第56話 犯人に近づく為には
「うん、そうだね。実質、中央聖教会をのぞけば、各国に派遣されている祭司の中では、二番目に偉い立場の人だよ。」
「そんな人を巻き込めるってなると……。」
「──当然この国の王族が関わっているだろうね。実際過去の巻き戻りの際に、僕はこの国の王族が関わっているのではないかという、疑惑を持ったことがあるんだ。」
「そうなの?どうして?」
「……あんまり気持ちのいい話じゃないよ。」
「でも聞かないと判断出来ないわ。」
「……君がアイリーンを毒殺しようとしたとして、処刑されたことがあったんだ。」
「え!?そんなの覚えてな──ああ、記憶を消されたのね、うん、続けて?」
「確実に誰かにハメられたんだろうけどね。アイリーンは毒を飲んだ筈なのに、調べさせたらピンピンしてたらしいから。」
「うむむ……そう。ムカつくけど、まあ前世の話だし、今怒っても仕方がないわね。」
「……王妃としても聖女としてもふさわしくないと、死刑にされた挙句、城壁に亡骸がさらされたんだよ。」
「聖女を殺したの!?いくら殺人未遂をしたからって!?だって、殺しちゃったら、次は生まれないんでしょう?」
「そう。それがおかしいんだ。僕もそこで気付くべきだった。どの国にも貴族以上の犯罪者が入る塔があるんだ。加護縫いの聖女ならなおのこと、そこで加護縫いが出来る。」
「そうね。生かしておいて利用するのが、正解だと思うわ。それはそれ、これはこれよ。貴族や王族なら当然の考え方だわ。」
「その時から、アンバスター王国内にも敵がいると気付いたんだ。城の城壁に遺体をさらすにも、聖女を処刑するのにも、王族の許可がなくては出来ないことだよ。僕は君の亡骸を回収しようとして、後ろから狙われて殺されたんだ。」
「ルーパート王国の第一王子であるランディーを!?それこそ国際問題だわ!」
「その後で戦争になったかもね。何度かアンバスター王国とは過去戦争になってるんだ。1回目の人生で、君が死んだ後もそうだ。」
「アンバスター王国と、ルーパート王国が、戦争……?」
「アナタを国外追放したのは、フィリップ王子の独断だったのヨ。アンバスター王国の国王が、それを認めなかったノ。」
「君を返せと言ってきてね。ルーパート王国としては、そもそも君がフィリップ王子の婚約者になってしまっていたから手出し出来なかっただけで、婚約破棄後であれば、そもそもうちの聖女だ。返す理由がないからね。」
「なるほど……。これはちょっと、お父さまやお母さまにも、協力していただかないといけないんじゃないかしら。」
「ご両親に?」
「あとはアレクシス兄さまね。アレクシス兄さまは、第一王子ユリウスさまの友人役だもの。将来の右腕候補よ。今の時点で王宮に自由に出入り出来るのは、お母さまとアレクシス兄さまだもの。」
「協力してもらうには、事情を話さないといけない。君と僕が狙われているということを、果たして信じてもらえるだろうか?」
「でも、王宮を調べようと思ったら、協力は必要不可欠だわ。うちの家族は全員アテナさまの加護を得て、アリアドネとパイドラーが見えるのよ?2人に説明してもらったらどうかしら。」
「ぼ、僕が説明するッピ?自信がないッピ!だって僕は、ミリぽむが巻き戻る前の記憶がないんだッピよ!?」
「アナタは嘘がつけないから、覚えていたらすぐにバレてしまうモノ。精霊だから嘘のほころびの糸が出ないと言ってモ、隠しきれないでショ。だからアテナさまはアナタの記憶も消したのヨ。」
「な、なんか仲間はずれにされてる気がするッピ……。」
「説明は私とランディーがするワ。」
「わかった、そうしよう。ミリアムはご家族に時間をとっていただけるか、確認してもらえるかな?」
「わかった。すぐに調べてもらわないとね!」
そうして、ローゼンハイデン公爵家には、家族全員が集まっていた。ランディー王子とパイドラーから説明を受けた家族たちは、一様に困惑した表情を浮かべていた。
「にわかには信じがたい話だな……。」
「そうね、時間が巻き戻るだなんて……。」
「でもお父さま、お母さま、僕は子どもの頃からのミリアムの行動が、今回の説明で、ようやく納得出来た気がします。」
アレクシスがそう言う。
「あの刺繍大会にしたってそうです。ミリアムは僕にオスマン伯爵夫人の刺繍を見張っているよう言いました。何か起こると知っていかねれば、5歳の子がそんなことは言わないと思うのです。」
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