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IGNITION  作者: ムネディ


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47/71

特別編1 MUNE RACINGを知る

――世界へ挑む、小さなチームとその仲間たち

 

『IGNITION』をお読みいただき、ありがとうございます。

 

いよいよ始まるIGP World Championship。

 

世界最高峰のフォーミュラレースには11チーム、22台が参戦します。

 

その中で、物語の中心となるのが日本のMUNE RACINGです。

 

LMP2では世界を相手に戦い、勝利も経験してきたチーム。しかし、MUNE RACINGというチームには、フォーミュラカーでの実績も経験もありません。

 

「知らないことを知る」ためのMR-00から学び、その経験をもとに初のIGPマシン、MR-01を造り上げました。

 

派手な資金力も、巨大メーカーの後ろ盾もない。

 

それでも、できることを1つずつ積み重ねる。

 

Every Lap Matters.

 

1周1周に意味がある。

 

今回は開幕戦を前に、そんなMUNE RACINGで働く人々を紹介します。

 

*


宗村 宗一 42歳

 

MUNE RACING代表・創設者

 

MUNE RACINGを立ち上げた張本人。

 

大学時代にエンジニアとしてル・マンを経験し、その後、自らのチームを設立。スポンサーとの信頼を1つずつ積み上げながら活動を広げ、やがてWEC/LMP2で複数回の勝利を挙げるチームへ育てました。

 

一見すると軽い。

 

無茶なことも言う。

 

しかし、本当に無謀なことには意外と手を出さない人物です。

 

「背伸びをせず、今できることを100%やる」が基本姿勢。人を安く使って結果だけを求める考えを嫌い、必要だと判断した人材や設備にはきちんと投資します。

 

そして、肩書きや経歴だけではなく、実際にその人が何をしているかを見る人でもあります。

 

IGPという途方もない世界へMUNEを連れてきた人物であり、その目標は――世界一。

 

ただし現在は、そこまでの距離すらまだ測れていません。

 

*


桐生 美咲 35歳

 

チームマネージャー

 

宗村が暴走しそうになった時、かなりの確率で止める人。

 

もともとはMUNEのアルバイトとして働き始めましたが、宗村が仕事ぶりを評価して正式スタッフへ登用。その後、長年にわたりチームの組織運営を支えてきました。

 

冷静で常識的。責任感も強く、宗村の思いつきには容赦なく釘を刺します。

 

しかし、ただ否定しているわけではありません。

 

長い付き合いだからこそ、宗村が本当に無茶をしている時と、考えたうえで一見無茶に見えることを言っている時の違いも理解しています。

 

MUNEが世界を転戦できる組織として動くためには、マシンを速くする人間だけでは足りません。

 

その「チームそのもの」を動かしている人物の1人です。

 

*


神谷 英治 48歳

 

テクニカルディレクター/創設メンバー

 

MUNEの技術を預かる男。

 

創設時から宗村と行動し、LMP2時代からチームのマシン作りを支えてきました。

 

MR-00、そしてMR-01の開発を主導しています。

 

神谷が重要視するのは、数字の上だけで速い車ではありません。

 

突出した速さより、まず壊れず使える車を造る。

 

整備できること。壊れにくいこと。問題が起きた時に現場で対処できること。

 

レースを戦う車として成立しているかを非常に重視します。

 

IGP経験者から意見を聞くことはあっても、Season 1におけるMUNEの車両技術の最終決定を担うのは神谷です。


*

 

藤原 蒼真 36歳

 

No.7 レースドライバー

 

MUNE RACINGのエースドライバー。

 

28歳でIGPデビュー。その後、テスト、代役、スポット参戦などを重ねてきた苦労人です。

 

32歳の時にはEisenwerkから出場し、5位を記録。

 

そして36歳となった今、MUNE RACINGの正規ドライバーとしてIGPへフル参戦します。

 

性格は寡黙で冷静。

 

一発の速さだけでトップ勢を圧倒するタイプではありません。

 

その一方で、マシンへの適応、タイヤ管理、ウェットコンディション、荒れた展開、セットアップ、そして「結果を持ち帰ること」に強みを持ちます。

 

経験のないMUNEにとって、IGPを知る藤原の存在はドライバーという枠だけには収まりません。

 

MR-01を走らせながら、チームと一緒に育てていく重要な存在です。

 

*


中村 信治 25歳

 

No.22 レースドライバー/IGPルーキー

 

もう1台のMR-01を任される若手ドライバー。

 

22歳から24歳まで国内トップフォーミュラに参戦し、通算1勝、表彰台4回、年間最高6位。

 

24歳の時、雨のレースで初勝利を挙げました。

 

つまり――国内王者として鳴り物入りでやって来たドライバーではありません。

 

それでもMUNEは、彼をIGPへ連れてきました。

 

武器は攻撃的なブレーキング。そして、若手ながら技術への理解があり、開発面でのフィードバックにも強みを持っています。

 

