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俺が主人公になる話  作者: あんぷ
第一章:女神と悪魔がいる世界
5/6

人魔

「だって俺、もう能力使えるし」

 そういうと、ラエルはあたり一面を氷で埋め尽くしてみせた。

 それを見て思わず絶句。

 ……は? 

 目の前で起きたことが信じられなかった。

 「な、なんでお前もう、能力が使えるんだ!?」

 「なんでって、使えるようになったから。二歳の時には使えたぞ」

 能力は早くても8歳からじゃないのか?

 だが、目の前のラエルはトールさんが言うように天才だ。

 今までにない例外ということだろうか。

 「お前もがんばって、トールさんの誕生日に間に合わせろよ」

 ラエルはさもありなん、当然いけるだろうという顔で言ってきた。

 勘弁してほしい……。

 ラエルが言うことには、身体の使い方は俺よりもマシ、らしい。

 あの漫画で見るような訓練は能力が身につくすぐ前の3か月前ほどからできるようになったらしい。

 お前なら、もう一か月でそのくらいできるようにはなるだろうと言われた。

 俺より身体の成長が早い、だから俺より早く能力が身につくだろうと。

 だが、俺は前世でちょっと経験をつんだだけの凡人だ。

 せいぜい、体術でラエルのサポートをするのが関の山だろう。

 「とにかく、そういうことだ。二か月後のトールさんの誕生日、おそらく何者かが殺しにやってくる。そこを向かいうつために、お前の力も貸してほしい」

 ラエルはそういい、手を差し出してきた。

 こいつもあの話を聞いて、トールさんを守りたいと思ったのか、だから俺にも稽古をつけ、力にさせようと。

 ラエルの稽古はきつい。正直やめたい。

 だが、トールさんを助けたい気持ちの方が大きい。

 こんな世界でも俺を拾い、生きていいといってくれたトールさん。

 そんなトールさんを狙う人がいるというのは、許せない気持ちは同じだ。

 それに、ラエルが俺に頼ってくれたのが、素直に嬉しいのだ。

 ラエルは、雰囲気も性格も全然違うが、少し雅人と重なる部分がある。

 なんでもこなしてしまう、いつも俺の前にいる天才。

 そんなヤツに、自分が必要だと言ってもらえる気がして、嬉しい。

 「もちろんだ、一緒にトールさんを助けよう」

 そういい、俺はラエルの手をとり、共に握手した。

 ラエルの手は、氷の能力を使ったせいか、ひんやりと冷たかった。


 

 ※

 そこから二か月はあっという間に過ぎた。

 ラエルは、教えるのが上手かった。

 ラエルの稽古にも俺はついていけるようになり、ラエルが能力を使ってもある程度やりあえるようになっていった。

 言ってくることは無茶苦茶だが、的確に俺の課題点を教えていってくれた。

 そして、トールさんの誕生日を迎えた。

 「誕生日おめでとう!トールさん!」

 「おお!ラエル!ルーファ!こんな豪華な料理をつくってくれて!私は君たちの親でいれて嬉しいよ」

 夕方ごろ、少し早めにトールさんの誕生会は行われた。

 「おーるさ、おめっど!」

 「ああ!ルミアもありがとう!私は幸せ者だ」

 最近話せるようになってきたルミアも満点の笑顔でトールさんを祝った。

 今日の料理はラエルと一緒に俺たちで作った。

 ラエルと、敵のことはトールさんには話さないことにしていた。

 能力を持たないトールさんに話しても、動揺させるだけで、逃げるにしても敵が分からなければ逃げようがないということだ。

 トールさんには、ただ、誕生日を楽しんでもらい、何事もなく明日を迎えてもらう。

 俺たちだけで全て終わらせる。

 

 

 ※

 「それじゃあおやすみ。ラエル、ルーファ、ルミア。先に休ませてもらうよ」

 そういってトールさんは寝床についた

 今日は誕生日だからと、普段トールさんがやっている家事もやると、早めにトールさんには寝てもらった。

 これで何者かが来ても、俺たちだけで対処できる。

 俺は外から、ラエルが中から様子をうかがっておく。

 ルミアの夜泣きの面倒や、トールさんが起きてきたとき中に二人ともいなかったら説明ができないということでこの配役だ。

 

