特別編3 IGPを戦うエンジンとタイヤ
――IGPを戦うエンジンとタイヤ
IGP World Championship。
22台が同じスターティンググリッドへ並んでも、その中身は同じではありません。
エンジンはV8、V10、V12。
タイヤメーカーは3社。
さらに同じエンジンメーカーを使っていても、ワークス、準ワークス、カスタマーという立場の違いがあります。
だから、
「同じエンジンなのに、なぜ直線の伸びが違う?」
「予選では速かったのに、決勝後半で苦しくなるのはなぜ?」
「MUNEとFalconは同じHELIOS V10なのに、なぜ同じ速さではない?」
そんな違いが生まれます。
今回は、Season 1を戦う5つのエンジンメーカーと3つのタイヤメーカーを紹介します。
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IGPのエンジンは3.0L自然吸気。
V8、V10、V12が認められ、最大回転数は18,000rpm。
そしてIGPでは、エンジンの音そのものがメーカーのアイデンティティでもあります。
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ORION Engines
ORION V12
ドイツ
開発思想:最大出力・最高速
IGPで最も「速さ」を分かりやすく感じさせるエンジンの1つ。
ORION V12の武器は、何より高速域。
長いストレートや全開区間では、回転が上がってからの伸びが強く、超高速コースで真価を発揮します。
その代わり、低速域や燃費負荷の大きい条件では万能ではありません。
すべてに強いエンジンではなく、
「速い場所では、とにかく速い」
という性格です。
音
重厚で、遠くまで響く咆哮。
遠くからでも「ORIONが来る」と分かるほど存在感のある音。
高回転になっても軽くならず、厚い音を残したまま伸びていきます。
遠方では「……ォォォォォ……」と先に音圧が届き、加速へ入れば「グォオオオオオッ!」、全開では「グォオオオオオオォォーーン!」と長く伸びます。
使用チーム
ワークス:Orion Racing
準ワークス:Apex GP
Orion Racingは正式なワークス。
Apexは準ワークスという立場ですが、トップ争いができる高い競争力を持っています。
注目ポイント
ORION V12を積むマシンが長い直線へ入った時。
前の車との距離がどう変わるのか。
そして、その重い咆哮がどこから近づいてくるのか。
Season 1で最も分かりやすい「パワーの音」です。
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AEGIS Power Systems
AEGIS V8
イギリス
開発思想:軽量・高レスポンス・高信頼性
ORIONが高速域の伸びを武器にするなら、AEGISの魅力は反応の速さ。
アクセル操作に対してエンジンが素早く応え、低速からの立ち上がりや、ブレーキングと加速を何度も繰り返すコースを得意とします。
特にストップ&ゴーのレイアウトでは、その性格が生きます。
ワークス仕様は高レスポンスが大きな武器。
カスタマー仕様はピークを抑えつつ、扱いやすさと安定性を重視した方向です。
音
甲高く、鋭い金属音。
V8らしいシャープさがあり、高回転へ向かうほど音が鋭く伸びていきます。
重厚なORION V12とはかなり違うキャラクターです。
低回転では「キュォン、キュォォン」。アクセルを踏み始めれば「キィァァン!」と音程が跳ね上がり、シフトを挟む全開加速では「キィィンッ、キィィィーーン!」と鋭くつながります。
使用チーム
ワークス:Titan Motorsport
カスタマー:Vega Competition、Imperial GP
同じAEGIS V8でも、Titanはワークス。
VegaとImperialはカスタマーです。
注目ポイント
低速コーナーからアクセルを開けた瞬間。
そしてブレーキングから短い加速を繰り返す区間。
AEGIS V8の反応の良さが見えやすい場所です。
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HELIOS Engineering
HELIOS V10
日本
開発思想:万能型・高信頼性・扱いやすさ
MUNE RACINGが選んだエンジン。
HELIOS V10は、何か1つだけを極端に追求するタイプではありません。
