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俺が主人公になる話  作者: あんぷ
第一章:女神と悪魔がいる世界
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’’魔人’’と‘’断頭屋’’

 「ざまぁねえな!くそカス!」

 突然、はるか向こうにいたはずのラエルがドムの真後ろに現れ、

 「はッ!?がっ!」

 ドムを氷塊で貫いた。

 これにはドムも予想外だったらしく、思わず手に溜めていた電気を空中に投げ飛ばした。

 「おらッ!」

 ラエルはそのままドムを蹴飛ばした。

 ドムは蹴られた缶のように地面に何度か打ちつけられ、倒れた。

 「……な、なにが起こった。」

 信じられない……。ドムの腹にポッカリと空いた穴がふさがっていく。

 「そんなこともできるんだな。また一つ学べたぜ」

 「今、なにをした……?」

 ドムは悔しそうな表情でラエルに問いただす。

 「なにって、お前に近づいて、攻撃した。それだけだ」

 「違う!なぜ、私も、そして’’見切るもの’’をもつルーファにも気づかれず、私に近づけた!」

  ラエルは虫の息と言っていたが、こいつ油断しているふりをしてやがったのか。

 俺の目の前に来た時、しばらく神力を溜めていたのは、俺の反応を見てラエルの不意打ちを警戒していたからなのか。

 俺に、少しでも気配の変化があればそれは、何か期待できる未来を見たということだから。

 だが、そんな俺の神眼でさえもかいくぐり、ラエルはドムに近づいた。

 「なんでって。そりゃ、 ‘’時間を止めれば’’気づくことも、その間能力も使えないからだろ」

 「なっ、時間を……止めるだと!?」

 「ああ、氷の中では時は止まる。そのイメージで空間そのものを凍らせてみた。するとどうだ?上手く時間を止まらせることができたってわけだ」

 ドムは顔を歪ませ、手で覆い……。

 再び、開いた顔からは狂喜の笑みが現れた。

 「まさか!まさかまさかまさかまさかぁ!!’’能力の拡張’’を!こんな子供が!こんな短時間で成し遂げてしまうとはぁ!」

 ドムは叫び狂っている。

 「欲じい!!欲しいぞぉ!その身体ぁ!その才能に満ち溢れた身体ァ!ああ!私は今!時代の変わり目に!その当事者であるのかぁ……。幸せだなぁ……。ああ!本当に今日は幸せだ!」

 「じゃあお望みどおり、’’死会わせ’’にしてやるよ!!’’氷の時間ゼロタイム’’!!」

 ラエルは再び時を止め、ドムのそばに一瞬で近付き、今度は奴の頭を狙う。

 「’’電光ハイボルテージ’’」

 だが、奴の身体に電流が走ると今度はドムが一瞬にして消えた。

 「ああ、私がこの体であったのも運命か……。幸運だ」

 「なに!?」

 いや、消えたのではなく、移動した。

 ラエルの時とは違い、かすかに軌道が見える。 

 ドムは身体を電気に変え、高速で移動していた。

 「君と同じく私も’’能力の拡張’’を成し遂げていてね。私の電気は元は神力からできている。その神力を身体全体に流し電力にそのまま変えることで体そのものを電気にすることができるのだよ」

 「だから、どうしたってんだ!時間を止めりゃ、どんだけ速かろうと関係ねぇ!」

 ラエルはまた、時間を止めようとする。

 だが、その時俺は数コンマ先の未来をみた。

 「待て!ラエル!今時を止めたらだめだ!!」

 「てめえから時間を奪ってやる!’’氷の時間ゼロタイム’’!!」

 

 ラエルは再び、止まった時のなかでドムへ近づき攻撃をしようとする。

 だが、ラエルはドムを見つけることができない。

 (どこへ消えやがった!?)

 必死に探すが、見つからない。するとはるか遠く、二つ三つ先の山の頂上が光っている。

 (まさか……!?今の一瞬であそこまで行きやがったのか!?)

