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俺が主人公になる話  作者: あんぷ
第二章:王都ビアラム
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集う期待

 「お前たちには今日から命を懸けて戦ってもらう。もちろん拒否権はない」

 大きな扉が開くやいなや、突然、険しい男の人に俺たちはそう言われた。

 「君たちは’’羊学生’’ではなくて、”羊人”としていきなりだが、戦場に出てもらう」

 「羊学校に入れるといわれてザムさんに連れてきてもらったが、いきなりだな。それにまだあんたらに名前も知らない」

 ラエルが険しい男の人にそう言い放つ。

 「これは失礼したねぇ。私は羊学校の総校長をしているダフト・クールァ。そして隣の険しい若い兄さんが羊会の社長兼、この国の国王様ノエル・シーファだよぉ」

 隣に座っていた老人、ダフトが代わりに答えた。

 ザムさんが社長にはいずれ会うと言っていたから、予想はしていたが、やはりか……。

 ノエルの眼は冷たく、視線で刺されているように鋭い。

 「そういうわけで、名乗ったぞ。それで、返事を聞かせてもらおうか」

 自分では言ってねーじゃん。そう思いながら、ラエルの方を覗いてみる。

 ラエルの顔には困惑の色は見えない。それどころか、さっきより、緩んでいた。

 こいつ、なんとなくこうなること最初から知ってたのか。

 「ああ、よろこんで」

 俺がラエルに聞こうとするまえにラエルが答えた。

 「おま!勝手に!わかってるのか!?いきなり死地に放り込まれるんだぞ!?」

 「だからいいんじゃないか。そっちの方が効率よく強くなれるじゃないか」

 あ、こいつ脳筋野郎だったな。ラエルとの稽古を思い出す。

 「それに、お前も驚いてるが、どうしても無理ってわけじゃないだろ?」

 「……」

 実際、俺はそうだった。驚きはした、したがさっきの話を聞き、もうこの都市には時間がないことを知っている。学校でちまちま鍛錬していては間に合わないのである。

 それに、実戦なら道中もした。死地にも一度あった。

 恐怖心はそれほどなかったのである。

 「ああ、いいですよ!よろこんで!」

 するとザムさんは突然笑いながら、椅子からドカッと立ち上がった。

 「ガッハハハハ!ほらな、社長!こいつら面白いだろ!あんたの力なんぞ使わんでも羊会に入りやがった」

 見るとノエルは少し意外そうな顔をして俺たちを見ていた。

 「確かにな。念のため”かけといた”が必要なかったようだ。お前が言うように変わったやつらだな」

 人のことを変わっただの面白いだの失礼な人たちだ。

 そう睨みつけていると、スッとノエルの顔が戻った。

 「では羊会の説明をさせてもらおう。俺たちは基本的に何人かのグループに分かれて戦いにでている。10人以上の規模のものもあれば2人だけ、というものもある。単独で行けるのは五大羊会並みの実力者のみ。そのため、君たちの配属先を勝手ながら決めさせてもらった」

 現在、単独で動いているのはノエルの横にのんびりと座っている、ダフトとあと一人らしい。

 ノエルも自分の部隊で戦いにでており、上位の悪魔や人魔には基本、多対一でやりあうようにしているらしい。

 「ルーファは五大羊会の一人”技巧匠”レイラのもとで、ラエルは私のもとで任務にあたってもらうがそのまえに……」

 ノエルが配属先を告げると、ザムさんが水が入った瓶を二つ、それぞれ俺とラエルの前においた。

 「それは特別な水でね、君たちの肉体を強制的に16くらいの体まで成長させる。しかも能力の伸びしろは今のまま、神量も底上げしてくれる。今のまま肉体と神力量だけ強化してくれる優れものさ」

