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るいとも!  作者: 唐子
9/17

9.いいわけにもなりやしないけど。(前)

歩→莉子で視点が変わります。長くなったので、前後編になりました。

 

 シノの爆弾婚姻届発言から季節は巡り、残暑。

 まだまだ暑いけど、風に涼しさを感じ始めた九月も半ばの土曜。


 俺たちは畑にいた。


 諸氏は、受験勉強も本格化を迎え、そろそろエンジン点火の必要な時節だと思うだろう。俺もそう思ってた。

 土日もなく勉強しろよ受験生と言いたくもなるだろうし、実際そうしたいんだけど。

 クロのバカがやらかした。


 この夏、黒江家と犬養家の間にある畑では、夏野菜が大豊作だった。


 特にトマト。


 「違いのわかる女になる!」など、微妙に世代じゃないこと言い出して、クロはトマトばかり四種類を二畝ずつ作付けた。

 結果はどうか。


 食べても食べても減らない終わらないトマトトマトトマトトマトトマトトマトキュウリナスナスナスキュウリキュウリピーマンパプリカオクラ……やっぱりトマト。


 クロの菜園の師匠である、現役ファーマーのばあさまは、無駄を許さない。

 命をいただくありがたさに感謝し、菜園は食べきれる量だけ作ることを孫に命じていた。

 黒江家の絶対法律であるばあさまは、無駄と粗末を嫌う。ばあさまの食育は、厳しかった。

 つまりお残しも廃棄も許されない。これは、いっしょくたに育てられ、おすそ分けをいただく俺たちにも用いられる法律である。

 であればどうなるか。


 黒江家、犬養家、長船家、その他ご近所に配っても終わらない夏野菜地獄。男子高校生は肉が食べたい。

 それに、ご近所だって半農家な家ばかりなのだから、どこだって家庭菜園くらい持ってる。

 そして田舎の謎ルール。おすそ分けは、おすそ分けで返す。


 もう、わかるだろう……?

 無限野菜ループ。

 普段クロの料理に文句を言わないシノも、さすがに「おにくたべたい」と半泣きだった。

 助かったのは、自由研究で『トマトの種類別糖度の比較研究』をした智だけだった。学校でたいそう褒められたらしい。よかったな。


 俺も、何も手を打たなかったわけじゃない。

 とれる範囲で連絡網を回し、会える範囲の人間に押しつけまくった。もちろん、シノとクロの友人も含めてだ。

 予備校の夏期講習で頻繁に会った布川には、特に押しつけてしまった。ふがいない彼氏ですまない。

 唯一の救いは、女構成の布川家では、タンパク質より繊維質の方が喜ばれていたことか。毎日ビニル袋一杯の野菜を笑顔で引き受けてくれてた布川マジで女神。


 それでも実るたわわな野菜。ばらまいてもばらまいても一向減らない野菜に切りが見えたのが、やっと今週になって。トマト怖い。

 巨大トマトが街を襲う映画の夢ばかりを見た、しょっぱい高三の夏―――。


「こっちの畝から引き倒して、シノはそっち、あっくんは反対からね!智は残った所から熟したのだけ取ってって!ユイちゃんは智に教わって一緒に作業して!では開始!」


 暢気と元気と楽しげな返事が、高くなりつつある青空に響いた。

 ほんと、なにしてんだろうなー。




「こっちは乾燥、こっちは瓶詰……こないだはホールだったから今度はピューレにするか……。ピーマンパプリカキュウリは糠漬けとピクルス。ナスは糠漬けと茄子漬、オイル漬けは味よかったからまたしよう。漬け液と塩とミョウバン残りあったっけ……床下と蔵はまだ場所あったはず。最悪味噌蔵にでも置いて……あ、まってまってオリーブオイルと瓶と桶足りないかもどうしよう!」


