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異世界王国と放浪少女と百合  作者: 山木忠平
2章 商人と親子
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宝探し 8

「うわ、うるさ。え、なに? 何で吠えたの?」


「降伏ノ音だ。無けれバ戦士達収まらナイ。……気分ヲ害したなら謝罪しよウ」



 凶悪そうな外見に似合わずシュンとしちゃってさ。

 意外と小心者なのかな?


 まあ、謝ってもらいたいわけじゃないし、どうでもいいや。

 そんなことよりも、あそこで倒れてる二人のことだよね~。



「いいよいいよー。大して気にしてないというか、とりあえず静かにしてて。

 さてと、二人はまだ死んでないよね。もしかして寝ちゃってる?」


「ア、アイ……りぅ……! な、んで、ここ……に…………っ」



 全く柔らかそうには見えない地面にうつ伏せのまま、もがもが答えるニコラ。

 生きてるのは生命反応があるから分かってたけど、どうしてそんなところで寝てるんだろう?



「あ、起きてるね。えっと、じゃあなんで横になったままなのって、そうか。

 動けないくらいのダメージなのね。それじゃあ<ヒール>、これで治ったかな?」


「ぉあ? 全身の痛みが消えてく……! ふぅ、助かった。…………じゃなくてっ!

 アイリスっ、おまえあの数をどうしたんだ!? というか横にいるのはっ!?」



 ニコラも隣で静かにしてる毛むくじゃらモンスターに興味を持ったみたいだね。


 この、「コボルトを筋肉マシマシにして悪人面にしてみました!」みたいなのは……正直に言うと、何か分かってないんだよね。

 でも見た目はコボルトに似てるから、多分その親戚ってところかな?



「そいつ、コボルトコマンダー……か?」


「ん? コボルトこま、コマ……? へぇ、そういう名前なのね。

 流石二コラ、よく知ってるな~」


「い、今はちゃかしはいいんだよっ。

 とにかく、どうしてそんな強力なやつが、おまえの隣で大人しくしてるのか説明してくれよ!」



 説明ねぇ。僕、そういうの苦手なんだよなぁ。

 うーん、何から話せばいいか…………。



「我々ハ服従すル。反抗は一切しないト誓った。――だから、もう勘弁して欲しイ」


「……ってことでね。なーんか戦う気がなくなっちゃったってさ。

 確か、敵対しないなら獣人になるんだよね? あ、それともモンスターのままなのかな?

 どっちなのかよく分からないから、とりあえず連れて来たんだよ」



 コレが吠えたと思ったら、コボルト達が武器を捨てて伏せし出した時はちょっと驚いたよ。

 まあ、あっちに戦う気がないからって、こっちがヤッちゃいけないってことはないんだけどね。



「……マジかよ、コボルトコマンダーが簡単に服従なんてするのか?

 しかも、こいつ一人に……? そんなことがあるのか…………」



 独り言説明ありがとね。なるほど、こういうことはあまりないのか。

 じゃあ何とか誤魔化した方がいいね。えっと、こういう時は――――。



「そ、そういえば、フローラは大丈夫?

 あれ? 何でまだ寝てるの? もしかして回復魔法が効いてなかった?」


「ううん、ケガはしてないの。でも魔法つかいすぎちゃって……」


「あぁそういうことね。とりあえず、地面に寝たままはビジュアル的にアレだから……よいしょっと。

 フローラは軽いなぁ、これならいつまでも支えてあげられるよ~」



 ということで、ふにゃふにゃフローラの腰を優しく抱いて支えてあげる。

 ちょっと土で汚れちゃってるけど、本人の言う通りどこも怪我はしてないみたいだ。



「<クリア>。うん綺麗になったね。

 それにしても、倒れるまで魔法を使うなんてかなり活躍したんじゃない?」


「……ほとんどニコちゃんがやってくれたの。

 わたしは……なにもできなかった。なにも……」


「もしかして、ボクがかけたマジックブースト切れちゃった?」


「たぶんまだ効果中だと思う。でも、わたしの魔法なんてぜんぜん相手にされなくて……。

 ……ダメだよねわたし。アーちゃんも応援してくれたのに、これじゃあ完全に足でまとい……」



 おぅ、またフローラがネガティブモードになっちゃったよ。

 せっかく強化魔法のおかげで自信を持ち始めてたのに……どうしてこんなことに?



