表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴカイ無双―五つの戒めは、世界を自由にする―  作者: フラグメント水沢
第13章 何度でも、朝へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
135/140

第135話 終焉無双の、その先へ。

 ここはレイアノーティア。


 終わらなかった世界は、


 まだ、


 選べる。



 灰色の残滓が、


 ゆっくりと薄れていく。


 空へ色が戻る。


 砂へ風が戻る。


 鼓動が戻る。


 呼吸が戻る。


 世界は、


 まだ生きていた。



 ドミニオンが、


 ゆっくりと翼を広げる。


 先ほどまでとは違う。


 そこにあったのは、


 絶対ではない。


 迷いだった。


「終焉は保留された。だが、均衡はまだ崩れていない」


 低い声。


 紫の瞳が揺れている。



 トンヌラは、


 足元のぽめを見る。


 すでに丸くなり、


 何事もなかったように眠っていた。


「……保留かよ」


 小さく笑う。


 それから、


 ドミニオンへ視線を戻した。



「貴様らは限界を越えた。世界は一度、終焉判定を受けた。それでもなお、揺らぎを選ぶか」



 トンヌラは肩を回した。


 一歩、


 前へ出る。


 名はない。


 役割もない。


 それでも。


 迷いはなかった。



 エヴァンが叫ぶ。


「やめろ! もう十分だ! 終焉判定を受けた世界に、これ以上の誤差は許されない!」


 声が震えている。



 トンヌラは振り返らない。


「許すとか許さないとか、誰が決めるんだ」


 少しだけ笑った。



 砂漠の風が吹く。


 仲間たちが、


 トンヌラの後ろへ並んだ。


 ガルド。


 コムギ。


 フィー。


 ミラ。


 クラウス。



 トンヌラは、


 両腕を大きく広げた。


「説明しよう!!」


 声が、


 砂漠全体へ響き渡る。


 仲間たちは、


 思わず笑った。


 こんな状況でも、


 それをやるのか。


 けれど。


 誰も止めない。


 もう知っているからだ。


 この言葉のあと、


 誰かが自分自身を選ぶことを。



「五戒とは!!」


「世界に従うための戒めではない!!」


「守るために!」


「支えるために!」


「生きるために!」


「揺らすために!」


「並ぶために!」


「そして……自分で選ぶための覚悟だ!!」



 ガルドが盾を構える。


「受ける覚悟!」


 赤い光が燃え上がった。



 コムギが鍋を掲げる。


「支える覚悟!」


 金色の光が広がった。



 フィーが両手を重ねる。


「命を信じる覚悟!」


 緑の光が脈を打った。



 ミラが弦を鳴らす。


「揺らす覚悟!」


 欠けた旋律とともに、


 藍色の光が震えた。



 クラウスが糸を握る。


「選ぶ覚悟!」


 紫の光が、


 砂漠を走った。



 五つの光が、


 トンヌラの足元へ集まる。


 赤。


 金。


 緑。


 藍。


 紫。


 今までとは違う。


 誤解ではない。


 偶然でもない。


 誰かに与えられた役割でもない。


 五人が、


 自分で選んだ光だった。



 五重の円環が浮かび上がる。


 空間が震える。


 砂が宙へ浮かぶ。



 その時。


 砂を踏む音がした。



 ゆっくりと。


 一人の男が、


 五重の円環へ近づいてくる。


 勇者の鎧はない。


 与えられた光もない。


 一本の剣を握り、


 自分で選んだ道を歩いてくる。


 選択者パス・メーカー


 勇者ではなくなった男。


 サトウだった。



 サトウは、


 五色の光の前へ立った。


 剣を握る。


 橙色の光が、


 その刃へ静かに灯る。


「道を作る」


 それだけだった。



 橙色の光が、


 五重の円環の中心へ入っていく。


 六つ目の環にはならない。


 世界が用意した五戒の内側へ、


 存在しないはずの道だけを作っていく。



 トンヌラは、


 振り向きもせずに言った。


制限解除リミットブレイク……」


 口元が上がる。


「第六戒」


 静かに息を吸った。


「殻を破る、人間の力」



 世界が震えた。


 五重の円環が、


 内側から押し広げられていく。


 赤。


 金。


 緑。


 藍。


 紫。


 そして、


 橙。


 六色の光が、


 ゆっくりと一つへ重なった。



 トンヌラが、


 静かに息を吸う。


「五戒封環」


 六つの光が、


 円環の上を駆け巡る。


 空が軋んだ。


「終焉無双――」


 六人の呼吸が重なる。


「五戒封環・終焉無双ゴカイ・エンドレス!!!」



 六色の奔流が生まれた。


 世界が沈む。


 時間が止まる。


 砂粒が、


 空中で静止する。


 今まで何度も、


 無理を押し通してきた光。


 仲間たちの覚悟を束ね、


 世界へ誤解を刻んできた終焉無双。



 誰もが、


 これで終わったと思った。


 ドミニオンも。


 エヴァンも。


 仲間たちさえも。



 けれど。


 光は消えなかった。


 円環は、


 なお静かに回り続けている。



 トンヌラは、


 もう一度息を吸った。


 深く。


 静かに。



 六色の光が、


 さらにその奥へ沈んでいく。


 外へは放たれない。


 ドミニオンへも。


 空へも。


 世界へも。


 すべて、


 トンヌラの内側へ吸い込まれていく。



 トンヌラは目を閉じた。


 音が消える。


 風が消える。


 誰かに決められた役割も。


 奪われた名前も。


 何者でもないという空白も。


 すべてを、


 六色の光が包んでいく。



 そして――


 目を見開いた。


 その瞳に、


 もう迷いはなかった。


絶戒アン・リミテッド!!!」



 爆音は起きなかった。


 衝撃もない。


 光は、


 誰も傷つけない。


 誰かを倒すための力でもない。


 一本道へ整えられていた世界の奥で、


 閉じられていた何かが、


 静かに開いていく。



 ドミニオンが、


 初めて声を荒らげた。


「何をした!」



 クラウスは、


 自ら呼び出した紫の糸を見つめていた。


 一本だった糸が、


 無数の先へ分かれ始めている。


「これは攻撃ではありません」


 クラウスは、


 静かに告げた。


「世界への返答です」



 六色の光だけが、


 最後まで色を失わなかった。


 その瞬間。


 世界が、


 白く反転した。



 ここはレイアノーティア。


 第六戒は、


 世界には存在しなかった。


 だから。


 人間が、


 勝手に作った。



 第135話 了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