藤原が「IGPを知っているドライバー」なら、信治はMUNEと一緒に「IGPを知っていくドライバー」。

 

開幕戦は、彼にとって初めてのIGP公式戦です。


* 


朝倉 智樹

 

チーフストラテジスト

 

MUNE RACINGのレース戦略全体を統括する人物。

 

過去に他のIGPチームやEisenwerkで仕事を経験し、藤原が32歳でスポット参戦した際にも彼を担当しました。

 

必要な情報だけを短く伝え、データだけにも、ドライバーの感覚だけにも偏らず、両方を照らし合わせて判断するタイプ。

 

奇策を打って目立つことよりも、今ある条件から最も良い結果を持ち帰ることを考えます。

 

藤原とは、すでにIGPで一緒に戦った経験を持つ間柄。

 

Season 1では7号車と22号車の両方を横断し、タイヤ、トラフィック、ピットタイミングなどを含むチーム全体の戦略を組み立てます。


* 


ラスタス・パルナー 52歳

 

技術アドバイザー/開発補佐

 

No.7 藤原蒼真担当レースエンジニア

 

MUNEの中でも数少ない、豊富なIGP経験を持つ人物。

 

かつてApexでレースエンジニアを務めていました。

 

藤原とは、藤原が30歳の頃にIGP合同タイヤテストで接点を持ち、その翌年には合同開発テストで同じタイヤ評価プログラムを担当。

 

そこで互いの仕事ぶりを直接知りました。

 

藤原は、限られた時間と部品の中で何を先に確認するべきかを素早く判断するラスタスの能力を評価。

 

ラスタスもまた、藤原を「速い、遅いだけではなく、なぜそうなったのかを説明できるドライバー」と評価しています。

 

数年後、MUNEがIGP参戦準備を進める中で、藤原が宗村へラスタスを推薦。

 

その縁からMUNEへ加わりました。

 

温厚で飄々とした性格ですが、限られた予算と人員の中から現実的な改善方法を探す能力に優れています。

 

Season 1では技術アドバイザー、開発補佐に加え、No.7 藤原蒼真の担当レースエンジニアも兼務します。

 

レース中は藤原との主要な無線窓口となり、車両状態、セットアップ、技術的なフィードバックを確認します。

 

ただし、MUNEの技術トップではありません。

 

車両技術の最終決定者は神谷。

 

レース戦略全体の責任者は朝倉。

 

ラスタスはその2人と連携しながら、藤原と7号車を最も近い位置で支えます。

 

経験を押しつけるのではなく、神谷を立て、結城をはじめとする若いエンジニアへIGPでの仕事の進め方を伝えることも役割の1つです。


* 


結城 遼 29歳

 

No.22 中村信治担当レースエンジニア

 

信治と無線でやり取りしながら、22号車のレースを支えるレースエンジニア。

 

国内でデータエンジニアを経験した後、欧州F3相当カテゴリーへ渡り、データエンジニアから若手ドライバー担当レースエンジニアへ。

 

その後、日本へ戻り、国内トップフォーミュラでレースエンジニアを務めました。

 

ドライバーが「何かがおかしい」と訴えた時、最初からその感覚を否定しないのが結城の特徴。

 

まずデータと照らし合わせます。

 

ただし、結城自身にとってもIGPは初めての世界。

 

信治とはMUNEで初めて組み、MR-01のシェイクダウン以降、お互いを「遼」「信治」と呼ぶ関係になっています。

 

IGPルーキーの信治。

 

IGP初挑戦のレースエンジニア、結城。

 

22号車は、2人で世界へ挑みます。


* 


柴崎 哲也 44歳

 

チーフメカニック兼ピットクルー責任者

 

マシンを実際に組み、直し、レースへ送り出す現場の責任者。

 

LMP2参戦開始時からMUNEを支えてきた古参です。

 

話し方は短く、歯切れのいい親方タイプ。

 

安全軽視、確認不足、手順の省略には厳しく接します。

 

ただし、真剣に考えたうえでの失敗まで責める人間ではありません。

 

速いマシンを設計しても、最後にそれを組み上げてコースへ送り出せなければレースは始まらない。

 

MUNEの「現場」を象徴する人物です。

 

*


篠崎 美月 24歳

 

メカニック/22号車メカニック班

 

上総工科大学の学生として産学連携に参加したことからMUNEと関わるようになり、MR-00関連作業で整備性の問題を見抜いたことを柴崎に評価されました。

 

小柄な体格ですが、工具の使い方、身体の使い方、そして作業手順を工夫して補います。

 

性格は負けず嫌い。

 

経験豊富なメカニックたちの中で、自分もプロとしてマシンを触る。

 

美月にとってもSeason 1は、大きな挑戦の始まりです。


* 


白石 玲奈 28歳

 

スポンサー・マーケティング担当

 

