宝探し 9
「お、おぉぉ…………こいつはデカいな。
もしかしたら、あたしよりデカいんじゃないか?」
「うん、どう見ても大きいよね」
大きな石の塊を前にニコラが感嘆の息を漏らしている。
その石の塊――いや、鮮やかな緑の輝きを放つそれはただの石ではなく、何かしらの鉱物なのだろう。
「ア゛? なんかいったか?」
「あはは、な、なんでもないよ?
そ、そんなことよりさ! これってイイ物……あっ、分かった!
ミスリルとかオリハルコンとか、そういうやつなんでしょ~?」
つい、素直に同意しちゃったよね。
ニコラまで怒らせたくはないと僕だって思ってるんだよ?
というか、むしろフリなんじゃないかって思ったから、言ったのに……。
「……いまは誤魔化されてやるよ。
で、期待してるとこ悪いが、こいつは緑柱石だな。
『何それ?』って顔してんな? 要するに宝石だよ、宝石」
「あー……宝石ね。……ふーん、そうなんだ」
なーんだ、異世界特有な魔法の金属じゃないんだ……残念。
とはいえ、ニコラが持つカンテラ――敵がいなくなったため点けることにした――のゆらゆらと揺れる灯りを反射する様は神秘的かもね。
「分かりやすくテンション下がったな……」
「コレが最モ価値あるもノだ。違うものが欲しけれバ他所にイ――他を探しテ欲しい」
何? コボルトって、その見た目で宝石好きなの?
ま、いいか。何にしても宝石くらいしかないことは確定らしいね。
「いや、こいつで十分だ。たぶん借金なんて余裕で返せるんじゃないか?
……にしても、デカい原石だな……」
「はぇ? これそんなに高価なものなの?
だってさフローラ。良かったね、お父さんの借金返せるって。……あの、フローラさん? 聞いてます?」
「…………きれい…………」
彼女はじっと宝石を眺めていて、熱に浮かされたような呟きしか返って来ない。
ほっ。まだ怒ってるのかと思って一瞬焦ったよ。
意識は旅立ってるみたいだけど、そういうこともあるよ。女の子だし。
「あー……これはまぁ、いつものことだな。気にしないでやってくれ」
「宝石が好きなの? へぇ。
確かに、いいよね宝石。フローラの髪と同じ緑に輝いてて、綺麗だもんね。
ボクも好きになっちゃったかも」
「うん…………。ふぇ? わたしの髪?」
「こっちの方が濃いかな? 何にしても綺麗な緑髪だよね~。
それに、さらさらで艶やか……うん、やっぱりさっきのは少し訂正。
ボクはフローラの髪の方が好きだな~」
僕の言葉なんて聞こえていないのかと思ったけど、反応してくれて良かったよ。
おかげで、彼女の髪を自然に触る機会が出来たんだからね~。
「そう? そうかなぁ~」
「うん、絶対。こんな宝石よりも絶対綺麗。においも――」
「だぁああああーーっ! なにイチャついてんだよっ!!
もうこんなとこに用はないだろっ!? 帰るぞ!」
結局、怒られちゃったよ。流れで嗅ぐところまでもっていけそうだったのになぁ。
絶対フローラルないい香りがすると思うんだよ、フローラだけに。
……はい、ごめんなさい。
「はいはい。じゃあ、街に帰ろ――」
あれ? 何か忘れてるような……あ、そうだ。
帰るならコボルトの長ってやつに、あれだけは確認しておかないと。
「(ちょいちょい……掃除は終わってる?)」
「(今しガタ完了したところダ。目に付ク箇所のみだがナ)」
「(そ。なら問題ないね)」
実は、来る時は別ルートを通ってきたんだよ。
一匹殺すだけでも抵抗があるみたいなのに、あんな死体がごろごろしてる場所に連れて行くわけにはいかないよね。
でもそうなると、当然回り道をすることになるから遠くなったわけで。
この馬鹿デカい宝石を持ち帰るのなら、最短ルートを使いたくなるでしょ?
ってことで彼らにさせておいた掃除は、完了してるみたいだ。
「――言い忘れてたけど、帰りはちょっと違う道になるから。
あ、でも安心して? 案内はボクができるからね。
じゃあ今度こそ、ホントに帰るよ~」
「えっとえっと……そう! ね、こっちにきて! この子この子!」
少し離れたところで静かにしてるコボルトの一体に駆け寄っていくフローラ。
見た感じ何の特徴もない、たぶん通常種のやつだね。
僕には分からないけど特別なのかな? それとも何かされたとか?
「なんだ? そいつがどうかしたのか?」
「ねえ、あなたちょっと頭さげて? そうそう!
ほらほら、この子の頭なでてみて?」
「頭を? あ、ああ、わかった」
僕とニコラは、言われた通りにコボルトの頭を撫でてみている。
何だろうこの状況?
そういえばこの洞窟に入る前にも、転がる羊で同じようなことをやった覚えが…………。
「どう? ふわふわしてる? してる、よねっ??」
「そうだね、モフモフしてる。いい毛並みだね」
「ねー? やわらか~い、ふわふわ~」
犬に似た外見通り、毛はふさふさで手触りは悪くない。
うん、それはいい。それはいいんだけどさぁ。
「くーん……ハッ、ハッ、ハッ!」
「みてアーちゃん! この子お腹だしてるよ?
こっちもなでてほしいのかな~? んんーっ、ここもふわふわ~」
撫でられて調子に乗ったのか、仰向けになって撫でてくれと言わんばかりの体勢に変わった。
……フローラに触ってもらえて気持ちよくなってない? 発情期なのかコイツは。
「――やっぱり殺そう」
「なんでっ!?」「ワンッ!?」
何故かフローラだけじゃなくて、コボルトにまで信じられないものを見る目で見られた。
毛が分厚いから今は分からないけど、股間が盛り上がるようなことになる前に対処しなければ……!
「フローラはコレの毛が気に入ったのかな? じゃあ毛皮を剥ぎ取るね。
あまり見てて気持ちいいものじゃないと思うから、ちょっとそっちで遊んでてくれる? 終わったら教えるから」
「うぅ、そうじゃないっ。そうじゃないの!
も、もう! コボルトさんたちにはまだやってもらいたいことがあるの!
だから、殺しちゃダメなのっ!!」
「あ、そうなの? そっか。じゃあまだ止めとくね」
どうも色々と考えがあるみたいだ。
ニコラも反対しない様子だし、いざとなれば局部を切り落とせば問題ないか。
もう全部任せた方がいい気がするね。
それにしても、雑魚のコボルト達に何をやらせたいんだろう? 芸でも仕込むのかな?




