女神はいなく悪魔がいる世界
「女神様って悪魔だぞ」
ザムさんはまず最初にと俺に言った。
「は?」
「まず、女神なんて存在しない。この世界には悪魔と人類、この二つの種族しかいない。そんでもって神力も魔力ももとは同じ力だ」
「ちょっと待て。話に追い付けていない。じゃあ最初に女神といったあの人は誰なんだ」
どんどん話していこうとするザムさんを止め、俺は聞いた。
は?女神様が……悪魔?
俺は全く理解が追い付かないでいた。
「だから、悪魔だ。悪魔は人類にできるだけ疑問を持たれず、この世界に’’転生’’をさせるために色んな嘘をつく」
「なぜ、そんなことを……?そもそもなんでそうまでして人々を転生させようとするんだ?」
「なぜ嘘をつくかというと’’転生’’をさせるのは悪魔にとって’’誓い’’の一種なんだ。本来、違う世界の人間の魂への干渉は相当な魔力が必要になる。悪魔貴族レベルでもなかなかできるやつがいないような、な」
歩きながら話そうと、俺の家へ向かいながら、ザムさんは話している。
「それに加えて、人に魔力をつけるなんてそう簡単にはできない。だが、’’誓い’’のリスクを負えば別だ」
「’’誓い’’のリスク……」
悪魔は’’誓い’’でもなんでも約束事を破る例外なく死ぬというあれか……。
「自らの死のリスクをかけることによって莫大なリターン……、つまり魔力を使うことができる。それで人々に神力という力や能力を与えることができる」
「神力と魔力は元は同じといっていたな。それはどういうことだ?」
「神力っていうのは魔力をめっちゃ薄めたやつだ。魔力ほどの’’魔’’の力はないが魔力の神がかりな力を使うことができる。簡単に言えば人間型に合わせた魔力っていうことだ」
魔力そのままでは人の身体では’’魔’’の力に耐えられないということらしい。
「そんでもってどうしてこんな面倒くさいことを悪魔がやるかっていうのは……、あいつらにとっての単なる暇つぶしだ」
「は?暇つぶし?」
「悪魔は闘うの大好き、戦闘狂種族。それと同時に醜い争いを見るのが大好きなゲスもの種族だ。あいつらは人の争いを楽しそうに見てやがる」
家につき、荷物の整理をしながら聞いていた俺の手は怒りと屈辱で震えている。
「あいつら人類にもっと大きな規模で争わせよ―ぜ、そういう感じだ」
この世界にもいくつかの国家があり、その間での争いの歴史もドムから聞いていた。
神力を使うようになって、兵器より神力や能力同士での戦いが主要になっていったと。
持つものが持たぬ者を虐殺していったという。
「そんなふざけた、バカみたいな理由で……?」
「それと一緒にあわよくば、悪魔と渡り合えるような人類現れねーかなっていう魂胆だ」
「それは最初に会っため……。悪魔も言っていたな」
悪魔は変態殺戮ゲス野郎、より強い餌が来るのならとむしろ歓迎と。
「実際目的はそっちの方が大きそうだ。人類が神力を使うようになって、悪魔との戦いでの勝率がぐんと上がった。争いも一回の犠牲の規模は大きくなったが、数は減った。いったん悪魔への対処を優先させようと条約が結ばれたからな」
「それでここ数十年、人類の争いの記録はないのか」
「ああ。あるのは人魔による被害。だから’’羊会’’つまりこの国での能力持ちの対悪魔戦闘隊にも俺たちみたいに人魔を追っているやつらがいる」
ビアラムとはこの国の王宮がある都市で、そこに羊会の本拠はあるらしい。
荷物を用意し終え、外に出ると、ラエルもいつの間にか準備を終わらせており、ルミアを抱いたアイリスさんと待っていた。
「んで、ドムの情報を追ってこの村に’’五代羊会’’である俺らは来たってことだ」
「その五代羊会ってやつは、特に強い五人の羊会ってことか」
「そーゆーこと。どうだ、俺のことちょっとは敬うようになったか」
目の前のザムさんとアイリスさんはこの国のトップ戦力の人だったのか……。
「んじゃ、今から近くの羊学校に向かうぞ。この村や今から行く場所はまだまだ悪魔の世界につながる’’魔境地’’からは離れているから、悪魔と戦うことはないだろうが、気をつけろよ」
魔境地はこの人類の世界と悪魔の世界をつながっている場所だ。
主に悪魔はそこからやってくるが、上級悪魔レベルは’’窓’’という穴をこじあけこの世界に自由にやってくることがある。その空いた窓から下級悪魔が入ってきて、魔境から離れた場所でも悪魔と遭遇するということはたまにあるという。
魔境から離れた場所ほど、窓を開ける魔力の消費が半端ないということらしく、今までこの村で悪魔と遭遇したことはなかったが……
「いったように、悪魔は戦闘狂種族だ。こうも強い俺らが集まるとそれにつられてやってくる奴らもいるからな」
まーあ俺らがここに来るまで悪魔とは五度しか戦ってないから大丈夫だろと、全く安心できない助言を聞き、俺たちは、羊学校のある町へと向かった。