レーシングチームは、速いだけでは走り続けられません。

 

その現実と戦っているのが白石です。

 

以前は一般企業で働いていましたが、海外旅行中にル・マンでMUNEと出会い、宗村に対人能力を見込まれてスカウトされました。

 

スポンサー企業との窓口や対外折衝を担当。

 

仕事における考え方は、

 

「信頼は、数字より先に積み上げるもの。」

 

企業から資金を得ることだけではなく、「またこのチームと仕事をしたい」と思ってもらえる関係を作ることを重視しています。


* 


小野寺 真理 38歳

 

経理・財務責任者

 

レースには、とにかくお金がかかります。

 

ましてMUNEが挑むのは世界最高峰。

 

小野寺はチームの財布を預かる人物です。

 

市原の製造業で経理を経験した後、LMP2時代からMUNEを支えてきました。

 

単純に「お金がないからダメ」と止めるのではなく、必要な投資であれば資金繰りを含めて「どうすれば実現できるのか」を考えるタイプ。

 

夢だけではレースはできない。

 

しかし、数字だけを見ていても前へ進めない。

 

その間を支えています。


* 


佐伯 佳奈 34歳

 

総務・人事責任者

 

IGPへ挑戦するためには、マシンだけでなく組織そのものを大きくしなければなりません。

 

採用、勤怠、社会保険、海外出張、ビザ、宿泊――。

 

レース中継にはまず映らない仕事を担当しているのが佐伯です。

 

一般企業で総務・人事・採用・労務を経験した後、MUNEがIGPコンストラクターへ組織を拡大していく段階で加入しました。

 

世界を転戦するレーシングチームも、働く人たちの生活が成り立たなければ動きません。

 

MUNEの日常を裏側から支える人物です。


* 


榊原 直哉

 

空力・CFD・解析・シミュレーション担当

 

上総工科大学の高瀬重臣教授の推薦をきっかけにMUNEと接点を持った技術者。

 

空力、CFD、解析、シミュレーションを担当します。

 

当初はMUNEへの転職に消極的でしたが、チームの技術的な可能性と組織を実際に見たことで加入を決めました。

 

フォーミュラカーにとって空力は極めて重要。

 

経験のないMUNEが世界との差を縮めていくうえで、その解析を担います。


* 


橘 ことね

 

PR/ブログ・SNSコーディネーター

 

MUNEの「外向きの顔」を担当するスタッフ。

 

イベントや受付スタッフとしてチームに関わったことをきっかけに、文章力とSNSへの適性を評価されて現在の役割へ配置されました。

 

レース結果だけでは見えないスタッフの日常、挑戦、仕事を外へ届けます。

 

なお、スポンサー交渉を担当する白石とは役割が異なります。

 

白石が企業との関係を作る人なら、ことねはMUNEというチームを外の世界へ伝える人です。


* 


牧村 和代

 

ファクトリー食堂責任者

 

MUNEの「食」を支える、通称「食堂のおばちゃん」。

 

世界最高峰へ挑むレーシングチームでも、人間は食べなければ働けません。

 

エンジニアも、メカニックも、ドライバーも。

 

ファクトリーで働く人たちの日常を長く支えてきた存在です。


* 


牧村 千夏

 

食堂スタッフ/弁当担当

 

和代の娘。

 

Season 1では各グランプリにも帯同し、現地でチームの食事を支えます。

 

広報でもスポンサー担当でもなく、あくまで食事を担うスタッフ。

 

長いシーズンを世界各地で戦うMUNEにとって、「ちゃんと食べられる」という当たり前を守る大切な仕事を担っています。

 

そして、MR-01へ

 

代表がいる。

 

ドライバーがいる。

 

設計する人がいる。

 

組み立てる人がいる。

 

ドライバーと無線でつながるレースエンジニアがいる。

 

2台の戦略を考える人がいる。

 

スポンサーを探す人がいる。

 

発信する人がいる。

 

組織を支える人がいる。

 

食事を作る人もいる。

 

誰か1人だけでは、レーシングチームは成立しません。

 

MUNE RACINGは、世界最強の組織ではありません。

 

むしろ開幕時点では、IGPでどこまで戦えるのかすら分からない新規参戦チームです。

 

LMP2で勝った経験が、そのままフォーミュラの世界で通用する保証もありません。

 

だから、知らないことを1つずつ知る。

 

失敗するなら、次に同じ失敗をしない。

 

走れたなら、その1周から何かを持ち帰る。

 

Every Lap Matters.

 

22台が並ぶ開幕戦。

 

その中へ、2台のMR-01が入ります。

 

No.7――藤原蒼真。

 

その無線の向こうには、ラスタス・パルナー。

 

No.22――中村信治。

 

その無線の向こうには、結城遼。

 

そして、その2台のさらに後ろには、ここで紹介した人たちがいます。

 

MUNE RACING、最初のIGPシーズン。

 

いよいよ開幕です。

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