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What a friend  作者: SHIROKI
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反聖母軍

 ネロの話をする。


 彼は反聖母軍のリーダーだ。


 ぼくは学校という所には行ったことがないけど、反聖母軍は過激で残酷な団体だと、脳に叩き込まれてきた。

 だから、培養センターの後ろの森からネロが現れた時は、一瞬逃げようかとも思った。


 あ、またアミクスに叱られてしまう。

 培養センターについて説明しないと。


 アミクスだって偉そうにしてるけど、実際、培養センターに入ったことはないんだ。


 でも、そんなに話すことはない。

 培養センターなんて、カプセルとカフェテリアと運動場しかないんだから。


 ぼくら左うなじは、十六歳から十九歳までをそこで過ごす。

 ぼく自身は自分の誕生日なんて知らないけど、聖母会で管理してるんだから間違いないだろう。


 五百人くらいの同世代がいたと思う。

 数えたことなんてないから正確にはわからない。

 カプセルの数や、食事や運動の時に出会った感覚で、なんとなくそう思うだけだ。


 お互い会話を交わすこともほとんどなかったし、興味もなかった。


 研究所みたいなイメージを持たれがちだけど、外観も内装も、大聖堂みたいなところだ。


 祈りの場に並んだ黒いカプセルの中で、一日の半分は横になって過ごす。

 棺桶とか吸血鬼とか、認めたくないけど、そんなワードが似合う。


 起きると定刻に運動場に出て、決められたメニューをこなす。

 湖の周囲を走ることもあれば、室内のマシンを使うこともある。


 チームで行う競技はなかった。

 実は、少し興味があったんだ。

 いつかパーティーの仲間と仲良くなったら、やってみたいな。


 食事は、別棟にある艶やかな木製のテーブルでとる。


 世話をしてくれるのは、ぼくらとそんなに年齢が違わない子たちで、ぼくは後ろめたさを感じていた。

 彼らはうなじではなくて、頭の中にチップがあると聞いたことがある。


 何となく好意を持っていた色白の可愛らしい世話役の女の子が、恥ずかしそうに教えてくれた。

 彼女もいつの間にかいなくなってしまった。


 培養センターのことはつまらないから、ネロの話に戻ろう。


 あれは、夏の終わりの夕方だった。


 その時間はネコたちにエサをやるのが日課だったから、いつも通り庭に出た。


 ぼくなんかよりも賢い三匹のトラネコは、ちゃんとその時間になると集まってくるんだ。姿が見えない時は鈴を鳴らすと、直ぐに現れる。


 庭からは、ちょうど湖がきれいに見える。


 あの日の湖の色は少し――いや、かなり変だった。

 とても紫だったんだ。


 スギライトという石のようだった。

 毒のような紫色の石だ。


 ぼくは学校にも行ってないのに、結構物知りだ。

 培養カプセルの中では、知りたいことを調べられるから。

 画像や音声が頭の中に流れてきて、いろんなことを教えてくれる。


 とにかく、湖はそのスギライトの不思議な色に染まっていた。


 スギライトの石言葉は、不穏な見た目に合わずに『浄化』だったな、なんて考えながら、ぼくはその妖しい美しさに囚われていた。


 ネコたちが、ぼくの足元にすりついていた。

 いつもはエサを催促して、にゃーにゃーうるさいくらいに鳴くのに、その日はとても静かだった。


 湖面も、風と絶交したみたいに静かだった。


「癒しの湖だな」


 ハスキーな男の人の声がした。


 初めて聞く大人の声。

 艶めいた声に絡めとられるように振り返った。


 そこにネロはいたんだ。


 恰好良かった!!


 黒いロングコートに黒いブーツの、背の高い大人の男の人だ!!

 肩幅が広くて、堂々としていて、少年の面影なんて一切感じさせない人だ。


「あの……あなたは?」


 声すらスムーズに出すことができなかった。

 緊張で喉がカラカラで、おどおど話しかけた。


「わたしはネロ。反聖母軍のリーダーだ」



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