2話.俺は気がついている。
ある公爵邸の子供部屋のベッドの上で
パジャマ越しでもわかるふわふわな毛布に丸くなりながら10歳の彼は眠っていた。
早朝の冷たい空気が顔に触れ肌を包む温もりの中で眠りから覚めるも目は閉じたまま再び眠りにつこうとするが、乳母が早歩きで部屋に入ってくる。
「坊ちゃま!!起きてください!もう朝の8時ですわよ!早く支度しないと婚約者様との顔合わせに遅刻しますわよ!」
乳母の言葉を聞こえないふりをしようとするも、毛布を剥ぎ取られてひんやりした室内の空気で強制的に起こされ、背伸びをして寝起きのまま話す。
「んもぉぉぉぉっ!明日でいいじゃんそれぇー。」
「よくありません!ささっ!早く着替えましょう。」
乳母は乱暴に礼服をクローゼットから取り出し、彼のパジャマを脱がすと朝の空気が肌を刺す。
…………綺麗な女の人を処刑するさっきの夢は一体何だったのだろうか…
よくわからないなぁ…どうせ変な悪夢でも見たに違いない。
そして着替えを終わらせると彼の身体は礼服で締め付けられる、乳母に手を強く引っ張られ客室に向かう。
「なぁ俺朝ごはんまだ食べてない。」
「顔合わせが終わるまで我慢してください。」
声が苛立っている乳母は客室に到着すると彼をソファに座らせる。
「ねーえーっ!誰もいないじゃーん、帰っていい?」
「これから来るんです!黙ってください!」
「ちぇ…」
待つ事15分…幼い彼にとって15分はとても長かった
するとやっと客室のドアが開くと公爵家当主である父親が入ってくる。
「待たせてしまったな、フランツ」
「とーちゃん遅い」
「と、父ちゃん……?」
息子の口から出てくるとーちゃんと言う単語に一瞬戸惑う
そして父親に続けて見知らぬ金髪の七三分けをした大人の男性と、アイボリー色の髪をした長袖のドレスを着た女の子が客室に入りその女の子が向かいのソファに座りフランツは彼女の顔を見た時に心臓に電撃が走った。
可愛い。
公爵家当主がフランツの隣に座ると相手の紹介を始めた。
「フランツ紹介しよう、こちらがアドルフ・グリット伯爵閣下で彼女が令嬢のレノール・グリット様で歳はお前と同じ、そして今日からお前の婚約者になる方だ。」
「よろしくお願いいたします。」
この子…子供だけど夢に出てきた女の子だ…確かカメ…カナ……どっちだっけ?亀なんとかっていう女の子をいじめて、殺しかけて死罪に…あれ?この話の流れって…
あぁ…なんか思い出した。この子、処刑された悪役令嬢だっけ?…“悪役令嬢”?…彼女が悪役令嬢なら俺は…
彼は彼女を見て自覚した。自分が小説の中にいる主人公本人という事を…。




