宝探し 10
「金貨~金貨~、金貨がいっぱい~♪」
「"金貨五百"か。ま、まずまずなんじゃないか」
持ち帰った宝石類の換金も終わり、やっとのんびりする時間が出来た。
袋一杯に詰め込まれた金貨に、二人はご満悦といったところだろうか。
ちなみに換金はいつもの冒険者ギルドじゃなくて、またあの何とかって商会まで行ってきた。
「ギルドでいいんじゃないの?」とは思ったけど、フローラの希望だったし、なにより彼女自身が交渉役を買って出てくれたからね。
話も割とあっさりまとめてくれて、そのうえ大金なのにその場で用意させちゃったというわけだ。
「そうだね~。お金が一杯で嬉しいよね~。
……ところで、フローラはああいう堅苦しい話しは慣れてるの?
やけに冷静というか、経験者って感じだったよね?」
「えへへ~。あれはねぇ、パパのマネなの。
よく商談してるパパの隣で、お話を聞いてるんだ~」
なるほどね。モンスターと戦ってた時よりも生き生きしてた理由が分かったよ。
フフ、これならメンドーな交渉とかは全部任せられるね。
「へ~。あんなつまらない話、ボクなら二回目で拒否ってるよ。フローラは凄いね~。
あ、一応確認だけど、お義父さんのことは解決でいいのかな?」
「うん! 三等分しても利子くらいは払えると思うの!
残りは継続してもらえる分があるから、ゆっくり返していけるはずだもん」
継続分というのは、制圧した鉱山の採掘権? みたいなものだね。
結局コボルト達をどうしたのかって話にもなるけど、まずは宝石の運搬係として一緒に街まで連れてきたんだよ。
「街に入れるのは無理だろうなぁ」と思ってたら、門番も普通に通してくれたし。
やっぱり友好的なら獣人ってことで受け入れられるっぽいね。
それでさよならかと思えば、今後彼らが掘り出す物を商会が買い取ることや、その利益は折半で送金もしてくれるという話になった。
事前に労働条件とかその他諸々を聞き出していたフローラは、やっぱり凄い。
鉱山を勝手に売ったりしてもいいのかと疑問に思うかもだけど、この国? 領主? が支配してるのは、街と周辺の村、それに街道くらいなので問題にもならないらしい。
僕と同じく隣で置物してたニコラから聞いた話なので、きっと正しい。きっとね。
おっと、そろそろ話を戻さないとね。
「三等分? んーと、ボクはいいよ。それも返済用にしちゃって」
「あっ、あたしの分も使えよ! ……まずはそいつが片付かないと、なんか落ち着かないからな」
何があってもフローラ優先だろうに、相変わらず言い方が不器用だね~。
――なんて言ったら怒られそうだから、口にはしないよ。
「二人とも…………うぅ、ありがとぉ。パパもよろこんでくれるとおもぅ。
というか、うちにきてぇ。おれいするからぁぁ」
「い、いや、お礼とか別にい、いいだろ? 水くさ――」
「えっ、フローラの家に!? 行くよ、絶対行く~。
まあまあ遅い時間だし、もしかしてお泊りかな? いやもうお泊りしかないよね~」
ニコラが照れて遠慮しそうになっていたので、とにかくゴリ押してみた。
美少女のお部屋に入るチャンスなんて、滅多にないからね!
***
ついて行った先にあったのは、閑静な住宅街。
どこの家にも小さな庭があり、区切りとなる生垣もしっかり手入れされていたりと、見るからに裕福な人が住むエリアみたいだ。
そこの特別豪華というわけではないものの、質素とは程遠い家がフローラの家らしい。
まあ、外観なんてどうでもいいや。そんなことよりも部屋だよ、お部屋。
前に彼女を送り届けた時は玄関までだったから、その先が楽しみだね!
……今日はフローラのベッドで寝るぞぉ、うへへ~。
「むぅぅー」
「あ、あれ? 何か怒ってる?」
「べつに…………。
ふたりだけ楽しくお泊りしててズルいだなんて、ぜんぜん思ってないもん……」
あの肝試し以来、ニコラとは一緒の部屋に止まってるんだよね。
ここへ来る前に着替えなんかを宿へ取りに戻ったから、それでバレちゃったみたいだ。
「えぇっとぉ、それはでもあの……秘密にしてたとかじゃなくってね?
話す機会がなかったというか……。仲間外れにするつもりはなかったというか…………」
「……とくべつに、今回は信じてあげましょう。でも、お泊り会するのならわたしも誘うように。わかった?」
「う、うん! もちろんだよ!!」
あんな安宿に招待するくらいなら、フローラの家に泊まった方がいいと思うけどね。
ま、連日押し掛けるのも迷惑か。よーし、狭いベッドだけど三人で川の字作っちゃうぞ~。
「なら、さっそく明日行っちゃうから――んん? 開いてる……。
パパもう帰ってきてるのかな?」
ドアに手をかけたフローラが不思議そうに首をひねってる。
帰ってる? んーそんなことはないから、鍵のかけ忘れだろうね。
「パパーー? ニコちゃんとアーちゃんがきてくれたよー?
どこにいるのー?」
「……ふーん、これが新居か。悪くはないな」
父親を呼びながら奥へ歩いていくフローラに続き、キョロキョロと家の中を見回したニコラも進んで行く。
どうやらニコラも来るのは初めてっぽいね。
その割には遠慮がないけど……友達の家に来た時ってそんなものなのかな?
経験値が少なすぎて僕には判断がつかないよ……ドキドキ。
「ぉ、お邪魔、しますぅ……」
おぉ、本当に女の子の家に上がってしまった……へへ。
――いやいや! まだ家の入口なんだよ? 悦ぶのは早過ぎるよね!
彼女の私室に案内してもらえるはずなんだから、そこからが本番じゃないか…………ぐへへぇ。
「あれー? パパいないのかな? でもカギは開いてたし……」
「もしかして空き巣か? あたしが見てくるから、ここで待ってろ」
僕がトリップしてる間に話が進んでるよ。なるほど、空き巣の可能性ね。
思ったよりも簡素というか、物が少ないように見えるのは盗られた後だからなのかな?
まあ例えそうだとしても、今この家にある"生命反応"は僕達三人分だけだから逃げた後なんだけど。
「まずはこの部屋からだ――は? うわぁああっ!?」
誰もいないはずの部屋を覗いたニコラが、何故か腰を抜かしそうなくらい驚いている。
え? ホントに泥棒がいたの……? いや、そういう驚き方でもないね。どうしたんだろう?




