33.触らないで
そんな折、風邪をひいた。最悪だ。
「三十九度……。はぁ……」
身体はきついし授業は遅れる。春日さんがノートをメールしてくれるが、目を通すのも辛い。
お見舞いに来るというが断った。こんなきついの伝染したら大変だ。
結局、一週間休むことになった。もうそろそろ定期試験なのに。
まだフラフラする。それに……。
「その包帯はなに?」
僕が腕に巻いている包帯を見て春日さんが言った。
「あぁ、家で階段から落ちたんだよ」
「本当に?」
「ほんとだって。トイレ行くときにフラっと」
「そんな馬鹿な話。信じられない」
「じゃあ、なんなんだよ」
「いや、別に……」
馬鹿と言われたが本当なんだから仕方ない。
「大したことないから」
「うん……」
何を心配してるんだか。間抜けで悪かったね。
それより、なんだかまわりから、ひそひそと聞こえるが内容は聞こえない。
春日さんと話していたからかな。まだ噂になっているんだろうか。最近はあんまり一緒にいないのに。
それから少しして、六月の定期試験の結果は悪くなかった。クラスの真ん中ぐらい。とにかく疲れた。
昼休みになって、カバンからお弁当を取り出していた時のこと。
隣の席の女子生徒がタオルを床に落とした。僕はそれを拾い上げようとした。
「触らないで!」
「え?」
「あ……ごめん。自分で取るから」
なんだ今の? 頭が痛い。胸が苦しい。ずっと女子生徒の声が頭の中に残っていた。
あの子、たぶん知ってる。このことを知ってるのは御厨と春日さんしかいないはずなのに。
考えてもわからない。わからないことは考えない。聞こう。二人に。
「御厨、ちょっと」
僕は今あったことを御厨に話した。
「んなこと言うわけないだろ。ミミにも言ってない。親父たちは知ってるかもしれないけど守秘義務もんだ」
「じゃあ……」
「みこだな」
「どうして……」
「黙ってりゃそのうちほとぼりが冷めるって」
「お前いつもそうやって言うけどさ」
「なんだよ」
「おかしいんだ最近」
「おかしい?」
「なんだか避けられてる。みんなに」
「俺も大抵の生徒に避けられてるぜ?」
「お前はそれでいいかもしれないけど、僕は気にするんだよ」
「お前には俺がいるじゃねぇか」
「……」
御厨が隣にいる。それはとても幸せなことだ。
でも……。