 

 ※

 何時間も見張っているが、何もこない。

 偶然、トールさんの前代まで病死だったとか、敵がいてももう死んだとか。

 何もないことにこしたことはないが、油断はならない。

 じっと暗闇を見張っていると、中から声が聞こえてきた。

 「おや、まだ起きていたのかい?ラエル」

 「ああ、ルミアの面倒をみていてな」

  トールさんが起きてきたのか。ラエルさんと話している。

 「それはすまないね。ルーファはもう寝たのか?」

 「ああ、だいぶ前に寝室にいったよ」

 「そうか、ならよかった。お前も早く休みなさい。私が面倒を見といてあげるよ」

 「いや、大丈夫だ。トールさんは今日くらいゆっくりしてくれ」

 「そう気をつかなくても大丈夫だよ。私は少し早めに寝すぎて、逆に眠れないよ」

 トールさんはラエルを心配しているようだ。

 「いえ、本当に大丈夫です」

 逆にラエルの声は今までに聞いたことないほど冷たい。

 敵が今にこないかと気が立っているのか。

 「どうしたんだ、少し様子がおかしいぞ、ラエル。休んだほうがいい」

 トールさんもラエルの異変に気が付いているのか、少し焦りを感じる。

 少し、雲行きが怪しくなってきた。 

 すると、突然、

 「あんたこそ、くさい演技はもうやめなよ。トールさん」

 と、ラエルは突然冷たく言い放った

 「!?!?」

 ……は?今ラエルは、なんていった??

 「なにを言ってるんだい、ラエル?本当に疲れてるんじゃないか?」

 トールさんも困惑をあらわにしている。

 トールさんが、演技?いったい何を言い出すんだ、ラエルは?

 「もういいよ、トールさん。いや、あんたトールさんが本当の名前じゃないだろ」

 ラエルはさらに訳の分からないことを言い出した。

 トールさんが、トールさんじゃない?

 「……」

 「正確に言えば、カーザさん……か?」

 カーザさん?たしか、最初に病死させられた村長さんの名前だ。

 なぜそんな名前がなぜ、突然。

 「参ったね、君は本物の天才だったようだ。」

 そうトールさんは邪悪な声で話しはじめた。

 「惜しいね、カーザは私の三番目の名前だ。私の名前はドム・クーダ」

 「特別人魔指定、ドム・クーダ!?」

 ラエルはそうあり得ないほど驚いた声をあげた。

 ドム・クーダ??聞いたことはないが、今ラエルは特別人魔指定といった。

 人魔、能力や神力をもちながら、人々に危害を加える人たちは、人でありがら悪魔と同様、人類の敵とみなされ、こう呼ばれる。

 その中でも特別人魔指定とは、その名の通り、人魔の中でも特に人類の脅威となる存在が分類され、単体で、上級悪魔以上のものが言われる。

 ちなみに、悪魔の階級は弱いものから、下級、中級、上級、悪魔貴族という分類わけだ。

 悪魔貴族の由来は、普通、悪魔は肌着などは着ずに、真っ白な翼が目印になっているが、強い悪魔は貴族のようなスーツを着ているかららしい。

 特別人魔指定、ドム・クーダ。ラエルが驚いているからには、相当な手練れらしい。

 「さすが、物知りだねラエルは。私の能力は相手を殺すことで殺した相手と入れ替わることができる。入れ替わった相手は同じ能力を持たない限り、魂を身体と調和することができず、病死のような死に方になるってわけだ。」

