46.呼び出し
一日だけ入院して、三日間、家で寝ていた。骨に異常もなく、全身の打撲。それだけだった。
『怪我して学校休んでる』
それだけメッセージを送って、目を閉じた。既読は付くのにな。返事はこない。
これだけの怪我をして帰ると、親にも事情を聞かれる。いじめられてることを、親に話せない僕が悪い。でも、なんでもない。そう答えていた。
一番の心配はミミちゃんだ。脅されてすぐ、あんなことになった。取り乱してなければいいけど。
『明日は学校に行くよ』
僕はミミちゃんにメッセージを送った。
『迎えに行きます』
ミミちゃんからそう返事がきた。なんか大丈夫そうだな。
僕はベッドから立ち上がって伸びをした。まだ痛いけど、動ける。
次の日の朝、ミミちゃんと御厨が僕を呼びにきた。四日ぶりの学校。気は進まないが、心配をかけるのも嫌だ。
「大丈夫か?」
「お前ほどじゃないよ」
「おはようございます」
やっぱり元気ないな。僕はミミちゃんの頭を撫でると、御厨と並んで歩き出した。
「あの野郎。ほんとに」
「もうやめろよ。勝っても意味ないし」
「じゃあどうするんだよ」
「んと……」
投票制転校プログラム……。いやクラスも違うし、あいつにいじめられてるわけでもない。それに……。
「どうした?」
「いや、なんでもない」
「町田さん」
後ろを歩いていたミミちゃんが、隣に並びながら言った。
「ん?」
「家まで来ておいてですけど……私と歩いてて大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
「今日は俺もいるしな」
「もうほっとこう。相手にしなきゃ、そうそう手は出してこないよ」
「……わかりました」
僕は認識が甘いのかもしれない。それでも、離れていて欲しいとはもう言いたくなかった。
学校の玄関でミミちゃんと別れて、御厨と教室に入った。
「あ、大丈夫だったの?」
僕らに気付いた女子生徒が、こっちに向かって言った。てっきり御厨に言ってるものだと思ったが、どうやら僕に言ってるようだ。
「あぁ」
「ノート貸してあげるよ」
「あ、ありがと」
なんだ……。何があった?
「御厨」
「知らん。ほら授業始まるぞ」
「……あぁ」
何があったのかわからないが、いつもの重い空気がない。御厨が一緒だからだろうか……。
今日はお弁当を持ってきてないので学食でお昼だった。
「お前、何食うの?」
「うどん。御厨は?」
「まんぷくかなー」
「……」
「どうした?」
「いや、金村。いつもならいるのに」
「そういやそうだな。まぁそのうち来るだろ」
二人の昼休憩。なんだか久しぶりな気がした。ここに来た頃は、毎日二人だったのに。
「ミミちゃんは?」
「知らねぇよ」
「遠慮してんのかな」
「そうかもな。家でも泣いてたし、親父もバタバタしてた」
「悪いことしたな……」
『ピンポンパンポーン』
校内放送だ。
「三年一組、町田達也くん。理事長室にお越しください。繰り返します……」
「呼んでるぜ」
「喧嘩のことかな……」
「俺は呼ばれなかったけどな」
「まぁ、とりあえず行ってくる」
「一緒に行こうか?」
「いいよ。僕だけに用があるみたいだ」
僕は理事長室に向かった。
「コンコン」
「どうぞ」
「失礼します。町田です」
理事長室に入ると校長と理事長がソファに座っていた。
「座ってくれ」
「いや、ここでいいです。何の話ですか?」
「あぁ。四日前の暴力事件のことだ」
やっぱそれか……。
「金村という生徒だが、7日間の自宅謹慎の処分がすでに下っている」
「は、はぁ」
「君についての処分だが」
前回、次にやったら停学って言われてるんだよな。
「その前に一つだけ確認だ」
「……はい」
「君は手を出していないのか」
「…………出してません」
「本当か?」
「神に誓ってもいいです」
「わかった。今回はそれだけだ」
「では、失礼します」
僕は頭を下げるとドアに向かった。
「町田くん。ミミに感謝するんだな」
僕はもう一度、深く頭を下げると理事長室を出た。




