42.海?
『海に行きます』
ミミちゃんからメッセージが届いた。なんだこのメッセージは。
『行ってらっしゃい』
そう返すと、すぐに電話がかかってきた。御厨だ。
「行ってらっしゃい。じゃねぇんだよ」
「なんだよ」
「お前も行くんだ」
「海に行きます。で分かるわけないだろ」
「だから電話してんじゃねぇか。駅に九時だからな。二泊ぐらいできる準備してこいよ。じゃあな」
九時って、もう三十分しかないじゃないか。てか二泊? 当日に話す内容じゃないだろ。僕は慌てて準備を始めた。
駅前。セミの鳴き声の中、小学生連れの親子が歩いている。夏休みという感じだ。
「おはようございます」
「お、おはようミミちゃん」
あれ以来か……。相変わらず元気だ。
「よぉ」
「お前、腕はもういいのかよ」
「そんなに早くは治らねぇよ。でも海行きたいだろ」
「まぁね」
「さぁ行きましょう」
電車を乗り継いで、一時間ほどで僕らは海の近くまで来た。
「とりあえずホテル行くか」
「ほんとに泊まりなんだな」
「ホテルの代金は気にしなくていいから」
「そんなこと何も考えてなかった」
「お父さんの会社が経営してるから大丈夫なの」
「……忘れてたけど、君たちほんとにお金持ちなんだね」
「利用できるもんは利用しないとね」
御厨たちに案内されたのはスパリゾート併設のホテル。チェックインまでプールで遊んで、その後はスパに行くらしい。
「ねぇ、海は?」
「見るだけ」
「えー」
「トイレで着替えて、砂まみれでさー嫌いなんだよ」
「たしかにお前は嫌いそうだ」
「それに温泉の方が目的だから」
「あぁ、そういうことね」
スパリゾートってあんまり来ないけどいいもんだな。御厨の身体も早く治るかもしれない。
プールで遊んで、スパに入って、ホテルに戻る。
「おい、晩メシ行こうぜ」
「あぁ」
夜ご飯はオーシャンビューのレストラン。贅沢してる。本当に。
「達也、後で砂浜まで付き合えよ」
「ん? あぁ」
波の音が静かに響く、真っ暗な海がどこまでも続いていた。
少し前を御厨が歩き、僕とミミちゃんは並んで歩いていた。
僕は前を歩く御厨に話しかけた。
「今日楽しかったな」
「あぁ」
「また来ましょうね」
「うん」
人が少ないところを見つけた御厨は砂浜に腰掛けた。僕はその隣に座ったが、ミミちゃんは波打ち際にしゃがんで何かを探している。
「ふぅ」
「なんだよ」
「いい加減、お前に話さなきゃと思ってた」
御厨は僕の方を向いてそう言った。
波が砂浜に打ち寄せる。
波の音って、こんなに大きかったんだな。




