第63話 王太子歓迎パーティーにて
アンバスター王国の大広間は、きらびやかなパーティー会場に変わっていた。王太子就任の挨拶に来たランディー王子を歓迎する宴が催されていた。
ミリアムにとっては久しぶりの帰国で、大国ルーパート王国の王太子妃になったミリアムと親交を深めたい貴族たちに囲まれ、ちょっと疲れてバルコニーで一息ついていた。
星空の下、グラスを片手に、「昔はあんなに悪口を言っていたくせに……現金なものね。」とつぶやいた。
次期国王が決定したランディーは、ミリアム以上に貴族たちに囲まれ、抜けてくることが出来なかったので、ミリアムは今1人だ。火照った頬に夜風が気持ちいい。
「もう少ししたら、学園に行くこともなく、ルーパート王国に完全に移住するのね。こんなことになるとは思わなかったわ。」
「何か心配だッピ?ミリぽむ。」
「ううん。今までは家族とろくに接してこなかったけど、今は仲がいいでしょ?だから離れるのがほんの少し寂しいだけ……。」
ミリアムは夜空を見上げながら言った。
「──ミリアム。」
そこへ、突然フィリップ王子が現れた。
「何か御用ですか?」
嫌な予感がしながらも、仮にも第三王子だ。あまりすげなくも出来ない。フィリップ王子はグイとミリアムに近付いた。
「いい加減素直になれよ。ランディー王子と離れてこんなところにいるなんて、俺を待っていたんだろう?」
ミリアムはびっくりして、は?と思わず淑女らしからぬ言葉が口をつく。
「え、フィリップ殿下?何の話ですか?」
「本当は政略結婚なんてイヤなんだろ?お前は俺を愛してるはずだ!」
「いや、ちょっと何を言ってるのかわからないんですけど?」
「俺からルーパート王国まで尋ねて行ってやったのに、あいつがお前を閉じ込めて、俺と会わせなかったんだよな。でももう大丈夫!俺が来たからには、お前のことを救ってやるぜ!」
ミリアムはポカンとした。
「意味がわからないんですけど……私はランディー王子と結婚するんですよ?」
フィリップは眉をしかめた。
「ふん、やはり他の奴の加護縫いの力で操られてるんだな。マダム・アビゲイルだったか、ランディー付きのあの怪しい女!」
ミリアムは頭を抱えた。
「誰も操ってませんよ!加護縫いにそんな能力、聞いたこともないですし!それにマダム・アビゲイルは私の師匠です。」
フィリップは聞いているのかいないのか、それを無視して語り続ける。
「お前さえ俺を選んでいれば、俺はこんな目に遭わなかったのに。せっかく選んだ聖女も偽物だったんだぜ。はは、笑えるだろ?」
「はあ……残念でしたね。でも、それが私となんの関係が?」
「お前が加護縫いの聖女じゃなくなれば、ランディー王子はお前に興味なくなっちまうよ。そんな力、アイリーンにポイッと譲っちまえ!お前は晴れて自由の身だぜ!」
ミリアムは心臓がギュッと握られたような気持ちになった。
「アイリーンに譲るって……そんなこと出来ると思ってるんですか?」
「アイリーンが聖女になったら、俺は後ろ盾にするためにアイリーンと結婚するけど、お前のことは大事に可愛がってやるよ……。」
「きっぱりお断りします。」
「これを飲めば、操られてる状態から解放される筈だ。心の底じゃ嬉しいだろ?ずっと好きだった男と、正妃じゃないにしても結婚出来るんだ!」
そう言って、ミリアムの腕をガシッと掴み、怪しい小瓶を取り出した。
「さあ口をあけろ。加護縫いの聖女の力をアイリーンに譲れ。そうすれば、俺がお前を愛してやる。」
「こいつ、ミリぽむになにするッピ!」
「や……やめ……!」
「──離れろフィリップ!」
「間一髪ネ。大丈夫だっタ?気付けて良かったワ。」
小瓶の中身を飲まされそうになったまさに間一髪、ランディー王子がミリアムを後ろに庇った。
「そうやってまた、ミリアムを殺そうと言うのか。」
「また?何言ってんだお前。そもそも殺す?バカ言うな!これは加護縫いの聖女の力を、別の人間に移すための薬だ!」
ランディーは呆れ顔でフィリップ王子を見る。
「そんなものは存在しない。いったい誰にそんなバカなこと吹き込まれたんだ?」
するとフィリップ王子の後ろで、嘘のほころびの糸がヒラヒラと揺れているのが見える。
「し……知らねえよ……。」
「つまらない嘘を……。その言葉、アンバスター王国の国王の前で言ってもらおう。」
ランディーはフィリップ王子を強引に引きずって、大広間へと戻った。
「私、ランディー・ルガル・フォスターは、アンバスター王国に賠償を要求する!たった今、アンバスター王国第三王子、フィリップ・アンバスターが、我が婚約者、ミリアム・フォン・ローゼンハイデンに毒を飲ませようとした現場をとらえた!」
ランディーが大声で叫び、大広間中の人間の目が、サッとこちらに向いた。
「そんなことしてねえよ!ただ俺は……。ミリアムを取り戻そうと……。」
「取り戻そうと、毒を飲ませようと?」
「毒じゃねえ!あれは……。」
ミリアムは冷静に、フィリップ王子の横に立って尋ねた。
「先ほどフィリップ殿下は、その薬を飲むと加護縫いの聖女の力が、人に移るとおっしゃいましたね。じゃあ、その薬を飲むと力が他の人に移るって、誰から聞いたんですか?」
「いや……それは……。」
「そのほころび、見逃しません!」
言い淀むフィリップ王子の後ろで揺らめく嘘のほころびの糸を、ミリアムはサッと引き抜いた。
「エ、エリオットだ!第二王子エリオットから言われたんだ!」
と叫んだ。皆の視線が第ニ王子エリオットへと集中した。
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