命の重み 8
場所は変わって、街をぐるっと囲む外壁の上に移動してきた。
二人が言うには、ここにあるものならワイバーンを倒せるかもしれない、ということらしい。
でも、そのあるものの前には、一つ障害があるみたいだ。
「ここは女子供の遊び場ではない! 早く家に帰りなさい!!」
ぎゃあぎゃあ騒がしい、この兵士風の男が邪魔してくるわけだよ。
石造りのせいで妙に圧迫感のある、無駄に長い階段を上り切ってちょっとした開放感を味わっていたというのに……もう最悪だね。
「わたしたちにも手伝わせてください!」
「これでもあたしらは冒険者なんだ。そこらのやつよりは戦い慣れてる自信があるぞ。
なあ、手が足りてないようだし、いいだろ?」
「冒険者だろうが何だろうが、部外者は立ち入り禁止だ!!」
平行線してる話をここに来た理由に戻すと、バリスタ――大型のクロスボウみたいなものだったら、ワイバーンにダメージを与えられるかもって事らしいね。
こうして軽く見回しただけでも、一定間隔で設置されてるのが見える。
しかもニコラの言うように、操作する人がいなくて空いてるやつがいくつもあるね。
「で、でんれぃ……! 伝令……っ!」
そろそろこいつを突き落として話を進めようかと思い始めたところで、へとへとに疲れた兵士が階段を上ってきた。
「一人か!? 増援はどうしたっ??」
「道中にてワイバーンの攻撃を……っ、攻撃を受けました……。部隊は壊滅です……」
「なにーーーっ!? げ、現場に案内せよ!」
大人しく成り行きを見守ってたら、僕達の事なんか忘れてどこかに行っちゃったよ。
ま、そういうことなら好きにしていいよね。
「いなくなったことだし、勝手に使わせてもらおうよ」
「……そうだな」
早速、空いてる一台の前に行き、パッと各部の構造を確かめる。
そして一通りの確認が終わると、テキパキとした動きで発射準備を――。
「これ……どうやって使うか分かる?」
「うーんと、ニコちゃんならわかるかも~?」
「お前らなあ…………」
ということでニコラ先生に教えてもらお~。
やっぱり、妄想通りにはいかないね、あはは。
「そこまで難しくないだろ。まずは矢を番えて――」
「槍じゃなくて?」
「一応矢だな。ま、どっちでも構わん。
とにかくこいつを番えたら、弦を引き絞ってだな……っ、~~っっ!!」
そう言って、やけに長くてまあまあの太さがある矢をセットするニコラ。
次に装置の両脇にあるハンドルを回し始めると、弦が少しずつ手前に下がっていく。
「なるほどね。大体理解したよ」
「ならっ! 見てないで手伝えってのっ……! そっちにもっ、ハンドルついてるだろぉがっ!!」
「えっと、これのこと? でもさ、この弦? ってやつを直接引っ張った方が早くない?
あ、やっぱりそうだ。これくらい引っ張れば大丈夫かな?」
「ふへぇ? ……マジかよ、馬鹿力にもほどがあるだろ……。
あー……ま、まあぃ、いいんじゃないか?」
どう見てもこっちの方が手っ取り早そうだったので、弦自体を掴んで最大まで引いてみた。
やっぱり思った通りだったね。
ただ、同じく装填作業をしてるお隣の兵士達が「お、おい、素手で引き絞ってなかったか……?」「はあ? んなわけあるかよ」とか話てる気もするけど、今回も無視しておこう。
「でだ。アイリスはあたしと一緒に台座を回転させる役だな。
すばしっこい標的だが、疲労はするはずだ。動きが単調になったところを狙うぞ」
「はーい、了解」
へー。この台座、よく見たら回転するようになってるんだね。
おかげで、内側の市街地方向にも発射可能ってわけだ。
今も、低空飛行中のワイバーンに向けて放たれた矢が、華麗に回避されて民家の屋根に突き刺さったよ。
操作はまた脇に付いてるハンドルでするみたいだけど、直接本体を押してもイケるっぽい。
やっぱり直感的に分かりやすい方法がいいよね。
「そんでもって、引き金はフローラに任せる。上下の角度が重要になってくるわけだが……あまり気負うなよ。
矢はたくさんある、外してもすぐに次を撃てるようにするからな」
「うん!」
フローラに優しいニコラ。いい事なんだけど、もうちょっと僕にも優しくしてほしいかも。
いやでも、雑に扱われるのもそれはそれで…………コホン。
――とまあ、流れは大体そんな感じだね。
――キミはイイ感じに狙いやすいとこに来て、テキトーにやられてくれればいいから。
――じゃあ、よろしくね~。
さて、あっちには完璧に伝えたし、これなら上手くいくでしょ~。
「きたぞ!」
「んっ……!」
早速の攻撃チャンスだ。
低空まで降りてきたワイバーンが、屋根より少し高いくらいのところで滞空し始めた。
口の端からは僅かに火が漏れ出てたりして、ブレスの準備動作ですよって感じだ。
ちょっと気になるのは、さっきまで普通に飛び回りながら火吐いてたけど……そんなの気にする人なんていないよね~。