「あっちは上位種だったんだ。し、仕方ないと思うぞ?」


「上位種? あーなるほど。普通のとは違うから、効果がなかったってことね。

 流石はコボルトこま……何とかってわけだね」


「コボルトコマンダーな? それと、そいつはコボルトウォーリアだ。

 どちらも上位種には違いないが、コマンダーはウォーリアよりも強力な個体……のはずだ。

 おそらくは、この群れの(おさ)だろうな」



 僕にはどちらも大して変わらないように見えるけど、要するにコボルト達のリーダー格って事らしいね。

 ま、コレが何なのかなんてどうでもいいや。そんなことよりもフローラだよ。



「へー、コボルトって種類が豊富なんだね。じゃあ、このコボルト達どうする?

 って、そんなこと決まってるか。彼らにいじめられちゃったみたいだし、許せないよね。

 大丈夫大丈夫、ちゃんと全員始末しておくから安心してよ~」


「え? ……え? そ、そこまでしないでいいんじゃない?」


「そう? フローラは優しいなぁ。それなら二人をいじめたそこの大きいのだけにするよ。

 あ、勝手に決めちゃったけど、ニコラもそれでいいかな?」


「あ、あぁ。あたしは構わないが……」



 ん? 歯切れが悪いね、どうしてだろう?

 うーん、やっぱり全員()っておくべきなのかな?



「よーし、決まりだね。ってことでフローラ、はいこれ持ってね」


「っ! こ、これって……」


「見ての通りダガーだよ。さっきと同じで、これならサクっとやれちゃうからさ」



 遠慮しているのか、なかなか受け取らないフローラの手を取って握らせてあげる。

 最後は物理が一番信頼出来るんだよね、うんうん。


 ちなみに、周りで眺めてるコボルト達が「ミセシメ……」とか呟いてるけど、どういう意味だろう?



「っ!? ……ぅぅ!」


「そんな首振っちゃって、可愛いな~。でも、遠慮しなくていいんだよ。

 あ、もしかしてコレが急に暴れたらって心配なのかな?

 大丈夫、その時はボクが守るから安心してよ~」



 より安心してもらうために、精一杯の微笑みと優しい声を意識して言ってみる。

 フローラも、コレが簡単に殺せるって分かれば自信がつくよ。多分ね。



「もし一回でやれなくても、何回だって刺していいんだからね。

 さ、今回ボクは見守るだけにするから、一人でやってみてよ~」


「ううんっ、遠慮とかじゃなくてねっ!? わたしのはなし聞いてるっ? アーちゃん!?」



 まだ遠慮してるフローラと一緒に、コボルトなんとかの正面に立った。

 魔力切れのフローラは僕のサポート通りに動いてくれるし、コボルトの方は項垂(うなだ)れていて騒ぐ様子もないから、すぐに片付きそうだ。



「ほら、抵抗しませんってさ。やりやすくていいね。

 じゃあはい、やってみてよ。首とか狙うのがボクのおすすめ――」


「うーもうっ! だからわたしの話を聞いてっ!!」



 どこを攻撃すればいいのか助言しようとしたら、急にフローラが爆発した。

 え? 僕何か怒らせるようなことした?



「な、何で怒ってるの? ぁ、えっと……ボク何か悪いことした?」


「怒ってませんっ! ……アーちゃんは悪くないけど、この子も悪くありません!

 なのでこの子は殺さないと決めました!」



 何で急に敬語なの?

 口調は置いておくとしても、謎の迫力を感じるから素直に従っておこう……。



「う、うん分かった、殺さないよぉ」


「……殺さないか。ま、本当に戦意はないようだしな、それもいいんじゃないか。

 となれば、こいつらが貯めこんでるもん、すべて出させたらどうだ?」


「それナらこっちダ、ついてコ……案内すル」



 僕達の話を黙って聞いていたコマなんとかが、洞窟の奥へ向けて歩き出した。

 やけに聞き分けがいいね? ふーん、話が早いのはいいけど、価値があるものなんて持ってるのかねぇ。

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