↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/56

49.忘れ物

『投票があった』

 

 僕は御厨にメッセージを送って、空を見上げた。

 満天の星空だった。

 僕は一息ついてから歩きだした。


 数日後、金村とあと何人か、知らない奴がいなくなった。

 でも、春日さんは帰ってこなかった。


 帰ってきた御厨と屋上にいた。

 もう受験シーズンだというのに何もする気にもならない。


「なぁ、投票の日いなくて悪かったよ」

「あぁ」

「お前よく自分に入れなかったな」

「……なんでだろうな」

「はぁ?」

「僕にもわからないよ。覚えてない」

「なんだよそれ」

「……」

「あのクソ親父、俺が日本にいないタイミング狙いやがった」

「あぁ」

「みこは……」

「……」

「いや、悪い」

「……いいよ」


 風の音しかしない。

 心にまた穴が開いたみたいだ。

 僕はいつから逃げ続けていたんだろう。

 あの二回目の投票制転校プログラム。

 僕は試されるのが怖くて自分に投票したんだ。


「御厨」

「なんだよ」

「昼からサボる」

「あ?」


 僕はそれだけ言って屋上から出た。

 初めて自分を信じられなかった日。

 その場所に向かった。


 電車を乗り継いで二時間ほど。

 僕は夢ヶ丘に来る前に通っていた高校の前にいた。

 春日さんと出会った場所。

 四ヶ月しかいなかったけど懐かしく感じるもんだな。


 僕は三年生の教室のドアをガラッと開けた。

 先生も生徒たちも驚いてこちらを見た。

 僕は生徒たちの顔を確認すると、「失礼しました」と言って、ゆっくりとドアを閉めた。


 次のクラスだ。

 ガラッ。生徒たちがこちらを見る。僕は顔を確認する。いない。


「お前……」

「あ」

「なにしてるんだ?」


 二年の時の担任だった。さすがに覚えているか。


「秋川……いない? ぶん殴りに来たんだけど」

「あいつは、いない」

「ねぇ、町田くんでしょ?」

「あ、あぁ」


 目の前に座っていた女子生徒が僕に声をかけた。


「先生、町田くんと話してきていいですか?」

「いやあの……問題に」

「上手いこと言っといてください」


 問題になる前に学校を出ようと、校門に向かって歩いた。

 その女子生徒は春日さんの友達で、僕が同じ学校だと知っているようだった。


「あー、春日さんから聞いたことあるな。ミキさんだっけ」

「マキ!」

「それでどうして僕に?」

「美琴から返事がないの。何か月も。既読もつかない」


 こんなところにも繋がってる。そんなことを思った。

 その話題から逃げたかったのかな。でも、逃げない。


「僕のせいだ……」


 僕はこの数ヶ月のことを話した。


「じゃあ町田くんもわからないの?」

「わからない。家にはいるようだけど」

「町田くん、どうしてここに来たの? 秋川くんがって言ってたけど」

「秋川に会って……どうしたかったのかはわからない」

「あの二人、秋川くんと山野さんね」

「うん」

「美琴を追い出して、またすぐ他の子をいじめだしたの」


 やっぱり、意味がないのか。転校しても、させても。

 金村を追い出しても、春日さんは……。


「ほら、しばらく転校のやつも使えなかったじゃん?」

「……あぁ」

「それが四月になって、また使えるようになってさ、それで二人とも転校して行っちゃった」

「……被害者の人は?」

「残ったの。よっぽどみんな、あの二人が嫌いだったんだね」


 涙と笑いが同時にこみ上げてきた。

 僕の知らないところでも、世界はちゃんと動いている。

 僕たちのことをあんなに苦しめた秋川たちも、あっさり消えてしまった。

 

 何が正しいかなんて考えてもわからない。間違えたっていい。

 僕は君に会いたい。


「ありがとう! もう行くね」

「あ、ちょっと!」


 もう迷わない。走っていく。

 君のところへ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。