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俺が主人公になる話  作者: あんぷ
第二章:魔境最前線
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魔道具訓練

 ※

 羊会本拠地に激しい金属音が響き渡っていた。

 「あら、ドムとやり合ったといっても、大したことないわね。魔道具を使いこなさなきゃここからやっていけないわよ」

 そういい、レイラさんは自身の”斧”で俺が降りかざした剣を軽くあしらっていく。 

 レイラさんのグループに入った俺は、さっそく手ほどきを受けていた。


 魔道具とは通常の武器とは違い、武器をそのものに、自身の神力を流し込み強化したり、武器そのものが能力を持っているものだ。

 俺が今使っているのは前者の神力を流し込み強化できる魔道具。

 お前は神力のコントロールは上手い、能力が付くまではとにかく魔道具を鍛錬しろ。

 そういう目的で”技巧匠”レイラさんのとこに入れられた。

 レイラさんが”技巧匠”と呼ばれる理由はその能力にある。

 通常、魔道具というのは、職人が神力をこめて何日もかけて生み出すものだという。

 神力は人によって、鋭い、荒い、痛い、涼しい……といったような特性があり、それを職人が上手く流し込めた時、そのもの自体が能力をもつ魔道具もできる。

 余談だが、この神力の特性によって身につく能力というのもある程度決まるらしい。

 そんな風に手間暇かけて作られる魔道具だが、レイラさんは簡単な武器の魔道具ならものの数秒で作ってしまう。

 自身の神力を使って何もないところから神力を纏った武器を、複数個出すこともできる。

 能力をもつ魔道具も一日あればできるとのことだ。

 そしてその彼女は自身の神力の特性とは違う系統の能力をもつ魔道具を作り出せる。

 職人達は、やってらんねー、商売あがったり、彼女一人でよくね?、と口を揃えて言っているらしい。

 そんなレイラさんが日数をかけて生み出した武器は他のものとは比べ物にならない効果をもつ。

 「ほら、そんなに隙を作ってるから、また掠ったわよ」

 今、レイラさんがふるっている”斧”も彼女の力作の一つ。

 

 魔道具:魔斧タロトン(通称タロちゃん)・・・切り裂いた傷口に毒の神力を流し込み、内部から対象を腐食させていく。

 

 「私が神力を込めてたら今頃お陀仏よ」

 レイラさんはそう不敵に魔女のように笑っている。

 ……、これはレイラさんの特性の魔道具だな。なぜだかそう思える。

 俺の神力特性は”真っすぐ”とのことだ。

 真っすぐ故、純粋に魔力を込めて強化するだけの魔道具が一番相性がいいとの判断だ。

 

 「まぁとりあえず、基本はいいんじゃないかしら。最低限くらいにはできたわ」

 今日何度目かわからないほど、ふるった剣をはじかれ俺はそう言われた。

 魔道具にも慣れていき、渾身の一撃とも呼べるふりだったが、あっさりとはじかれた。

 「あ、あざした……」

 俺はそういい、その場に倒れこんだ。

 休憩もなく、疲れる間もなく一日中夢中で剣をふるっていたが、手を休めた途端にどっと疲れが来た。

 何度も手合いをしてもらったが、この人、魔道具の扱いが本当に上手い。

 俺は全力で神力を込めて剣をふるったが、そのどれもをレイラさんは神力をこめずにいなしてみせた。

 魔道具を使いこなせば、武器の強度が負けていても容易に勝てるという。

 レイラさんがおつかれ様、と手をさしだし、立ち上がらせてくれた。

 「うん、やっぱりあなたは動きはいいわね。武器の扱いはまだまだだけど、それを身体強化で補えている。あなたは直接殴るスタイルの方がいいのかもしれないわね」

 「ええ、じゃあ魔道具の訓練した意味ないじゃないですか……」

 「そんなことはないわよ。魔道具を上手く扱えるようなることは、身体強化の向上につながるのよ」

 「魔道具を使うのと身体強化とのとどういう関係があるんですか……」

 「あなた身体強化の時、どんな風に身体に神力を流しているの?」

 「え、そりゃ、身体に力を入れる感じで、こうフンって感じで……」

 いつも感覚でやっているから、言葉でどうやっているのか説明しろといわれても……。

 考えたことがなかった。

 「あなた、それじゃあね……。まぁ羊学校に行ってないなら無理もないかしら」

 レイラさんはやっぱりと呆れている。

 「いいわ、教えてあげる。というより、先に教えたほうがよかったわね。身体強化には二種類の神力を使う必要があるの」

 「身体強化に、二種類の神力?」

 「そうよ。一つはあなたが今使えている、身体の中に流す神力。これで身体の幹を強化して体の機能や強度をあげる。もう一つは身体の外に流す神力。これで身体を自身の魔力でまとって、相手への攻撃をより強くさせる」

 初耳だ。つまり、生まれてこの方、とにかく使える神力を身体に流し続けて前者の身体強化のみを行っていたということか。

 「どうりで、身体は動けるのに魔道具の扱いがちんちくりんな訳だわ……。あなたそれでよく戦えて来たわね……」

 「い、いやぁ、ここにきて初めて褒められた気がします」

 「褒めてないわよ。まぁそういうわけで、あなたは身体の外での神力のコントロールが極端に乱れているの」

 だから、上手く魔道具の剣を扱えなかったのか。

 今日一日、剣に神力をこめすぎて、振りに追い付けず、スカッを起こしたり、逆に入れな過ぎて、斧に当たった時にものすごく痺れたことが何度もあった。

 「魔道具を上手く扱えることは神力を体外で上手くコントロールできるということ。魔道具が扱えるようになれば体外の身体強化なんてちょちょいのちょいでしょうよ」

 レイラさんはたまに間の抜けた表現をするな……。

 「戦闘に魔境へ出るのはそれができるようになってからね」

 「え、でも俺今の状態でも戦えますよ」

 「馬鹿ね、それは人や上級相手でしょ。もし貴族級が出て、攻撃が効かないなんてなったらお荷物どころじゃなわよ」

 とにかくすぐにでも扱えるようになりなさいといい、レイラさんは部屋へと戻っていった。

 

 自分で言った言葉が恐ろしいわ。レイラはルーファを置き、先に部屋へと戻りながら考えていた。

 (どうして、単純な身体の強化だけで、ドムとやり合えたっていうのよ。ザムの話じゃ、道中悪魔とも中級、上級も戦ったていうじゃない)

 肉体強化した人体の硬さや、悪魔の硬さは当然、その者自身の神力、魔力量に影響する。

 まして、硬さとなる強化はもろにそれが反映してくる。

 特別人魔指定の中でもトップ並みの神力量をもつドムや本来の肉体の硬さも併せ持つ悪魔にも単純な自身の神力の”硬さ”で押し切れたということ……

 (あの子の神力量は一体、どれほどのものなの)

 レイラはそう、今日入ってきたばかりの新人ルーキーのその”才能”に驚きと期待と”嫉妬”を感じていた。

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