 畑での作業を終え、通り抜けになってる納屋の作業スペースで、高速で収穫を仕分けながらぶつぶつ言ってるのはクロ。

 暑さと照りつける日差しにやられた俺たちは、風の通る日陰でぐったり一息ついていた。が。クロの本番はこれからだった。


 無計画に栽培してしまったが、クロだってない頭をひねって考えた。


 で、行き着いた答えが『保存食作り』。


 トマトは瓶詰やオイル漬け、ソースにして、ピーマンやナスやキュウリは漬物に。

 調べたレシピを印刷して、鬼気迫る勢いで処理していった。急がないと腐るしな。

 しかしそこはクロの腕前で、出来上がったトマトソースも漬物も絶品だった。

 でもこの夏のバイト代は、ほとんどこの費用に消えていったらしい。ばあちゃん厳しいな……。かわいそうなので、俺もシノも兄ちゃんも親たちも加工品の分は多少カンパした。


 座って汗の始末をしてると、グラスに入ったお茶が差し出される。水滴がついて、よく冷えてるみたいだ。

 差し出された方を向けば、麦わら帽子を後ろにのけて、両手にグラスをもつ布川。ふ、と肩の力が抜ける。でもすぐ隣に座られて、ちょっと焦った。


「布川、俺今汗臭いし汚いから、あんま近寄らない方がいいよ」

「何をいまさら。私だって同じだよ?ねぇ、あれはいいの?」


 にこりと笑われてそう言われるけど、布川は制汗剤をしっかり振ったみたいで、せっけんみたいないい匂いがしたよ……。オレにとっちゃ布川の首筋に浮かぶ汗すら目の毒なんだがそれは。……………ハッ!?いかんいかん!頭沸いてきた!

 布川の指さす方を見れば、髪をかきむしって雄叫ぶクロ。


「大丈夫。今に処理班が出動するから。ほら」


 頭を抱えたクロの背後から近づくシノ。クロの腹に腕を回して抱き上げる。あ、クロ頭突き。からのトラブル・イン・パラダイスと三角締め。まさに天国と地獄。あ、タップした。


「な?」

「……長船くん、丈夫だね……」


 ケロッと起き上ったシノとクロは、しゃがんで頭をつきあわせ、あれが足りないこれはあっただの言いあいながら、チラ裏をメモ用紙に書き出していく。


「あーして一旦暴れて息ぬかせて、買い出しメモとか作り始めるのがこの夏のパターン」

「なるほど……?莉子ちゃん、空中で半回転してたよ?運動神経いいんだね」

「俺らで一番運動できるのはシノだよ。だからあーしてピンピンしてるの。で、クロは動けるけどスポーツできない」

「えっ、意外。なんで?」

「なぜなら、ルールが覚えられないから」

「えーなにそれ」


 こらえられないように破顔する布川。うん。かわいい。(確信)

 この夏飲み慣れた冷えたドクダミ茶を摂りながら笑いあってると、自分家に戻った智が、チューペットを三本持って走り戻ってきた。


「兄ちゃんこれ、お母さんがみんなで食べなさいって!」

「おー、ありがとな」

「智くんありがとう」

「どーいたしまして!姉ちゃん、おれと半分こしよーよ!」

「いいよ、どれにする?どれが何味かな?」

「えっとねぇ」


 ……………………俺の彼女と弟がこんなにかわいい尊い。


「やだあっくんえっち!脂下がった顔して何考えてんのよ!エロいことでしょ~!」

「な?!ばっ!シノ!!」


 不意を突かれてマジ心臓が跳ねた。

 いつのまにかすぐ前に立っていたシノとクロが、ニヤニヤ笑いながらいらん連携を見せてくる。どっと場がガチャガチャしだす。


「どーせふーちゃんとさとくんマジ天使とか考えてたんでしょ~。あっくん割と汚れないものを堕とすシチュ好きだよね!」

「大体当たってるけど、エロいことは考えてない!な、い……?」

「ちょっとあっくん。そこは断言しとこーよ~……」

「ユイちゃんありがとー手伝ってくれて!智もサンキューな!」

「ううん、こっちこそ。いい気分転換になったし、こんなのお礼にもならないよ。今年暑くて、野菜高目だったでしょ?うちの母は大助かりだったの」

「ならよかったー。ほんとに、ダメになる野菜も多かったというのになぜうちの畑は……あ、瓶詰もちょっと持ってってよ!一年分はストック作っちゃったよ!ご家族手作りとか平気かな?!」