 その二本しか見つかってないから、大事に飲んでねと言われた。

 「そんな便利なものがあるのか……」

 「悪魔貴族を倒したときに偶然ゲットしてね。技術は向こうのだから生産はできないんだ」

 「そんな大事なもの、俺たちが飲んでいいのか」

 すると、ザムさんが突然、俺たちの頭をわしゃわしゃとなでてきた。

 「なにするんだ……」

 「いいか、悪いか、それはお前らが”結果”でしめすんだよ」

 俺たちは、相当期待されたルーキーらしい。

 だが、だからといって頭をなでるな。ラエルなんて鬼の形相だぞ。

 そうして、俺たちは目の前の水(水でいいのか?)を飲んだ。

 味はない。見た目も透明。香りも…。

 飲み終えたが、特段身体に変化があるようには思えなかった。

 視界をのぞいて。

 「ん?なんか、部屋がせまく……」

 ラエルの方はどうかと思い、見てみると……、そこにはさっきまでの、可愛らしい子供(周りから見たらそうだろう)でなく、すらっとした男子高校生くらいのヤツがいた。

 「「なっ……!」」

 ラエルも俺と目が合い、同じ反応をした。

 俺は自分の足を見てみると、さっきまでのむっちりキューティーボディはなく、前世を思いださせる足をしていた。

 「ってこわぁ。何の違和感もねぇ……。」

 足の長さ、手の長さ、全ての大きさが成長しているのだが、違和感はなく、自由に動かさる。成長したことに、互いが見合うまで気づかなかったほどに自然に変化した。

 「僕たちから見ても、一瞬だったよ。瞬きすらしない間にポンっと」

 いやぁこんな風に変化するんだねーとノエル自身も関心していた。関心していた!?

 「あんたら、俺たちを実験台にしたな!!」

 「いやぁ、実験台なんてとんでもない。確たる証拠をもってこの水は提供したよ」

 「嘘つけ!今、初めて効果を見たろ!試したことなくてどうやって確信できるんだよ!」

 俺はぎゃーぎゃーとノエルに喚いた。

 これで違う効果でもでていたらたまったものではなかった。

 「ああ、それなら便利な奴がいてな。相手の能力やこういう魔力や神力をつかってできた魔道具の効果がわかる能力を持っているやつがいるんだ」

 「そんなやつまでいるのか」

 「ああ。ちなみにそいつが、能力の適正を見たりもしている。だから今もそいつはここでなく、羊学校の入学者のいるところに出向いている。」

 神力書を読んで、ある程度の能力を知ったつもりでいたが、まだまだ知らないことだらけだな。魔道具の存在も今初めて知った。

 「まあ、無事身体もできたことだし、さっそく職務を全うしてもらおうか」

 そうして、俺は上司となる”技巧匠”レイラさんとやらのところに連れていかれた。



 ***

 


 ここは魔境を超えた、悪魔の世界。

 「……」

 そこに一人、人間界の様子をじっと見つめる悪魔貴族がいた。

 白髪で、少し小柄な子供じみた印象を抱かせるが、周りには圧倒的な威圧感を放ち、どんな戦闘狂の悪魔も彼に近づこうとするものはいなかった。

 悪魔はより強いものと戦うことを望む。

 しかし、その男にはいかなる者さえ近づこうとはできなかった。

 悪魔貴族の中でも別格の強さをもつ、同じ”三皇魔”と呼ばれる存在でない限り。

 そこに一体、近づくものがいた。

 「やぁ、珍しいね。何にも興味を持たない君が、近ごろ、人間界に釘付けじゃないか」

 「……。ティナか。なんだ?鬱陶しい」

 周りに圧倒的な圧を浴びせているのは、”三皇魔”が一人、ディルフィニウム。黒い中世の宮廷服のようなものを纏い、顔にはヴェネチアンマスクのようなものを付けている。

 そのディルフィニウムに近づいてきたのは同じく”三皇魔”が一人のティナ。目は鋭く、鼻は高い。すらっとした身体の背中には翼が生えており、頭には角がある。

 ルーファが転生の時に出会い自信を”女神”と称した悪魔である。

 「やっぱり彼が気になるのかい?」

 「……。まあな」

 「普段ずっとそこに座って周りに威圧感をばらまいている君が、わざわざ直接、転生前に干渉しようとずっと狙っていた子だもんね。まぁごめんけど、私が奪っちゃたんだけどねー。ごめんね☆」

 ディルフィニウムはそれがどうしたとでも、人間界の方へ目を向け続けている。

 「それはそれでいいんだ。想定通りじゃつまらない」

 「ちぇっ、つまんなぁい。君がちょっとでも悔しがるのが見てみたいのに。もっと残念がってよー」

 「お前が行ったなら行ったで収穫があったんだ。少し面白いことが起きるかもしれない」

 「なになにー??どんなことー。君が面白がるなんてよっぽどじゃない?」

 「見ていればわかる、そのうちな。だからとっとと失せろ」

 ディルフィニウムがそう言い放つと、ティナは不満げにも去っていった。

 さて、とディルフィニウムは人間界のルーファに目を向ける。

 (こいつは、資格・・を持てるかな)

 そうディルフィニウムは期待を込めずとも思った。

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