 能力の限界が来て、再び世界に時が戻る。


 ラエルの顔が困惑で満ちている。

 きっと止まった時の中で、はるか遠くへ移動したドムを見たのだろう。

 俺が見た未来は、ラエルが時を止める直前にドムが一瞬にして隣の山に移動した姿だった。

 ラエルが時を止めていられる時間は限りがある。

 止められた時間の中では追い付けないほど遠くへ行かれては、ラエルに打つ手はなく、

 「君の才能を頂くとしよう」

 「!?!?」

 光速で近づいたドムに叩きつけられ、ラエルは気を失った。

 「これで心置きなく君を殺せるよ、ルーファ」

 「あんた、体を電気にした後、しばらく電気の攻撃はできないんだな」

 「おや、よく気づいたね。あの状態は体内に神力を巡らせることに集中するから、体外へ放出させるには戻ってから、少し時間がいるんだ」

 ラエルはピクリとも動かない。どうやら完全に気絶してる。

 「彼はこの手で完璧に気を失わせた。時間を稼いだところでしばらくは起きる心配はないよ」

 「チッ。バレてたか」

 「それじゃあ今度こそ殺させてもらうよ」

 ドムの身体に魔力が巡るのを感じる。

 可能性があるとすれば、俺に近づいた一瞬の未来を予測し、そこに全力で打ち込むことか。

 やってやる。

 そして、ドムの体が光沢でつつまれ、 

 見えた!一直線に向かって俺の首を折に来ている。 

 あとはタイミング……。

 一瞬にして消えた瞬間……!捉えた!

 俺は渾身の拳を思いっきり……空ぶった

 「は!?」

 「なんとなく、見える未来のタイミングを予測し、フェイントをさせてもらった」

 声ははるか後方の方より聞こえる。

 「君の目の前で一瞬止まり、君の首をとる……フリをした。そこからフル加速で後方に回らせてもらったよ」

 声が一瞬にして近づいてくる。俺には次の未来が映し出された。

 「じゃあね、君も中々いい才能だったよ。本当に殺しがたいが、さよならだ……ルーファ」

 そういい、ドムは後方より俺の首をがっしりと絞め折る。

 

 そんな未来を予想していたが違った。

 「さよならだ……ルーフぁ!?」

 ドムが俺の名前を言い終わる前に、地面に思いっきり叩きつけられた。

 そしてそのまま何もないはずの場所で抑え込まれたかのように地面に伏している。

 「ぐぁっ!?こ、これはぁ!?この、力、はぁ!?」

 「よぉ坊主。お前、しっかりまだ生きてやがったな」

 「やぁ!元気そう……とはいえないけど、しっかり生きていてくれて私は嬉しいよ!」

 声のする方をみるとそこには、この世界に来て最初に目が合った白髪のおじさんと黒上のお姉さんがいた。

 「ま、’’魔人’’と’’断頭屋’’ぁ!?な、なぜ’’五代羊会ごだいひつじかい’’の二人がごごにい……」

 地面に押さえつけられながら、ドムは驚いている。

 「そりゃあ’’特別人魔指定’’であるお前さんの首を頂きに来たんだよ。何年も逃げ参じやがって」

 「なぜぇ……、私がここにいるとぉ、こんな辺境の村に隠れているとぉわがっだぁ!?」

 「うちには優秀なやつがどんどん集まってね。お前の居場所を大体予想して見せたんだ。そんでここらの町、村を見て回っていたら、なんか山の方が光ってな。来てみたら、ビンゴ♬大当たりって訳だ」

 もう夜も更け、村の人々も眠っているためか、思い返せばドムは大技をポンポン出していた。

 それがおじさん達を呼び寄せることになったのか。

 「いつまでもこう話してるわけにもいかないんでね。ちゃっちゃと処刑させてもらうよ」

 「まだぁ、あの身体にぃ、あの身体になりさえすればぁ」

 そういい光線をラエルに撃とうと手を挙げたが、より強い力で押さえつけられる。

 「あきらめろ、ドム・クーダ。もうネタもあがってるんだ。すぐに殺すから大人しくしてろ」

 だが、ドムは何度も手を挙げ、ラエルを殺そうとしている。

 「おいアイリス!さっさとやってくれ!気味が悪い……」

 「ちょっと待ってくださいよお父様、私だってちょっと勇気いるんですからね……」

 そういうと黒髪のお姉さんアイリスは腰に携えた剣を鞘から抜きドムへと近づいた。

 「名前ドム・クーダ、能力殺した相手の体と身体を入れ替え奪う能力、’’断頭屋’’アイリス・ゼーダの名のもとに処刑します!」

 そういうとアイリスはドムの首をスパンと切り落とした。

 