「クロ、お母さんが空になった瓶あるから、あとで持ってくって」

「まじか!こっちからとりに行くわ!」

「クロちゃん~この溶けかけの白チューペット咥えてみせて~端からぶちゅっと~。ブドウ味でもいいよ~」

「よし、シノホームセンター買い出しな。三十分で戻ってこいよ」

「え~横暴~!!」


 ぎゃいぎゃい言い合うシノとクロを見て、それがあまりにそれまでと変わらなくて、安心したような、不完全燃焼のような、もにょっとした感情が胃にたまる。


 爆弾発言の後も変わらない態度のシノ。それにつられて、徐々にいつもの調子に戻ってったクロ。


 おい、シノ。お前これ、クロは冗談に処理しちまってるぞ。いいのか?

 目の前でママチャリを投げつけられそうになってる幼なじみを、なんとなしに見やる。



 シノがクロに執着してるのを、俺は知ってる。


 クロに言えないような妄想をシノが本気で考えてることも、暴走しそうな粘着質な感情を抑え込んで、こんな風にさらっと流してることも。


 中学生になりたての頃、シノは俺にだけ告白してくれた。

 それは必要のない牽制で、必要なガス抜きだった。


 周りが思う以上に、シノはクロに執着してる。

 それをクロはわかっていない。全部冗談で流してしまう。

 言っときたいが、クロ、シノがお前の前で言う下ネタもだいぶきわどいけど、男二人になった時のシノの下ネタ、ヤバいからな?

 いつも浮かべてるうすら笑いもなく、真顔で目ぇ座らせて欲求不満を滔々吐き出すシノに、俺は青ざめざるを得ない。

 あの鈍感さに俺もシノも救われてる部分もあるけど、いい加減腹立たしい。そろそろ報われてもいいんじゃないかって、関係ないのにムカつく。あとシノの欲求不満聞くの割と本気で限界。


 俺は、初めての友達で幼なじみである二人が不幸になるのを、見たくない。

 凸と凹みたいな二人なのに、片方が向かい合っていないから、まったくかみ合っていない。

 ここ最近は特に強くそれを感じて、二人を見るのはいらいらする。手を出すべきじゃないから何もしないけど。

 クロを一発殴ったらアルキメデスみたいに自覚しないかな?



「どうしたの歩くん?怖い顔だよ」

「なー布川、クロ殴ったら思考回路正常に繋がらないかな?」

「ちょっと物騒だね!莉子ちゃんが可哀相だし、人間そんな壊れた家電みたいには治らないから」


 ちょっと早口で止める布川は優しいな。

 でも必要だと思うんだ。ここらでひとつ、でかい台風みたいなイベントが。




 ママチャリでは桶も瓶も塩もオリーブオイルも持って帰ってこれないということで、結局ばあちゃんが腰ゆわす前に使ってた荷台付きの三輪自転車が発掘された。

 口にチューペットを加えながら買い出しに行ったシノをだらだら見送り、智とクロがうちに瓶回収に向かおうと動きだし、俺と布川がそれに続こうとしたら、家中に響く激しいチャイム。客が来たらしい。


 しかし、クロが玄関に足を向ける前に、客の方からやって来た。


「アロー!まいどーたー!たっだいまー!!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああ!」

「あ、お邪魔します」



 真っ黒なストレートロングをなびかせてクロに飛びつく、2Pカラーかってくらい瓜二つの顔。

 その後ろから悠々と歩いてくる、金髪碧眼の、見たことのない美丈夫。

 つぶされるクロ。とっさに飛び退く智。(いい判断だ)驚愕の布川。頭を抱える俺。シノは買い出し中。



 …………イベントって思ったけどさ。台風御自らやって来たよ!!!!!





 * * *


 メーデーメーデー!こちら現場の莉子です!


 黒江家リビングにて、第うんにゃららららら回ママババ戦争勃発中。巻き込まれ被弾しないよう個人回避願います!

