8.再会
「ん? え?」
「なんだって?」
机上に開かれた書類には、投票制転校プログラムと書かれていた。確かに春日さんの写真だった。僕に見せるためか黒塗りの部分も多い。
「春日さん?」
「おい、春日ってお前がよく話してる子じゃねえのかよ」
御厨も身を乗り出して資料を覗き込んだ。
「投票結果……被害者から加害者」
被害者の名前は塗りつぶされていて読めない。ただ、加害者の名前は春日美琴になっている。
「正直、私にはこの子が加害者だとは到底思えなかった。特別に君を呼んだのはそのせいだ」
「春日さんは……違います。むしろ僕を助けてくれた恩人です」
「ではこの学校に彼女を受け入れても良いと?」
「はい……大丈夫です」
春日さんが転校してくるという喜びはあった。でも加害者が春日さんだということが、僕には到底理解できなかった。
「なぁ」
理事長との話を終え、僕たちは屋上へ向かう階段に座り込んでいた。
「んー?」
「春日さん」
「あぁ」
「めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか」
「はぁ……」
こいつ。いつもの調子を取り戻してる。それどころじゃないだろ。
「冗談だよ。一体どういうことなんだろうな」
この馬鹿のおかげで、僕も正気を取り戻した。
「僕に聞いても知らないよ」
「お前さ、連絡先知らないの? メッセしてみろよ」
「あぁ、知ってはいるけど」
「なんだよ」
「春日さんとメッセしたのはあの時だけなんだよ」
「はーー?」
「春日さんからもこないし」
「お前ら……。今どき小学生でももっとちゃんとしてるぞ」
「なにが?」
「もういいよ。でも今はいいんじゃないか?」
「メッセでする話しじゃないだろ。転校してくるなら尚更だ」
「俺ならすぐに聞いちゃいそう」
「お前は……嫌な奴だからな」
そうは言っても気にはなるもんだ。いつ転校してくるんだろう。早く、話が聞きたい。
それから何日か後の朝だった。
春日さんのことは気がかりだったけれど、常に考えていたわけじゃない。いつもと変わらない朝。何も考えていなかった。そんなふとした瞬間のこと。
「あ」
廊下の向こうから、見覚えのある──それでいて、どこか懐かしい顔が近づいてくる。
「町田くん?」
「春日さん!」
春日さんは、僕がこの学校にいることを知らなかったらしい。驚いた顔をしている。
その顔を見て、僕は少しだけ戸惑った。
髪が短くなっている。
以前は背中まであった髪が、肩のあたりまで切られていた。
「……髪」
「え?」
「短くなったね」




