第64話 真犯人を追い詰めろ①
「何を言っているのかわかりませんね。」
エリオット王子が肩をすくめて笑う。
」お前がミリアム嬢に固執していたのは知っているが、そんな嘘はよくないな。」
「違う、嘘なんかじゃ……!」
「嘘つきはお前だ。」
第一王子ユリウスが、アレクシスと共に一歩前に出る。
「管轄祭司長とエリオットを直接結びつけるものは何もなかった。だが管轄祭司長が、ルーパート王国第二王子、ディック殿下とつながっている証拠を見つけたのだ。ここにいるローゼンハイデン公爵がな。」
ユリウス王子が、ローゼンハイデン公爵が差し出した書面を手に取り、それを広げて見せる。もちろん距離があるので、誰にもその内容は見えないが、ユリウス王子は従者にそれを渡し、従者が国王にそれを渡した。
「そしてディック殿下とお前がつながっている証拠を、このアレクシスが見つけたのだ。これがその証拠の手紙だ。」
手紙をエリオット王子に突きつけるように見せつつ、そう言うユリウス王子。エリオット王子の後ろに、嘘のほころびの糸がゆらめきだした。
ミリアムはそれに手を伸ばしたが、引き抜くことは出来なかった。
「ミリぽむ、まだ追い詰めが足らないッピ!あいつ手ごわそうだッピ!」
「そうね、今まで尻尾も掴ませなかったのだもの。一筋縄では行かないかもね。でも、お父さまもお母さまも、お兄さまたちも、みんな証拠集めを頑張ってくれたもの。」
ミリアムはじっとエリオット王子を睨んだ。
「……第二王子同士、交流くらいはありますよ。それを証拠などと言われましても。」
国王に手紙を手渡すよう、従者に伝えるユリウス王子。
「今から読み上げるものは、その手紙の写しです。」
と言うアレクシス。
「ディック王子とエリオット王子の間で交わされた手紙です。ここに、加護縫いの聖女のなり方が書かれています。」
【ひとつ。加護縫いの聖女は、女神アテナに選ばれた人間に愛されたもの。その愛を失った時、別の人間が加護縫いの聖女になる。
ふたつ。女神アテナに選ばれた人間に愛されて、加護縫いの聖女になった人間が死んだ場合、新たな加護縫いの聖女が生まれる。
みっつ。加護縫いの聖女に愛された人間が選んだ者が、新たな加護縫いの聖女になる。】
「それが何か?ルーパート王国は加護縫いが生まれる国だ。その知識について尋ねたまでのこと。」
「それは他の国の人間に話してはならないことだ。」
とランディー。
「……門外不出の内容だったとは知りませんでした。それを知ってしまったことについてはいかようにも謝罪いたします。ですが、ここでアレクシスがわざわざ公開しているのですから、謝罪の意味もないのでは?」
「問題は、それを鵜呑みにして、僕にアイリーン嬢を仕向け、アイリーン嬢が僕に愛されるか、加護縫いの聖女であるミリアムを殺して、その力を奪おうとしたということだ。」
「そんな恐ろしいことを私が?」
「そしてそれを企むことが出来るのは、この国で唯一それを知っていた、エリオット王子だけだと言うことだ。」
「ルーパート王国には王族がたくさんいる。その中の誰かが他にも話したということも考えられる。何も私に限らないのでは?」
「いいや、貴殿1人だ。なぜならこれは正解じゃないからだ。」
「……どういうことです?」
「加護縫いの聖女の生まれ方は、国王と王太子にしか話されないことだ。だからディックは本当のことを知らなかった。他の王族たちは全員、女神アテナに選ばれた人間が選んだ相手が聖女になるとしか知らないんだ。」
初めてエリオット王子が目を丸くする。
「そんな筈は……。ディック殿下は、ルーパート王国の王族なら皆知ることだと。」
「ディックは自分で調べて、文献をあさり、自らの推理したものを、正解としてあなたに伝えたんだ。そしてこれは間違っている。ルーパート王国王太子として宣言しよう。」
「ミリアム嬢を殺せば、加護縫いの聖女の力が奪えると信じ、フィリップを騙して、加害させようとしたのだな?」
「ミ……ミリアムが俺を愛しているから、ミリアムから力を奪えば、ミリアムに愛されている俺が、次の加護縫いの聖女を指名出来ると言うのは嘘だったのか!?」
フィリップ王子が叫ぶ。
「お前はそう説明されたんだな。だが、加護縫いの聖女を選べるのは、あくまでも女神アテナに愛された人間だけなのだ。それをお前もエリオットも知らなかったのだ。」
ユリウス王子が言う。
「だからこの世で加護縫いの聖女のなり方を勘違いしているのは、あなたとディックの2人だけだと言うことだ、エリオット王子。」
「た……たとえそうだとして、それが何になりましょう。私は確かにフィリップに、加護縫いの聖女のなり方を伝えました。」
「それは認めるんだな。」
とユリウス王子が言う。
「それを、ミリアム嬢が加護縫いの聖女でなくなれば、自分のものにできると、フィリップが勝手に考え、行動したまでのことです。私には関係がない。」
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