009 生死問わず〝サトウ・リタ〟及び〝ミヤシタ・ユウ〟
「なるほど。ある程度は使いこなせてるわけね。まぁ……!!」
ミジマは、短刀を取り出す。そして、一瞬にしてリタとの間合いを狭めた。
「近接戦闘では、おれに理があるんだよなァ!!」
短刀を器用に動かし、リタに反撃の隙も与えない。そのまま、リタの腹部を切腹のごとく斬り裂く。
「槍は中距離戦闘用のカタナだ。だからこうも近づかれちゃ、活かせねェんだよ!!」
腹部に手痛い攻撃を喰らったリタは、次々と襲いかかる短刀を見て、
ニヤリと口角を上げた。
「あ?」
ミジマが訝る頃、
リタは、体操選手のごとく跳ねる。上をとったリタは、その勢いでミジマの胴体へ槍を振るう。
すると、
ミジマの胴体に、真っ赤な切り傷が出来上がった。
「ちッ! これしき!!」
されどミジマも負けてられない。胴体を斬り裂かれたのは事実だが、これくらいでヘタるようでは掃除屋は務まらないのだ。
ミジマはリタと同じ高度にジャンプし、あくまでも短刀でリタを刺し殺そうとした。
だが、
リタは、槍に炎をまとわせ、カーニバルのごとくそれをブンブンと振る。
煮え切った炎の火の粉がミジマに直撃し、彼は地べたへ落とされた。
「クソッ!! アチィ!!」
のたうち回るミジマに、リタは地面へ降り、槍で彼を突き刺そうとした。
ミジマはその動作に気が付き、なんとか立ち上がって、手裏剣をリタの背後に展開する。この脳波で動く手裏剣と、短刀をもって、リタを仕留める構えだ。
されど、
「ぐぉッ!?」
リタは、手裏剣が刺さる前にミジマを槍で突き刺す。ビチャッ、と血液が流れ、ミジマは、自分の死を悟る。
「やるじゃねェか、クソガキ……。オマエはいつか、新世界同盟をも潰すかもな……!!」
ミジマは、絶命したのだった。
そうすれば、かなりのダメージを喰らったリタもその場にへたり込む。
「ぐぅ……!!」
血反吐を吐き散らし、リタは勝利こそ掴むも、このままでは死ぬという状態になってしまった。
「クソッ……、せっかく〝サイバーパンク・サムライ〟の世界へ来られたのに」
辞世の句でも詠む暇もなく、リタはその場に倒れ込む。
*
「──タ! リタ!!」
どうやら、死んでいなかったらしい。リタは、病院特有の薬剤の匂いで目を覚ます。傍らには、メガネをかけた黒髪ショートヘアの少女がいる。
「生きてたんだね! 良かった……!!」
身体中に包帯が巻かれているも、なんとか生きている。少し動く度に激痛が走るも、やはり生きていた。
「まぁね……」
しかしこれでは、当分動くことはできない。サムライ・スピリットをもってしても、ここまでの大ダメージを喰らってしまったのだから。
そんな最中、電話が鳴った。ユウが非通知の電話へ出る。
「スピーカーフォンにして」
「う、うん」
どうせハル・チカヒロだろう。結果をこの耳で知るためにも、スピーカーフォンは必須だ。
『大変だったようだな。サトウ・リタ、ミヤシタ・ユウ』
「大変どころの騒ぎじゃないよ! サムライ・スピリットを持ったミジマってヤツが……」
『ミジマ? ソイツを仕留めたのか。へェ。大金星だ。ところで、良い知らせと悪い知らせがある。どちらから聞きたい?』
ユウはリタにアイコンタクトを送る。リタは、「良い知らせからで」と返事した。
『まず、警察の上層部は大喜びだ。オマエらにヤサと報酬を支払うと言っている』
ユウが不安げに尋ねる。「悪いほうは?」
『新世界同盟がお怒りだ。ヤツら、オマエらに生死問わずの懸賞金を懸けた。サトウ・リタを生け捕りしたら、1億円が入ってくる』
「……そりゃ、そうなるよね」リタは諦観している。
『警察は喜んでいるが、オマエらは所詮無法者。法による保護を受けられない。用意されたヤサは、2大勢力が絡んでこない中立地点のシマだが、襲われないように気をつけろよ』
「なら、新世界同盟も迂闊に手出しできないんじゃないの?」
『どうだかな』
電話が切られ、リタとユウは意気消沈とした表情になる。




