52.向けた背中
「こんなとこに立ってたら邪魔になるわ。行きましょ」
「え?」
春日さんは僕の横を通り過ぎると、御厨と並んで歩き始めた。僕は黙って後ろを歩いた。
なんで春日さんの隣が御厨なんだよ……。
歩いている途中で見つけた広い公園に入り、静かな木陰で春日さんは立ち止まった。
御厨は春日さんの肩をぽんと叩いて、そのまま歩いて行った。
「ねぇ、達也くん……」
「え?」
「……私に何の用?」
春日さんは、僕に背中を向けたまま話し始めた。
「何も言ってくれないの?」
「……考えたんだ」
「……」
「もし御厨が僕を守るために、もう会わないって言ってきたら、どうするか」
「うん」
「ふざけんな馬鹿野郎って、殴ってたと思う」
「……」
「そんなつもりで、春日さんにも会おうと思ってた」
「今はどんなつもり?」
「春日さんの顔を見たら、そんな気持ちがどっかに行って」
「……うん」
「何も言えなくて……」
「ん……」
「ちゃんと言うのが、怖かったんだ」
「……なにを?」
「僕は、春日さんが好きだ」
「……」
「春日さん?」
「ちょっと待って、涙が……止まったら、振り返るから」
僕は春日さんを後ろから抱きしめた。
「振り返らなくていいよ」
「……うん」
「ごめんね。ずっと一人にして」
「……私も、またあなたを一人にした」
「いいよ」
「側にいれなかった」
「大丈夫」
「側にいたかった」
「うん」
「……」
「……もう離れない」
「……うん」
彼女は泣き続けていた。
僕はずっと抱きしめたまま、彼女が泣き止むのを待った。




