32.高得点
ゴールデンウィーク明けにまた実力テストがあった。
「はい。では今から実力テストです」
「えーっ」
思わず声が出たが、隣の真面目そうな男子に睨まれた。みんな黙ってシャーペンを並べたり、机に出していた物を仕舞っている。このクラスではそれが普通だった。
長い休みの後は抜き打ちでテストがある。僕も学ばないといけない。
しかし、今回はたまたま出来が良かった。休み中に御厨から渡された問題が多数出題されたからだ。
「お前、何点だった?」
また、後ろの席から真鍋が聞いてきた。
「今回は勉強してきたところが出たんだ」
僕が成績表を見せると真鍋は苦い顔をした。どうやら僕の方が点数が良いみたいだ。
「くっ、カンニングでもしたのか」
「なんだよそれ。そんなことしないよ」
「こんなに点数が上がるわけない」
「御厨からこの辺やっとけって言われて、そこがドンピシャだった」
「ほら不正だ。問題を知ってたんだろ」
僕は御厨の方を見た。御厨は何事もなかったように座っている。
「なんだよ達也。お前も疑ってんのかよ」
まわりがザワついてきた。
「御厨ってそうなの?」
「じゃあ町田くんも?」
そんな声が聞こえる。誰が言ってるのかわからない。御厨も何も言い返さない。僕も黙っていた。
「町田くんはそんなことしないわ。悪い点を取ってヘラヘラしてるタイプよ」
春日さんがそんなことを言った。静まり返る教室。
「じゃ、じゃ今日はここまでね。みなさん、さようなら」
教室が一斉に動き出した。僕は御厨の所に行った。
「お前まで変な目で見られちゃったな」
「何にもしてないんだから堂々としてたらいいんだよ」
「堂々って……」
まだ何か言っている生徒がいたのでそちらに目線をやると、サッと目線を逸らされた。
「気分は悪いよね」
「いいから。わからなかったところ教えてやるよ」
「ありがと」
「復習するの? 私にも教えて」
近くにいた女子生徒も加わって、放課後の教室で御厨先生の講義が始まった。
「このグミ美味しいんだよ」
「グミってあんまり食べないな」
「うわ、酸っぱ」
「ははっ」
ガタン! 後ろで椅子が鳴った。
「うるさい。もっと静かにできないのか」
さっきの真面目そうな生徒が勢いよく立ち上がったのだ。
「ごめん……」
「遊びに来てるわけじゃないんだ」
「気を付けるよ」
めちゃくちゃ怒ってるな。放課後の教室で話してて、こんなに怒られることあるんだ。僕がこのクラスで学ばないといけないことは、まだまだあるらしい。
それからもテスト後は憂鬱だった。
「また御厨先生に問題を聞いたのか」
良い点を取ればカンニング。悪い点だと馬鹿にされる。女子と遊んでるからだなんて言う奴もいた。最初は真鍋だけだったのに。なんだか徐々に増えてる気がする。
「御厨、なんか疲れるよ」
「……ああ」
放課後、屋上で御厨に愚痴を言っていた。僕の話を聞いてるうちに御厨もなんだか機嫌が悪くなった。
「どうした?」
「クラスメイトは面白くないって言っただろ」
たしかに。みんな点数ばかり気にして。余裕がない。そして御厨や春日さんみたいに余裕のある生徒は煙たがられているようだった。




