


 魚釣りはしないけど、本物の魚の映像を培養カプセルで見たことがある。

 信じられないほど多彩で、メタリックだった。

 あんなものが生命を持って、しなやかに水中を舞っているなんて奇跡だと思った。


 車は静かに、湖畔の大木の影に着地した。


 艶やかなスギライトパープルの超大型車だ。


「わたしの車だ。乗れ」


 本当はもっと見ていたかったけど、ネロに促されて、内側に身体を滑り込ませた。


「ここは……」


 思わず声が漏れた。


 確かに大きな車だったが、思った以上に広い。

 暗い車内は三百六十度、パネルで覆われ、赤や青、緑に不規則に点滅していた。


「座れよ」


 ハスキーな声でそう促されたが、どこが椅子だかよくわからず、手探りで見当をつけて座った。


 浮遊車は持ち主と一心同体の自動車だ。

 だから、いちいちハンドルやらブレーキやらアクセルやら……昔の人が使っていたという道具は必要ない。


 人を運ぶ、車輪のついた水陸空両用の箱と言えばいいのか。


 ぼくも移動で何度か車に乗ったことがあるけど、ネロの車はその中でも格段に大きくて恰好良かった。


「アミクス、こいつのチップを読み取ってくれ」


『承知した』


 目の前のゴミ箱が急に喋った。


「ゴミ箱じゃない」


『ゴミ箱ではない』


 ネロとゴミ箱が同時に否定してきた。


 きっと口に出していたんだ。


「ご……ごめんなさい」


 ぼくが悪いの?

 そう思いながらも、一応謝った。


「これがアミクス。最新鋭の――聖母会すら持っていない聖母脳だ」


 嘘だろ……。

 見た目はどう見てもゴミ箱だ。


 よく見たら、左右から手のように細長い鉄の棒が伸びている。

 ますます廃材っぽい。


 人間でいう顔に当たる部分で光っている二つの緑のライトも、目というより防犯ベルみたいだ。


「あの、本当に最新なんですか? なんだか拾ってきた物で作ったような……あ、本当にごめんなさい」


 気まずい沈黙が流れた。


『この人間は無害だ。卵凍結準備期間中の下等生物にすぎない』


「そうか……」


 アミクスがゴミ箱と言われて気分を害して、そう言ったわけじゃない。

 左うなじにチップがある時点で、彼の言う通りなんだ。


 指に埋め込まれているような上位の人たちとは違う。


『言っておくが、ワタシは敢えてこのような昔懐かしい、ポンコツロボットの形状をしているんだ。両目にも安っぽいカバーを付けて偽装している。馬鹿にされている方が、情報戦には強い』


 彼はプライドが高いタイプらしい。

 鼻があれば鼻息を荒げるような早口で、そう言った。


 これが、ぼくとアミクスの出会いだ。



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