 あっくんはユイちゃんと智をつれて避難済み!さすが!慣れたもんだね!アタシは逃げられねーんだけどな!!


「盆にも暮れにも帰ってこんでこん罰当たりが!!」

「うるさいなー!あたしだって悪いと思ってるけど仕事詰まってんの!」

「何が仕事じゃ娘も放って!こん無責任が!!」

「ほんとに無責任なら帰ってこんわ!お金稼がなきゃ生活だって莉子学校にだっていかせてあげらんないでしょ!?」

「よう言うわあたしに全部任せきりにしおって!!昔からやりたいことしかせんで、ちゃらんぽらんに生きて!恥ずかしくないんか!恥を知れ!!」

「あーあーあーあーそれ言っちゃう?!それ言っちゃう?!あたしは誰にもドコにも恥じる生き方なんてしーてーまーせーんー!!」

「んじゃと!?」

「なによ!?」


 リビング続きの小座敷で睨み合う両者の間から武器になりそうなものをかたづけ、周囲の壊れそうなものをどける。代わりにクッションや柔らかくて小さいお手玉をそっと置く。

 この二人は一回やり合ったら落ち着くので放置だ。仲裁なんかして見ろ。酷い目にあう。


 そんなセコセコこそこそ動くアタシを面白そうに見てたのは、いつの間にかリビングのソファーでくつろいでいた金髪さん。目があって、にこりと笑われる。あ、お茶出してないや、すんません。




 ママが帰ってきた。突然に。金髪美人をつれて。な、なんのことかわからねーだろうーが(略)。


 忙しいママとは年に一回会えたらいい方だけど、こんな急な帰宅は初めてだ。なんか猛烈に嫌な予感がする。誰かと一緒に帰ってきたことなんて一度もないから、なおさら。


 もしかして再婚?また外国人?てか言葉通じる?

 恋愛はママの自由だけど、アタシはここ離れるのだけは勘弁だなぁ。


 煎茶と、今日の作業の後みんなにふるまおうと思ってた水まんじゅうを出しながらつらつらそんなことを考えていると、金髪さんはきれいな日本語で「ありがとう」と言ってくれる。あ、言葉通じるみたいっすね。アクセントが日本人のそれだ。


「えーと、お招きしといて放置で、ママがすいません」

「いや、急にお邪魔したのはこっちだから。気にしないでいいよ。君もごめんね。忙しそうだったのに」

「いや~、後でも大丈夫なんで……」


 いくつくらいかわかんないけど、なんか色気のある人だな。背はシノくらい?でもシノと違って胸板厚くて筋肉質。これ鍛えてそうだよなー。美形にのみ許されし黒Vネックにウォッシュ加工のジーンズ。シンプルな格好なのに地味じゃないのは、頭部がゴージャスだからか。ハチミツみたい髪は長めで襟足を結んでて、たれ目はびっくりするほど澄んだ緑色。外見だけなら王子様だ。雰囲気がエロいがらエロ王子か?


「品評は終わったかな?」


 おっと、じろじろ見過ぎたね!無礼な視線にニコニコ笑って返すこの人は、きっと人に見られるのに慣れてそう。てかまず自己紹介だよ。


「あーっと、アタシ、莉子です。黒江真子まこの娘です」

「リコ。莉子。いい名前だね。オレは寒河江旅人さがえたびと。こんなナリだけど、一応日本人です」


 驚いて「にほんじん」とバカみたいに繰り返したアタシに、寒河江さんは笑みを深めて、もう一つ驚愕の言葉。


「で、オレは君のパパ。つまり、お父さんです」


 ワッツ?


 小座敷で続いていたママババ戦争に今回ばかりは割り込み、ママに詰めよると、ママは寒河江さんに出した水まんじゅうに目をつけてねだった。こういう人だよ!!!シノもあっくんもびっくりのチョーマイペース!!!


