↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
52/56

51.行ってこい

『おはよう』


 メッセージを送って家を出る。毎日、続けていた。ほんとは毎朝、家まで行こうと思っていたんだけど、御厨にやっぱり迷惑だからやめろと言われた。


 そんな御厨は三日ほど学校をサボっている。メッセージを送っても『ちゃんと勉強しろよ』そんな返事がくるだけで、何も教えてくれない。


 三限目が始まって、ズボンのポケットに入れたスマホが震えた。


『授業を抜け出して出てこい』


 御厨からのメッセージだった。勉強しろと言ったり、抜け出してこいと言ったり、自由な奴だ。


『無理だろ』

『今、来ないと一生後悔するぞ』


 僕は立ち上がった。


「どうした?」


 先生がびっくりした様子で尋ねた。


「御厨が今、来ないと一生後悔するって」

「は?」

「なんだと思います?」


 先生は呆れたように笑うと「行ってこい」と送り出してくれた。


「行ってきます」


 僕は教室を飛び出した。


『どこだよ?』

『学校の前にいるよ』


 僕が校門を出ると、一台のバイクが止まっていた。


「御厨?」

「よぅ」

「お前、何して……」

「いいから早く乗れよ」

「は?」


 御厨にヘルメットを渡されて、バイクの後ろに跨った。

 初めてのバイクは怖くて、僕は御厨の身体をしっかりと掴んだ。

 程なくして、見覚えのある建物の前を通った。春日さんと買い物をした大きなショッピングモールだ。

 そこを少し通り過ぎたところで御厨はバイクを止めた。


「降りろ」

「はぁ、疲れた」

「そこの病院の前で待ってろ」

「病院?」


 目の前には、こころのクリニックという看板があった。


「みこが中にいる」

「え?」

「俺はバイク置いてくるから」

「ちょっと待てよ!」


 御厨は走り去っていった。

 春日さんがこの中にいる。

 急に心臓がうるさくなった。手が震えている。


 出入り口を見つめていたが、春日さんはなかなか出てこなかった。しばらくして、御厨が戻ってきた。


「まだ出てきてない?」

「あぁ」

「ったく、苦労したぜ」

「お前もしかして、ずっと春日さんを見張ってたのか?」

「これなら迷惑でもないだろ?」

「馬鹿だろ」

「お前にはできないだろ?」

「お前にしかできねぇよ」

「ほら、ここからはお前にしかできない」


 御厨は僕の肩をそっと押した。

 

 目の前に、春日さんがいた。


「達也くん……」

「春日さん」

「美琴、この子たちは?」

「お父さん、先に帰ってて」

「わ、わかった」


 僕は春日さんを見つめていた。


 何か言わなきゃいけないのに、言葉が出てこなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。