008 サトウ・リタVSミジマ・マサトシ
「おぉおおおお!!」
リタは、闇雲に突撃していく。しかし、ミジマはサラッとその拳を避ける。避けた後、リタの胴体に右拳を捩じ込ませる。
「まだまだァ!!」
なおもリタはへこたれない。骨がミシミシ、と頼りない音を上げる中、ミジマに頭突きを喰らわせようと頭を一旦下げる。
だが、それも読まれていたように、やはりミジマは避ける。彼は手裏剣を取り出し、リタの背後にそれを展開する。そのまま、リタは背中を斬り裂かれた。
「なぁ、なにがしてェんだ? 格上相手に突撃しても、意味がねェだろう」
ミジマが訝る中、リタはサムライ・スピリットでかろうじて呼吸を保つ。普通の人間なら、確実に死んでいる攻撃。だが、死ぬこともサムライ・スピリットが許さない。
「はぁ、はぁ……!!」
背中に鈍い痛みが走る。当然だ。背中を斬り裂かれてしまったのだから。
「だいたい、〝カタナ〟も持っていないようなヒヨッコが、おれに勝てるわけないだろ」
ミジマはそう忠告するように言う。
ミジマ・マサトシ。彼はこの『サイバーパンク・サムライ』の中でも、中ボスとして現れる存在だ。〝カタナ〟という、サムライ・スピリットを持つ人間の中でも限られた者しか使えない武器を持っている。
彼の〝カタナ〟は手裏剣と短刀で、手裏剣は右往左往に動き回る。脳波で動かすことができる上に、ミジマほどの実力者になれば、多少集中力が途切れても使いこなせるのだ。
では、どうやって格上を攻略する? せっかく推しのゲーム世界へ来られたのに、中ボスごときに殺られてお終いでは、あまりにも締まらない。
「どうした? 痛くて動けねェか」
(考えろ。カタナは危機的状況に現れる。自分を徹底的に追い込めば、勝負になるくらいのカタナが現れるはずだ。となれば──!!)
一か八か、リタは腰回りにつけていた手りゅう弾をミジマに投げる。当然効かないのは分かっている。つまり、陽動だ。
「あァ? こんなオモチャでおれをどうにかしようってか?」
破片が飛び散る中、ミジマはさも当然のように無傷。ついでに飛び散る砂ホコリの中、なんとリタは自分の足元に向けて手りゅう弾を放った。
「あ?」
立っているのが精一杯のリタは、その場に倒れる。大量の殺傷性の高い破片が身体中に刺さり、ミジマからすれば自殺でもしたのか? と訝りたくなる。
「なんだよ、潔く腹切って死んだか? 戦国時代じゃあるめェしよ」
ミジマは興味をなくし、ガタガタ震える人質のほうへ向かっていく。
「ッたく、掃除屋さんも楽じゃねェな。原型とどめて殺せって命令だしさ」
ミジマは、あくまでも原型を留めるため、拳銃を取り出す。そして、適当な人質の首元に銃口を当てる。
「悪いねェ。オマエらには罪はねェが、まぁ、恨むならおれじゃなくて強情な警察を──」
そのとき、ミジマは凄まじい迫力を感じ取る。背後からだ。彼は振り返り、口を尖らせた。
「おいおい、ハラキリじゃなくて覚醒に懸けたのか」
黒色の槍を持つ、オレンジ色のロングヘアの女が立っていた。
「ただまぁ、使いこなせるのか。そこが一番の問題だよな」
すでにリタは瀕死状態。しかもカタナを手にしてからしばらくは、正気が乏しくなる。いくら上のステージに立てたとはいえ、ミジマの優位は揺るがない。
「それよっと」
ミジマは、手裏剣をリタの背後に展開する。それはリタを穿くべく、凄まじい速度で動き出す。
しかし、リタは不敵に笑う。
刹那、
リタは、槍を四股を踏むように叩きつけた。
そうすれば、
手裏剣は、ものの見事にリタの身体から明後日の方向へズレていく。