 ラエルからもらった神力書に書いてあったような能力だ。

 窓から見えるラエルの顔もやはりという風で、能力の検討はついていたようだ。

 「そうか、神力書にも似たようなものが書いてあったね。もっとも私の場合、’’入れ替わった相手が持っていた能力も使えるようになる’’んだがね」

 「!?ルーファ!そこから離れろ!」

 そう突然ラエルも叫び、ドムから離れた瞬間、奴の周りに電流が走った。

 電流は窓を突き破り、俺がいた場所を一瞬で通り過ぎていった。

 ラエルの注意がなければ危なかった。

 「あまり派手にはやりたくないのだがね。まあそうしてもいいように、こんな離れたところに家を建てたんだがね」

 俺たちの家、つまり村長の家は村から少し離れた山の上にあった。村からはよっぽどのことがなければ、少し光ったことに気が付く者がいるかいないかだろう。

 「さあて、せっかくだし外でやりあおうか」

 そういうとドムはラエルを外に放りだした。

 「やはりルーファも起きていたか。おとなしく寝ていてれば楽だったんだが……」

 「クッッ……!?う……ごけな……い!?」

 ドムは俺の目の前に近づき、見下ろしてきたが、俺はさっきの電流の影響で体がマヒし動けなくなっていた。

 「まあいい、そこで大人しくしてくれたまえ。なあにちゃんと後でラエルより先に殺してやるからな」

 そういいドムはラエルの方に向かっていった。

 「私の目当てはあくまでラエル、君の才能に満ち溢れた身体だ」

 「さっきの電流でルーファが死んでいたら、そっちと入れ替わっていたのか?」

 「ああ、そうだとも。もっとも、そうしたら君に勝てなくなってしまうから殺さなかったんだがね。弱電流だと感づかれそうだから、少し手荒にやってしまった。君がルーファに伝えて逃がさせるのは信じていたよ」

 さっきラエルが俺によけさせたのも計算の内だったらしい。

 「本当は何もルーファには何も気づかれず、ラエルだけを殺せばよかったんだけどね。気づかれたからには生かしておけない。君をルーファの身体でも殺せるくらいに弱らせてから、ルーファは殺すとするわけだ」

 「そんなこと、お前なら計算できたことだろ?なんでルーファは拾ってきたんだ?ルミアもだ。なんで面倒ごとを増やした」

 ラエルはそういい神力をためる時間と俺がマヒから解ける時間を稼いでいる。

 そんなことはお見通しだろうがドムは優雅に笑って答えた。

 「そんなの、彼にも可能性があったからに決まっているだろう?転者の道に置かれている子どもたちは才能の粒ぞろい!あそこは可能性の宝庫さ!どっかのバカモノどもは髪色なんぞで良し悪しを決めているが、この世界には突然、思いも知らない進化が起こるものさ!」

 そうドムは嬉しそうに歓喜のように舞い踊りながら言った。

 まるでそれを聞かれたことが嬉しかったように。

 見た目はおじさんがぴょんぴょん跳ねているようすなので、正直引いてしまう……。

 「これは私が百年、二百年と生きてきた経験から断言できることだが、時代を変えるような事件、力、存在の誕生は、計画性や法則性を持たない」

 ドムがこちらを振り向き、ニヤリと笑う。 

 「いつも、予期せぬ偶然から生まれる。愚か者どもは、偶然の力をあまりにも卑下しすぎている……。この世のほとんどの始まりは、誰も意図も予知もできないものばかりというのに……」

