006 殺されるくらいなら殺してやる
「だいたい、1時間弱かかる。ロケット・ランチャーの弾、1発だけ残ってたよね?」
「うん。今、持ってるよ」
「ただ、他の武器は〝M2011〟しかない。弾倉には10発。さて、寄り道していこうか」
「え、どこへ?」
「七王会の武器庫だよ」
どうせ七王会にはケンカを売っているので、今更怖気づく必要もない。リタは地元よりも見慣れたマップを頼りに、七王会の武器庫へとハンドルを切る。
10分足らずで、七王会が武器を隠している倉庫へたどり着いた。リタとユウは降り、拳銃をいつでも撃てるように両手で握る。
「裏側から入ろう。おそらく、大した人員は配置してないはず」
「分かった」
リタとユウは、裏側のドアからそっと倉庫へ入る。だらしなく会話している七王会の面々を眼中に捉えたところで、リタは空に向けて発砲した。
「おい! カチコミだ!!」
しかし、それは陽動である。リタはサムライ・スピリットを起動し、即座に倉庫の上通路へと飛び乗る。
「こんばんは。そして、さようなら」
拳銃をやや傾け、リタは有効射程範囲内から鉛玉をお見舞いした。バシュッ! と重静音が倉庫内でこだまする頃、リタはハンドサインで下にいるユウへ『撃ち殺せ』という。
「クソッ!! テメェ、AK-22ナメるなよ!?」
「ナメているのは、そっちだろ……!!」
AK-22という最新鋭のロシア産アサルトライフルを構えた頃には、もはや遅きに失している。下からユウが、次々とチンピラの足や腕を撃っていく。
「ぐあッ!?」
ただ死んでいない。いや、死なないようにエイムを合わせたのだろう。だとしたら、ユウもなかなかの射撃の名手だ。
チンピラたちがAK-22を落とし、地面にのたうち回る頃、リタは下に降りてライフルと手りゅう弾を回収する。それを背中に担ぎ、手りゅう弾は腰回りにつける。
「ヨシ、行こうか。ユウ、なかなかの腕前だね」
「射撃はそれなりに上手だよ、私。AIに尋ねただけで、ロケット・ランチャー撃てるくらいだし」
「それもそうか」
その刹那、
モゾッとチンピラが動く音が聞こえる。
リタは、動いたチンピラの胴体に数発、ライフル弾を喰らわせた。
「ホント、躊躇ないね」
「殺されるくらいなら、殺すのがルールだよ。このネオ・トーキョーにヒトの心を期待したら駄目さ」
時間にして2~3分で、ライフル2丁と手りゅう弾5つを強奪し、リタとユウは目的地へと向かう。
*
「あーあ。特殊警察も応じる気はねェみてェだな」
「みたいだ。公務のほうが、家族の命より大事? アイツら、エコノミックアニマルにもほどがあるぜ」
この日本には、主にふたつのプレイヤーがいる。そのうちのひとつ〝新世界同盟〟は、逮捕された幹部の釈放と政府側からカネを受領しようと画策していたが、無駄足に終わった。
「どうする? コイツら、愉快な現代アートに変えて特殊警察を震え上がらせるか?」
「そうするか。腕をケツと目にぶっ刺せば、素晴らしい芸術の完成だ」
人質は5人。特殊警察精鋭の家族たちだ。中には子どもまでいる。目隠しと猿ぐつわをつけられ、恐怖のあまり失禁する者までいた。
「さて、と。まずはこのガキからだな。大丈夫。ピッケルで頭ぶっ刺せば、一瞬であの世行きだからよ」
一番幼い子どもを引きずり、ピッケルを取り出して頭にそれを定める。ひとり目の犠牲者が出る。誰もがそう確信したとき、
爆音。ヒューゥー……と風穴から凄まじい風が吹き荒れる。
新世界同盟の構成員たちは、しばらく頭を傾げていたが、すぐこの状態がまずいことを知った。
パンパンパン、と乾いた音が響き、構成員のひとりの頭が撃ち抜かれたからだ。
「……あ?」
砂ホコリの中から表れたのは、黒髪メガネの10代くらいの少女。そして、オレンジがかった金髪を持つ、ギャルっぽい女だった。
「ピッケルで一突き? 私なら、AK-22で頭を撃ち抜いちゃうね。腐れ外道の新世界同盟さん」




