宝探し 6
さてと、ここが山場っぽいし、一旦状況を再確認しておこうかな。
まず僕がいるのは広間みたいな空間の入口。
その前方には大量の雑魚――コボルト達がぐるぐる唸り声を漏らしながら迫って来ている。
なのに僕の隣には誰もいない。つまり、ぼっち確定ってわけだよ。
ま、「ここは俺に任せて先に行け」的な自己犠牲をやった僕が原因なんだけどね。
ほら、ああいうの一度はやってみたいと思うじゃん?
ただの死にたがりでも好印象になるし、他は何もしてなくてもやり切った感が出てお得じゃない?
「「「WAOOOOOOOOOOOONN!!!」」」
なんてことを考えていたら遠吠えが始まった。
洞窟内を反響し、幾重にも聞こえてくるそれ。
まるで全方位から発せられているようにも感じるのだから不思議なものだ。
「もしかして、残ったのがボク一人だけなのは不満?
はいはい。ちゃんと相手してあげるから、静かに死んでいこうね」
ということで戦闘開始なわけだけど、数だけは多いな。
ダガーやバックラーでチマチマとなんてやってられないよ。
「となればやっぱり魔法、<アイスショット>でいいかな。
手の平サイズもあれば十分だろうから、これを並べて発射っと」
そう口にすると同時に、目の前に生成した氷の礫を撃ち出す。
僕の位置を要とすれば、放射状の軌跡を描くそれらによって、綺麗な扇形が出来ていることだろう。
けれど、彼らにそんな事を考える暇は、もちろんない。
くぐもった短い鳴き声を残し、いくつもの風穴が開いた肉塊となって倒れていく。
思った通り、威力よりも数を多くした方が効果的っぽいね。
じゃあ次は氷をもっと小さくして、さらに増量してあげようかな。
あ、あと発射する角度も微妙にずらしてみてっと。
***
「G、GAU……!!」
「ま、こんなものでいいよね。後はダガーでも十分いけるだろうし」
最前列が到達するまでに使ったアイスショットは三回。
一回目は、まだ何が起きたのか分からず、欠けた仲間の隙間を埋めながら走ることが出来た。
二回目は、生き残った自身が幸運でしかなかった事と、進まなければならない、この短くて途方もない距離を理解してしまい絶望した者達が立ち止まった。
三回目は、立ち止まり動かなくなった的と、僅かに運が足りなかったそれが一掃された。
そんな感じで、全員は死んでないけど残るは数匹。
しかも、その貴重な生き残りも戦意を失ったようで、やっと武器を構えたと思ったらぷるぷる震えるだけで動かなくなってしまった。
「「「WAU! WAU!」」」
「あ、まだ何かある? ただワンワン喚かれてもダメージにはならない……んー? 何か違うのが出てきた?」
後方にいるコボルトが騒がしく吠え始めたと思ったら、木の壁が近づいて来た。
いや、壁というか盾なのかな? よく見たら、鉄っぽい金属で補強されてるね。
さらに何をするのか見守っていると、その大きな盾を前面に押し立てて迫ってくる。
おそらくは、あれで囲い込んで圧し潰そうとか、そういう防御と攻撃が一体になった作戦なのだろう。
「へー凄いね。作戦とか考える頭あったんだ。
てっきり、考えなしに数でゴリ押してくると思ってたよ」
と、思ったままを口にしてみたら、迫ってくる板の速度が上がった気がする。
さて、僕もどう対処するか考えないとね。
えっと…………。と、とりあえず、魔法かな。
んで、結果次第で柔軟に作戦を変更しよう。何と言うかこう、すごーく柔軟にね。
ということで、生成したけど使う気をなくしていた四回目のアイスショットを盾に向けて放ってみると――――。
「WOUUUッ!? GAU、GAAA…………ッ」
「えぇぇ……、もろ過ぎない?」
結果は生身の状態とあまり変わったようには見えなかった。
命中した盾にはいくつもの穴が開き、それを装備していたコボルトも致命傷を受けている。
変わったのは、即死だったのが数秒くらい生存時間が延びたってくらいなのかな。
思ったより耐久値の低い盾だったね……。あれだったら、このバックラーの方が頑丈かも。
「次はもっと頑丈なの用意してきてね。<アイスショット>っと。
これで盾を持ったのは全部かな?」
「CYAWN、CYAWNッ!!」
他の盾持ちにも同じように対処したら視界がクリアになった。
後は普通のヤツだけっぽい。これだったら戦い方は変更なしでいいや。
やっぱり、下手な小細工よりも数のゴリ押しだよね~。
「WWUUUOOOOOOOOOO!!!」
ここにきて一際重厚な咆哮が轟いた。
まだ何かあるんだ。ニコラ達の方は……んー、これだとようやく戦い始めたってところかな。
じゃあ、もう少しこいつらと遊んでから退けばいいか。
――え? 何の話をしてるのかって? それはね…………。




