転落
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視界が明け、気が付くと、知らないおじさんがこちらをじっと見ている。
髪は真っ白く、顔にはしわも見える。かなり歳はいっているように見え、60代ほどであろうか。
後ろにはまだ若く、綺麗な黒髪のお姉さんがいる。歳は20くらいか、6つ離れていた兄の彼女さんと同じような感じがする。
俺は話しかけようとしたが、言葉が出なかった。
正確にいえば、出せてはいた、ずっと。
しかしそれは、腹の底から、出そうとしなくてもかってにぎゃんぎゃん出てくる。
俺はさっきからずっと泣いていた。そして、自分の手をみて気づく。
(あ、赤ちゃんになってるーー!?)
手が小さい。こちらを見ているおじさんの顔に伸ばしてみるが、想像とは違うところで空を切る。
足の感覚もおかしな感じだ。あるのになんだか頼りないほど浮いている感じがする。
俺は自分が本当に転生したことを実感した。
そりゃそうか。転生して一からなんだから、赤ちゃんからスタートなのは当然である。
しかし、慣れない感覚に戸惑っていると、目の前のおじさんは険しい表情で、ため息をついた。
「こいつはダメだ、紛物だ。放っておけ」
「そんな、お父様…。このままでは可哀そうです。それにここにいるということは、神力がつかえるということでしょう?しっかり育ててあげれば、いずれ人々の役に…」
「髪がお前のように黒ければな。だがこいつは灰色。俺はこの色の髪でまともになれたやつを見たことがない。下手に地獄に行かせるよりかマシだ」
二人の会話を聞いていると、どうやら目の前の二人は自分の家族でなく、俺は道端に捨てられている子どもだということに気が付いた。
というか、俺の髪、灰色なのか。髪の色でも素質があるかどうかとかわかるのか。
俺がじぃーっと目の前のおじさんを見ながら考えていると、それに気づいたのか、話しかけてきた。
「おい、坊主。お前、どっか他のとこからきた気の毒な転生者だろ。どーせ聞こえてるんだから教えといてやる。俺じゃなくても、お前はおそらく誰かには拾ってもらえるだろう。」
まさか、話しかけられるとは思わず、急なことに俺は驚き、思わず泣き止んでいた。
驚きもあったがただ目の前のおじさんは、赤ん坊の俺でさえ黙らせる威圧感を放っていた。
目の前のおじさんはじっと俺の目を睨みつけながら、話し続けた。
「だが、早めに楽に死んどくことだな。半端な力でこの世界に生きていたってにゴミみたいな死に方になるだけだ」
「ちょっとお父様!そんなことを、、、転生者だからって相手はまだこの世界には来たばかりの子なんですよ!?」
「じゃあなんだ、力もない、この世界のことを何も知らないガキに、お前は夢だけ魅せてもっと苦ししい思いで死なせたいのか?こいつに二回も望んでない死を味合わせるのか??あの嘘つきクズ野郎の助けをするようなものだぞ」
「っっっっ!」
「偽善に他人を巻き込むな」
目の前の二人はそう言い争っていた。争っているというより、若いお姉さんが感情的になっているのを、ただおじさんは事実を淡々と押し付けているように冷静な顔でいっている。
というか嘘つきクズ野郎って誰だ?周りを見渡すと、俺と同じように捨てられた子供が道中にいる。
どうやらここは捨て子をまとめている場所のようだが、そこの管理者のような奴のことか?
それとも、この人たちの仲間にそういう奴がいるのか?
どちらにしろ、俺はさっき新しい人生を胸をはって全力で生きることに決めたんだ。
楽にい死ぬつもなど毛頭ない。
お姉さんが何も言い返せずにいると、おじさんは俺から視線を外し、立ち去ろうとしたが、一度足を止め、再びこちらを睨んできた。くそ怖い。
「おいガキ、こんなこと言ってもはいそうですかと死ぬわけない、って思ってるだろうから生きてくならアドバイスしといてやる。」
そういっておじさんは俺の体をがっしり掴んできた。めっちゃ痛い。
「この世界のやつのいうことは全て疑え、そして自分の思い込みは信じるな」
そのアドバイスなら、今おじさんが言っていることさえも疑うことになるのだが。
「そうしてくれても構わない。この世界で生きるならそのくらい自分で考えて考えて、疑い尽くせ」
なるほど、つまり何もかも鵜呑みにするようでは生きてけないと、まだこの世界を知らない俺には理解しきれないが、って、え?
心の中が聞こえてるのかこのおじさん。
「能力があるんだ、そのくらいできても何も不思議じゃないだろ。それに俺はまだ42だ、ガキ」
そう睨みつけ、おじさんはドカドカと他の子どものところへ去っていった。
だから、あんなに高圧的だったのか。恐ろしき能力世界。考え事も気を付けよう。
お姉さんも、ごめんね、とぽつりと呟き、おじさんの後を追っていった。