 いったん落ち着いたばあちゃんとママもソファに座る。ばあちゃんは無言で眉間にすっごい渓谷築いてる。これ結構怒り心頭な状態。

 剣呑なばあちゃん放置で、ママは水まんじゅうをもっちもっちおいしそうに食べている。そんな二人に困ったように笑う寒河江さん。カオス。

 この場で発言なんて何の拷問かと思うが、黙っててもしょうがない。仕方なくアタシは口を開いた。


「あのー、ママや。ほんとなの?」

「なにがー?莉子、この水まんじゅう最高においしいわ!腕上げたわね!」

「ありがとね!じゃなくてさ!寒河江さんがパパって、ホントなの?!」

「そうよー」


 けろっと返すけど待って。ママ待って。


「アメリカのパパーはどういうことなの?!パパーじゃなかったの?!」

「血縁で言えば違うわよ。種はタビト。それに元旦那、黒髪だったでしょーが」

「そこは混血の神秘か遺伝の不思議かなって……」

「彼とは莉子を妊娠中に付き合って、産んでから結婚したのよ。別れたけど」


 周りの空気なんてどこ吹く風で、もっちもっち三個目の水まんじゅうを食べ終わったママ。よく食べるね夕飯入る?


「タビトは昨日偶然会って。会いたいか聞いたら『会いたい』って言うから、じゃあ行く?って連れてきた!」


 ケロッと言ってくれちゃってるけど、こっちにだって準備があるよ主に心の!!

 ばあちゃん!天を仰がないで!あなたの娘になんか言ってやってこの際ケンカになってもいいから!

 こんなママに苦笑で済ます寒河江さんは相当度量が大きいと思うな!


「オレも昨日初めて聞いたんだ。驚いたよ、娘がいるなんて」


 二十年前と全く変わらない姿なのも驚いたけど。と小さくつぶやいた言葉に全面同意します。あれでアラフォーのママは魔女だ。

 ここで、これまで黙ってたばあちゃん。

 こめかみをずっと揉んでた手を膝にそろえて、ソファーの上で膝につくくらい頭を下げる。ああ、そんな姿勢とったら、また腰ゆわすよー。


「寒河江さん。このバカ娘のしでかしたこと、謝罪は重々させていただきます」

「いえ、お顔をあげてください。謝罪は結構です。

 男女のことは、双方に責任がある。娘の存在を隠されていたのはショックですが、それは責任を果たせなかった自分に対してなので、お母様が謝罪されることではありません。

 お宅のお嬢様に無責任な真似をしたこと、知らなかったとはいえ娘を放置したこと、養育に関われなかったこと、むしろこちらが謝罪しなければならないことです」


 きりっと真面目な、でも申し訳なさのにじむ顔でばあちゃんに言い募る寒河江さん。すげぇ、きちんとしてる!これが大人!ママよく見とけよ!

 寒河江さんはその顔のままこっちを向く。そして金色の頭を下げた。


「莉子も、申し訳なかった。言い訳にもならないけど、知らなかったとはいえ、この年まで放置してしまって」


 大人からこんな真摯な謝罪なんかされたことないアタシは、当然焦る。ぎょっとしてあわあわ両手を上下させてしまった。


「あの!そんな!いらねっす!わりと毎日愉快に過ごしてたんで!ほんとダイジョブです!はい!」


 アタシのバカ全開な答えに寒河江さんはホッとしたように笑い、ばあちゃんも仕方ない子だねという、まぁいつもの様子に戻った。よかった。


 しかし、いつのまにか冷蔵庫前にいたママの「ねーこのピクルス食べてもいいー?」という、緊張感もへったくれもない声でばあちゃんの怒りが再燃して。


 ああ、シリアスなんてどこにもなかったんや……。

 ばあちゃんの怒号に、アタシは遠い目になったのであった。逃げたい。





一万字を超えた時点で「あ、これ、一話は無理だ」と菩薩顔になりました。

読みやすさ重視で前後編になります。


三角締めは、太ももで相手の頭を挟んで片腕をひっぱりながら、足で頸動脈を締上げる技。かなりの密着率。

シノにとってはご褒美なんじゃないかな!



2015.12.18 改稿。


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