 ※

 「どうだ、アイリス?」

 「はい、成功です。ドム・クーダの’’頭取り’’は正式に行われました」

 ドムの死亡を確認した後、俺とラエルは手当てをしてもらった。

 その後の二人はというと、 

 「よし、じゃあビアラムに戻るか」

 「え?この子達、置いてくんですか?」

 「ああ、こいつらが本当になんの力もないなら匿ってやってもよかったが、こいつらなら大丈夫だろ」    

 「ええ!?せめて、羊学校の寮には入れてあげましょうよ。この子達ならもう行けますよ?」

 俺たちの今後の扱いについて話し合っている。

 「だいたい、お父様が見捨てたから、ルーファ君は巻き込まれたようなものですよ」

 「俺が拾ってた方が巻き込まれるだろうが!それに、こいつがいなきゃそこの天才一人は死んでいたし、ドムの野郎は見つからなかったのかもなんだぞ!」

 「だからってこのまま、じゃあ元気でねなんて冷たいと思います!この子達はまだ三歳と一歳の子供なんですよ!」

 「一人、中身十六歳がいるぞ!」

 というように連れていくかでもめているようだ。俺の実年齢をいうのはやめい。恥ずかしい。

 アイリスさんは羊学校、女神様がいっていた八歳になったら能力の適正不適正を判断しそれぞれ配置し育成する場所に預けるのが折衷案だと言っている。

 一方おじさんは、まだこいつらはガキだからと反対し、かといってこっちで匿うのも嫌だと頑固になっている。前の時と少し雰囲気が違うな。

 前はもっと淡々としていたイメージだったのだが。

 「あの時は、てめーにおじさんおじさん言われて不機嫌になってたんだよ!あとまだ言ってんな!俺はおじさんじゃねーし、呼ぶならザムさんと呼べ!」

 おっとこの人は心の中が読めるんだった。

 ザムさん、本名ザム・ゼーダさんは、案外大雑把で面倒下がりで感情的らしい。

 そう思っているうちにも少し睨まれた。やっぱ怖い……。

 「それにこの子、まだ多分悪魔のことよく知らない転生者ですよ。教えてあげないと、可哀そうじゃないですか。この世界に生きるなら、早く教えていくことにこしたことないです」

 俺は確かに、神力書と、この世界での人の社会についてドムに聞いたことしか知らない。

 神力書は主に能力や神力の応用についてのことが書かれているため、悪魔のことはよく知らない。

 まさか、初めて戦う相手が人である人魔だとは思ってもみなかった。

 「むぅ。しかしなぁ……」

 ザムさんは渋っている。俺たちに力があるから渋っているのであれば……。

 「あのすみませんが、うちにもう一人子供がいまして、その子は完全に神力を使えない子なんで……その子だけでも保護してもらうことはできませんか」

 俺とラミアは確かに大丈夫だろう。ドム相手にも中々戦えたため、中級悪魔までなら太刀打ちできるだろう。だが、ルミアはもしものことを考えるともっとちゃんとしたところに保護してもらう方がいいだろう。

 幸い、ルミアはまだ普通の赤ん坊だ。記憶もそんなになく、悲しみもあんまりないだろう。

 そう考えザムさんに頼んでみた。

 ザムさんはじっと俺を見つめている。

 「いいぜ……。面倒みてよるよ」

 よかった、ルミアが今よりも安全になれるならとりあえず安心だと思っていたら、

 「おまえら全員の、な」

 意外な答えが返ってきた。

 「い、いいんですか?」

 「お前はまだ脳みそがお花畑みたいだからな、羊学校につくまで色々教えておいた方がいいと思ってな。中々教えるやつはあんましいないしな」

 アイリスさんは驚かず、当たり前なのになんで今まで渋ってたのかしらと呆れている。

 「とりあえず、すぐ出発の準備をする。用意してこい」

 俺はそういわれ、家に待たせてしまっているルミアと荷物の出立準備をしに向かおうとすると、

 「ああ、まず最初に教えといてやる」

 ザムさんに呼び止められ、こう言われた。

 「女神様って悪魔だぞ」


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