011 リタ&コウタVSヒットマン
「分かった……」
すかさず、ユウが反応する。
「駄目だよ、リタ! SHAなんて打ったら、寿命すらも減らしちゃうよ!?」
「なぁ、ユウ」
リタは、淡々としていた。
「この世界で生き残るには、後先なんて考えてる余裕なんてない。進むも残るも地獄なら、進んで死にたい」
死にたくない? そんなのは当然だ。誰だって生きていたい。それでも、このディストピアで本意のまま死ねる者など、片手で数えるほどしかいないだろう。この世界における死とは、不本意なのだ。
リタはSHAを腕の動脈に突き刺す。途端に身体中の筋肉が反応を起こし、痛みらしい痛みが消えていく。これで、闘える。
「良いねェ。根性のあるヤツは好きだぜ」
コウタは高笑いを飛ばし、ベッドから起き上がったリタとともに下の階へと降りていく。
場に残されたユウは、
「どうか、死なないで……」
そう力なく、呟くしかない。
*
健常状態に戻ったリタと、そもそも万全なコウタは、病院前に集まったヒットマンの前に立つ。
「オメェ、カタナは使えるのか?」
「もちろん。病院にはカタギがたくさんいる。誰も通さないさ」
リタは目をつむり、心拍数を整える。
すると、まぶたの裏に赤い閃光が走った。
そして、
金髪ギャル・リタの右手に、黒い槍が現れる。
「槍か。一説によりゃ、最強の戦闘道具らしいな」
「ただ、近接は小回りが効かない。そこは任せたよ」
「へいへい。よし……ッ!!」
コウタの目の色が変わった。紫色に染まった虹彩が異様な雰囲気を漂わせる。
彼は、右腕に日本刀を発現させる。黒い刃が光る頃、ヒットマンたちも続々とライフルやロケット・ランチャーを持って詰め寄ってくる。
「サムライ・スピリットを持ってる連中はいないか。ナメられたもんだぜ」
「良く分かるね。〝防御闘志〟?」
「簡単な〝闘志〟なら使える。これでも、創麗の主要戦力だぜ? おれは」
闘志という、サムライ・スピリットを持つ者にしか使えない付与能力がある。それは主に〝攻撃闘志〟と〝防御闘志〟に分かれる。そして、後者のほうはあまり極めていなくても、サムライ・スピリットを可視化くらいはできる。
そんな中、ロケット・ランチャーの弾丸が放たれた。
リタとコウタは避けることもない。なぜなら、リタの槍でも対処できるし、コウタの実力を図るという意味でも有用だからだ。
結果、
弾丸は、真二つに割れる。爆発することもなく、脇道に転がっていく。
「……オメェ、おれの実力を図ったな?」
「うん」
「少しくれェ悪びれろ。ッたくよ──」
コウタが言い切る前に、リタは槍を一振りする。ライフルの弾が、あられのごとく飛んできたからだ。到底人間技でない、さながらマジックのような方法で弾をすべてそらす。
「さすが。ライフルくらいじゃ効かねェみたいだ」
「こっちは、負けたら強姦されちゃうからね」
「ハッ、それもそうか。男は殺し、女は犯せってな」
楽しく談笑しているリタとコウタを見て、新世界同盟のヒットマンたちは戦慄する。ランチャーの弾丸とライフルの弾を撃ち込んだのに、このふたりにはまるで届いていない。
「クソッ!! 陣容変更だ! 第2部隊は横へ回れ──!?」
リタは、指揮官と思われる男の首に手刀を当てかける。
「あのさ、暗殺部隊は失敗してるんだよ。私らがサムライ・スピリットを持ってるの、さすがに気がついてるでしょ? それともなにか? 無意味に死人を増やして、上層部の怒りを買いたいと?」
「だ、黙れッ!! クソアマが!! オマエら、このアバズレを撃て!!」
「無理に決まってるでしょ。私を撃ったところで、アンタが死ぬだけ。みんなの顔色見てみなよ。錯乱して、フレンドリー・ファイアするよ?」リタはもう一押し、と感じて言う。「今なら、敵はサムライ・スピリットを持っていたからと言えば上層部も許してくれる。ただ、このまま全滅したら、アンタは魚とお友だちになるよ」
時間をかけたくない。リタは、さっさと撤退させるよう促す。




