53.繋いだ手
泣き止んだ春日さんとベンチに腰かけていた。
「ねぇ午後から学校行かない?」
「え?」
「みんなにも会わせたい」
春日さんは少しだけ俯いた。
「でも……」
「大丈夫。あいつらももういないしね」
春日さんは心配そうな顔で僕を見た。それから小さく頷いた。
「うん、わかった」
御厨にメッセージを送った。
『これから学校に行く』
『了解。駅前で待ってる』
春日さんの家に寄り、制服に着替えてから電車に乗った。
「二人で電車に乗るの初めてかな」
「そうね」
「これなら学校に行くのもなんか楽しいね」
「明日も迎えに来てくれる?」
「あぁ」
僕は春日さんの手を握った。
御厨と合流してからも、手は離さなかった。
先を御厨が歩いて、僕らはその後ろを歩く。
振り返って、僕と目が合った御厨は嬉しそうに笑っていた。
そして、僕らが教室に着いたとき、予想もしなかったことが起きた。
「春日さん!」
何人かが席を立った。
「よかった」
「大丈夫?」
「心配してたの」
拍手が起きた。
最初は数人だった。一人、また一人と拍手が広がって、気づけば教室中から拍手が聞こえていた。
「みんな……」
やがて、女子生徒たちが春日さんを取り囲んだ。何人かは泣きそうな顔をしていた。
春日さんは困ったように笑いながら、僕の方を見ていた。
「おい、町田!」
「やったなお前」
僕は男子生徒に頭をもみくちゃにされながらその輪の中に入れられた。なんでこんなことに。もうよくわからない。
やがて、先生の咳払いが聞こえた。
「はいはい、そこまで」
みんなが慌てて席に戻り、授業が再開された。
疲れた。僕は机に突っ伏して、寝に入っていたが、後ろの方から小さな声が聞こえてくる。
「ねぇ、春日さん」
「なに?」
「やっぱり町田くんと付き合ってるの?」
「……ええ」
「キャー」
だから、そういう話は本人のいないところで……。
付き合ってないし。
付き合ってるのか?
付き合うってなんだ……?