レスポンス。
高速域。
燃費。
信頼性。
そのすべてを高い水準でまとめる、バランス型です。
特に複合コース、高温条件、ロングランで扱いやすく、長い決勝を組み立てるうえで強みを持ちます。
HELIOSのもう1つの特徴は、カスタマーチームへの支援が手厚いこと。
MUNEのような新規参戦チームにとって、単純な出力だけではなく、現場で扱いやすいことも重要です。
音
澄んだ高音と、厚みのある中音。
高音だけが細く伸びるのではなく、その下にしっかりした音の厚みがあります。
MUNE RACINGにとっては、MR-01を象徴するサウンドでもあります。
低回転では「ヴォン……ヴォォォン」と厚い芯を残し、コーナー立ち上がりでは「ヴァァァァァン!」、全開では「ヴァァァァァァァーーン」と滑らかに伸びていきます。
使用チーム
ワークス:Falcon Motorsport
カスタマー:Horizon GP、MUNE RACING
同じHELIOS V10を使う3チーム。
しかし、立場は同じではありません。
Falconはワークス。
HorizonとMUNEはカスタマーです。
「同じHELIOSなのに、なぜ違う?」
ここはSeason 1を見るうえで重要なポイントです。
同じメーカーのエンジンでも、ワークスとカスタマーでは、
車体との統合。
使用できる仕様。
更新時期。
マッピングや運用の自由度。
サポート範囲。
そうした部分に差があります。
つまり、
HELIOS V10だから全車同じ性能
ではありません。
特にFalconは、ワークスとしてマシンとエンジンを一体で作り込める立場にあります。
対してMUNEは、新規参戦のカスタマー。
同じ音を響かせていても、そこにはまだ大きな差があります。
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ATLAS Motorsport Technologies
ATLAS V10
イタリア
開発思想:耐久性・安定性
派手な最高速や鋭いレスポンスではなく、
最後まで安定して力を出すこと
を重視するV10。
高温。
長距離。
荒れた決勝。
そういった、マシンにもドライバーにも厳しい条件で強みを発揮します。
純粋な予選一発や超高速域だけを競えば、より尖ったエンジンに分があります。
しかし、レースは1周だけでは終わりません。
その長さを武器に変えるのがATLASです。
音
低音寄りで重厚。
派手に叫ぶというより、安定した力強さを感じさせる音です。
低回転では「ドォォン……ヴォォォン」。加速では「ヴォォォォォォン」と太くつながり、全開でも「ヴォオオオオオォーーン」とHELIOSより低い響きを保ちます。
使用チーム
ワークス:Aster GP
Season 1ではAsterのみがATLAS V10を使用します。
注目ポイント
レースが荒れた時。
気温が高くなった時。
周囲のマシンが少しずつ苦しくなってきた時。
最後まで変わらず走っているATLAS勢に注目です。
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PHOENIX Advanced Engines
PHOENIX V8
フランス
開発思想:独創性・高いポテンシャル
5メーカーの中でも、特に個性的。
条件が合えば高い性能を発揮する一方、安定した高速巡航だけを求められる展開では必ずしも得意ではありません。
市街地。
路面変化。
天候変化。
荒れた展開。
そうした「普通ではないレース」で強さを見せる可能性があります。
音
荒々しく、攻撃的。
さらにバックファイアも特徴。
音だけでも他メーカーとかなり区別しやすいエンジンです。
低回転では「ガロロロ……」と濁り、加速すれば「ガァァァァァァッ!」。アクセルオフやシフトダウンでは、負荷の変化に合わせて「ガラララッ――バンッ!」と破裂音が混じります。
使用チーム
ワークス:Mistral Engineering
カスタマー:Stratos Racing
Mistralはワークス。
Stratosはカスタマーです。
注目ポイント
路面状況が変わった時。
市街地でマシンが跳ねた時。
アクセルを戻し、再び踏み込んだ時。
PHOENIXの荒々しい音は、レースの空気まで変えてくれます。
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ワークス、準ワークス、カスタマーとは?