 そう長々と意気揚々と語り終えた後、ドムはすっと顔を戻し、ラエルに近づいていく。

 「お喋りはこんなものにしておくとしよう。さぁラエル、君を今から死ぬ寸前まで痛めつけるとしようか」

 「やれるもんなら、やってみろ!!」

 そういうと、ラエルはドムに向かって氷を放った。

 すげぇ、これがラエルの全力……。

 その氷は今まで稽古の時には見たことないほど大きく、強固なもので一瞬にしてドムを氷漬けにしてみせた。だが……、

 「いやぁやっぱり君は最高だね。その年で、これほどまでの氷能力を使いこなすとは……。神力量もそうとうなものだ」

 ピシッと氷塊にひびが割れ、中のドムはなんともないように氷を砕いてきた。

 「私がこの体で、この域に到達したのはおそらく20代の後半ごろか……。それをわずか三歳の子供がやってみせた。いいね、ますますその身体気に入ったよ」

 「クソッ!バケモンが」

 ラエルが悔しそうに吐き捨てる。

 そんな……。あれほど化け物だと思っていたラエルが、本当に赤ん坊扱いだなんて……。

 強い、レベルが違いすぎる……。

 俺の体はマヒがだいぶ和らいでいたが、恐怖と絶望で動けずにいた。

 俺が行ったところで何かが変わるのだろうか……。

 いや、なにも変わらない。この絶望的な状況は変えられない。

 俺たちは死ぬしか……ない。

 俺はただうなだれていた。

 だが、ふと思い出す、この世界に行くと決めたときのことを。

 俺は、この世界にただ生きたいからきたんじゃない。

 自信をもって、かっこよく自分で道を切り開いて生きていくために来たんだ。

 絶望的なことなんてわかっていたじゃないか。

 「なら……!最後の最後までやれるだけやるしか、ないっしょ!!」

 そして俺は、ドムに向かって殴りかかった。

 「おお、やるかい?ルーファ。マヒが解けるのが早いな。君もなかなか惜しい才能だよ」

 俺は懸命に、ドムに攻撃を当てようとするがスルリとかわされる。

 クソッ!こいつ、体術もバケモンかよ!!

 「まだ君を殺すのにはラエルが元気すぎるから、大人しく寝ておいてくれたまえ!!」

 そういうとドムは手からに電流を纏い、俺に殴りかかった。

 「ッッ!?」

 もろに食らった俺は思いっきり跳ね飛ばされ、地面に横たわった。

 

 ……光景を俺は見た。

 「なッッ!?今のは!?」

 俺はまだ攻撃を食らっていない。俺はまだひたすらにドムに殴りかかっている。

 「んん?まあいい、まだ君を殺すのはラエルが元気すぎるから」

 さっきの光景で見た通りのことをドムはいいだし、さっきと同じ構えをとる

 「大人しく寝ておいてくれたまえ!!」

 拳の軌道もさっきと同じ、そのため容易に俺はドムの拳をかわし、逆に、ドムの脇腹に一発打ちこむことができた。

 「なッ!?ガハッ!!」

 ドムは苦痛で顔を歪めた。思ったよりいいように入った。

 想定外のことにドムは驚きを顔にあらわにして、俺から距離をとった。

 「なんだ……?今のは。まるで私の攻撃が読めていたように……」

 そうだ、俺は今、ドムの数秒先の行動を見ることができた。

 これは、もしや……。

 「そうか、そうか!!君、神眼に選ばれたか!!」


 神眼:見切るもの・・・数秒先の未来を予知することができる


 ラエルに渡された神力書に書かれていたのを思い出した。

 「そうか!!ますます惜しい!ああ、やはり……!私の眼に狂いはなかったぁ!!」

 そうドムは悶え喜んでいる。形相が、気持ち悪い……。

 だが、とにかく

 「この’眼’なら……、戦える!」

 そして再び殴りかかろうとするが、そんな考えは甘かったと思い知らされる。

 「ッ!?なんて野郎だ!」

 俺は次に起こる光景を見て、即座に踵をかえしドムから離れた。

 「ラエル!そいつから離れろ!」

 状況を見ていたラエルは、俺が走り出したのをみてすでに、ドムから離れ始めていた。

 だが、

 「’’雷の世界サンダーワールド” !!」

 そこら一体に無数の雷をドムは放った。

 「クッッ!」

 俺たちは避けきれず、雷を何発か食らう。

 一発一発は耐えられる威力であったものの、俺はその場に動けなくなっていた。

 ラエルは俺よりも食らってしまったのか、体も焦げ、横たわっていた。

 「クッッそがぁぁ!動け!動け!」

 ザッ、ザッ、と音を立て、ドムが近づいてくるのが分かる。

 俺が動けずにいると、音が目の前で止まった。

 「君を殺すのはやっぱり惜しいけど、ラエルの方が少し魅力的かな」

 ドムが手に神力をため、電気を生み出しているのが分かる。

 「今のでラエルも虫の息だし、もう殺しちゃっても構わないね」

 ラエルは未だに、ドムのはるか後方のほうで横たわっている。

 ドムの手の神力の溜めが止まる。

 「じゃ、ばいばい。ルーファ」

 そういった次の瞬間、

 「ざまあねえな!くそカス!」

 「はッ!?がっ!」

 突然、ドムのすぐ後ろに現れたラエルが放った氷塊が、ドムの腹を貫いていった。

 

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