↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
130/134

命の重み 7

「う、嘘だろ…………」



 聞き覚えがある咆哮に釣られて外へ出ると、大空を飛び回るモンスターの姿があった。

 街の上空を旋回するように飛行するそれは、気ままに炎を吐いたり、降下しては建物を破壊したりとやりたい放題だ。



「あれって、このまえのわいばーんかな?

 うわーどうしよー。このままじゃまちがたいへんなことになっちゃうよー」



 夕日により赤く染まる街並みが、別の赤に塗り替えられていく中、予(あらかじ)め決めておいた台詞(せりふ)を言ってみた。



「「……………………」」



 が、二人は空を見つめたまま。何の反応も返してはくれない。

 えー。いくら棒読みのゴミ演技だったからって、無反応はひどくない?



「それでえっと……、どうします? また戦ってみちゃったりしてみる?

 どうせ逃げる場所もなさそうだし」


「いや無理だろ!? アレがどんだけ危険かって、嫌なほど思い知らされただろうがっ!?

 下手に刺激して、もし標的にでもされたら……っ」


「でもさー。フローラのお父さんが借金まみれになったのは、元を辿ればあのワイバーンが原因でしょ?

 なら仇(かたき)って事になるわけだし。それってやっぱり、ボク達で倒した方がいいと思わない?

 ……まあ、思わないなら忘れてくれてもいいんだけど」


「んぐっ。それはっ……けどなぁ…………」



 ホント、フローラが弱点だよね、ニコラは。

 彼女を引き合いに出した途端に黙っちゃってさ。



「パパの、かたき――うん! やるよアーちゃん。わたしワイバーンさんをたおす!」


「あ、やる? いいねいいね~、その意気でやっちゃお~。

 ニコラも、もちろんいいよね?」


「あ、あぁ」



 話がまとまったところで一応説明しておくと、この襲撃イベントは仕込みだね。

 レイスには死体を動かす能力があるから、程良く暴れるように言ってあるんだよ。


 で、何故そんなメンドーな事をしてるのかといえば、放心状態だったフローラを助けたいっていう純粋な思いからだね。

 うんまあ、純粋っていうのは盛ったって認めるとして……ヒントになったのは、あの借金取りくんの話だよ。


 フローラにも復讐っていう当面の目標を用意出来れば、ちょっとした活力くらいにはなるんじゃないかなぁーってね。



 ……でも、まさか既にニコラが解決してるなんて……。

 想定段階から破綻してて、やる意味もほぼほぼなくなってるけど……止めるタイミングを逃してしまったのでやるしかない、っていうかヤッてなかったことにしよう。



「つっても、飛ばれてたらあたしの攻撃はかすりもしないしなあ……」


「わたしの魔法も、威力が足りなくて効果がないと思う……」



 二人の言葉を聞いて、重要な事を思い出した。

 ――そういえば、どう倒すかまで考えてなかったな~。



「てなると、可能性があんのはおまえの魔法くらいじゃないか?」


「エ゛ッ。 ま、また補助魔法使おうか? そしたらやれない? え、それでも無理? ……そっか」



 といった事を話してる間に、ワイバーンを迎撃しようという攻撃がチラホラと始まっていた。

 その中には、数は多くないものの魔法攻撃も混じっており、強化されたフローラのそれよりも明らかに強力な一撃も見られる。


 しかし、それを受けても怯むどころか、どこ吹く風といった様子で飛び続けるワイバーン。

 う、うーん。これでフローラの魔法で倒せたら、明らかにおかしいよねぇ――ヨシ。



「分かった、諦めよう。無理しても仕方ないよね、うんうん。

 そうだ。思い付いたんだけど、風呂屋に逃げるのはどう? 火とか吐かれても、タイミング良くお湯に潜ればなんとかな――」


「お願いアーちゃんっ! パパの……ううん、パパだけじゃない。このままだと色んな人が不幸になっちゃう!

 そんなの、わたしもう見たくない……っ。だからお願い!!」



 潤んだ瞳をした美少女が、キス寸前の距離で願い事をしてくる。

 こ、こんな事をされたら、いくら強靭な精神で有名な僕でも揺らいでしまうよ!



「あの……えと、その…………は、はぃ」



 僕も粘りに粘ったんだけど、つい頷いてしまったね……。

 とはいえ、僕が倒しても何の意味もないから、出来ることはしたって見せかけてみようかな。


 ――あ、レイスくん? 今からちょっと魔法撃つけど、ギリギリで避けてくれる?

 ――後、ノーダメって思ってもらいたいから、そのまま余裕な感じでいてね、よろしく~。


 そんな風に心の中で語りかけると、丁度真上くらいを通過したワイバーンがこくこくと頷く姿が見えた。

 まぁこれで大丈夫かな。後は出来るだけ誤魔化せそうな魔法を探して……。



「……それじゃあ、いくよー。

 ボクの一番得意な魔法! これであいつに少しでも傷を負わせてやる!

<ウインドカッター>、いけぇーっ」



 特に意味はないが、何となく意気込みっぽい事を語りながら魔法を発動する。

 その効果は一切ないけれども、暴風の塊が肉眼でも見えるのではないかというくらいに凝縮され、狙った通りに撃ち出される。


 そして、みるみるうちに距離を詰めていき――紙一重で躱(かわ)された。



「くっ、だめかぁ。やっぱりダメージはあたえられないかぁ」


「……いまの、外れなかったか?」



 せっかく白々しい演技までしたっていうのに、ニコラが問い詰めてくるよ!

 いや、彼女も確信は持ってないはず。きっとごり押せば何とかなるね。



「そ、そんなことないよぉ? 当たった瞬間はワイバーンもちょーっとだけ揺れてたし、当たりはした……うん。

 でも、あっちの防御力が高過ぎるから、当たってないように見えただけだって」


「そう、だよね。術者のアーちゃんがいうんだもの、間違いない……。がんばってくれて、ありがと」



 簡単に騙されるフローラと、彼女が言うならってことなのか、ニコラも引き下がってくれた。

 少し離れたところから「な、なんだあの風魔法はっ!?」とか聞こえてくるけど、無視しよう。


 ってことで、僕達の戦いは終わりだね。


 レイスにはもう少し暴れてもらって、その間、僕は二人と身を寄せ合って静かに隠れてよ~。

 それで、もう死んじゃうかもしれないってことで、さっきの部屋での行為を再開してもらって、僕も参戦する流れに…………。



「なに……アレ? すごくおおきな矢、なの?」


「あれは――バリスタだ!」



 というような妄想をしていたら、空を見上げ続けていた二人が騒ぎ出した。

 へ? もう何も用意してないはずだけど、どうかしたの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。