ここも『IGNITION』を見るうえで大事な部分です。
【ワークス】
エンジンメーカーと最も深く結びついたチーム。
エンジンとシャシーを一体で考えながら開発でき、最新仕様や更新についても有利な立場にあります。
Season 1では、
Titan Motorsport
Orion Racing
Falcon Motorsport
Aster GP
Mistral Engineering
がワークスです。
【準ワークス】
正式なワークスではないものの、メーカーから非常に強い支援を受ける立場。
Season 1では、
Apex GP
がORION V12の準ワークスです。
そしてApexは、準ワークスだからワークスより弱い、という単純な関係ではありません。
実際にトップ争いをする力を持っています。
【カスタマー】
メーカーからエンジンの有償供給を受けて戦うチーム。
Vega。
Horizon。
Imperial。
Stratos。
そしてMUNE。
カスタマーだから必ず遅い、という意味ではありません。
ただしワークスと比べれば、エンジンと車体の専用統合や、更新時期、運用自由度などで差が出る場合があります。
MUNEがSeason 1で戦ううえで、この「供給差」は重要な壁の1つです。
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3つのタイヤメーカー
エンジンと同じくらい、レースを左右するのがタイヤです。
Season 1では3メーカーが参戦します。
VORTEX RACING TYRES
総合力型
3社の中でも、幅広い条件で高い性能を発揮するタイプ。
特に高温にも強く、予選から決勝まで大きな弱点を作りにくいのが特徴です。
一発の速さ。
耐久性。
温度への対応。
どれか1つだけではなく、全体のバランスに優れます。
使用チーム
Titan Motorsport
Falcon Motorsport
Aster GP
すべてワークスチームです。
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AURORA TYRE
一発の速さ・低温型
予選一発の速さ。
そして低温条件に強みを持つタイヤ。
タイヤへ熱を入れることが難しいコンディションでも性能を引き出しやすく、ウェットでも高い適性があります。
その一方で、長距離ではやや繊細。
決勝でどこまで性能を残せるかが重要になります。
使用チーム
Apex GP
Orion Racing
Vega Competition
Stratos Racing
予選で目を引くチームが多いのも特徴です。
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TERRANOVA COMPETITION TYRES
耐久・ロングラン型
MUNE RACINGが使用するタイヤ。
予選一発だけを見れば、VORTEXやAURORAに対して苦しい場面があります。
しかし、その代わりに、
耐久性。
高温。
ロングラン。
そうした決勝向けの性能が武器です。
周回を重ねても性能を残しやすく、レース後半に強さを見せる可能性があります。
使用チーム
Horizon GP
Imperial GP
Mistral Engineering
MUNE RACING
開幕時点でMUNEが予選より決勝を重視しやすい理由の1つでもあります。
「速いタイヤ」は1つではない
ここで重要なのは、
AURORAが一番速い。
TERRANOVAは遅い。
という単純な話ではないことです。
予選なのか。
決勝なのか。
気温は高いのか、低いのか。
路面は乾いているのか、濡れているのか。
マシンがタイヤをどう使うのか。
ドライバーがどれだけ滑らせるのか。
条件によって、強いタイヤは変わります。
だから予選順位だけを見て、
「このチームは遅い」
とは限りません。
決勝で周回を重ねた時、別の姿が見えてくることがあります。
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【MUNE RACINGの組み合わせ】
MUNE RACINGのSeason 1開幕仕様は、
HELIOS V10
×
TERRANOVA COMPETITION TYRES
です。
HELIOSは扱いやすく、信頼性を重視した万能型。
TERRANOVAは予選一発より、耐久性とロングランを重視するタイヤ。
そこへ、
タイヤ管理に強い藤原蒼真。
IGPへ初挑戦する中村信治。
新規参戦のMR-01。
この組み合わせで、MUNEは最初のシーズンへ入ります。
最初から最速ではありません。
むしろ予選では苦しい戦いになる可能性があります。
でも、レースは予選だけでは終わらない。
1周目。
10周目。
ピットストップ。
タイヤの消耗。
気温。
天候。
トラフィック。
そして最後の1周。
そこまで含めて、レースです。
音にも注目してください
ORION V12の、遠くまで響く重厚な咆哮。
AEGIS V8の、甲高く鋭い金属音。
HELIOS V10の、澄んだ高音と厚みのある中音。
ATLAS V10の、低く重厚な響き。
PHOENIX V8の、荒々しい音とバックファイア。
IGPでは、姿が見える前に音が届くことがあります。
「あの音はどのエンジンだ?」
そう思いながらレースシーンを読んでもらえると、『IGNITION』の見え方が少し変わるかもしれません。
各メーカーの音は、性能と同じく正式な個性として設定されています。
エンジンが違う。
タイヤが違う。
契約が違う。
得意なコースも違う。
22台は、ただ色の違う同じ車ではありません。
それぞれ別の武器と弱点を抱えながら、同じコースへ出ていきます。
そして、その中の2台。
蒼、オレンジ、シルバーのMR-01。
HELIOS V10の音とともに、
MUNE RACINGの最初のシーズンが始まります。




