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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第九章 神、還る

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79話 四つの勾玉

「「嵐よ!! この世界を洗い流せ!!」


 嵐が唸り、雷が大地を裂き、雨が叩きつけた。


「「魔のものよ!! 全てを喰らい尽くせ!!」」


 穴から次々と魔のものが湧き出してくる。

 神獣白虎の風が穴の淵で魔のものを切り裂いていく。

 しかし湧き出る魔のものは無限のようだった。


 玄武が動き出した。


 甲羅が揺れる。

 甲羅が傾くたびに、後円部にも深い穴が開いているのが見えた。


 神廟前のモノノフたちを守るようにその巨体で穴を塞ぎ、その口を魔のものに開いた。


「セーリュー!!」


 日向が叫んで草薙剣を振る。

 雨の向こうから、青い光が輝いた。


 心臓が跳ねた。


——来てくれた……


 青竜は玄武の上に近づいてきた。


「アベーノ!! 一緒に行くよ!!」


 私はアベーノの腕を取った。


「は?」

「マカーベくんも!!」


 私はミヤビを介抱しているマカーベに向き直った。

 ミヤビが体を起こし、傷口を布で押さえた。

 布は血で真っ赤に濡れていた。


「マカーベ! 行け!」


 ミヤビが鋭く指示を出した。

 マカーベは剣で毛皮のチョッキを切り割くと布の上からミヤビの頭をきつく縛った。


「セーリュー来たよ!!」


 雨が巨大な影に遮られた。

 玄武の甲羅の上に青竜の頭が乗った。


 顔だけで、新幹線が丸ごと飲まれそうだった。


——どうやって乗るの……?


 そう思った瞬間、マカーベに担ぎ上げられた。


「きゃっ!!」

「掴まってろ。鏡、落とすな」

「う、うん」


 マカーベは私を肩に担いだまま青竜の鱗を登っていく。

 上に着くと鱗の間から金色の毛が生えていた。

 私はそれにしがみついた。


「セーリューライドだね!!」


 柚月も登ってきた。

 マカーベは再び下に降り、日向を担ぎ上げてきた。


「うぅ怖ッ…… 千尋、よくあれ耐えてたね……」


 日向は草薙剣を抱えてうずくまった。


「このセーリューの毛の中に入って」

「雨に濡れない!!」

「千尋ちゃんたち……いつも、こんななの?」


 次にスミレが背負われて上がってきた。


「だいたい」

「スザクに乗って来たときは、驚いたけど……まさか、自分が神獣に乗るなんて」


 スミレも青竜のタテガミの中に潜り込んできた。


「カイくん! あとアベーノとタイラーも、お願い」


 私がマカーベに頼むと頷いて身軽に下へ降りていった。

 じきに一人ずつ背負われて上がってきた。


「わしも! 連れていってくれー!!」


 下でモノノーベが叫んでいる。


「邪神呼ばわりしたでしょ! 却下!!」


 日向が舌を出した。


「モノノーベさん! ミヤビさんを見ててッ!」


 私はモノノーベに叫んだ。

 ミヤビが立ち上がって頭を下げる。


「もはや頼みは、お主たちのみだ……」


 最後にスザクを抱えてマカーベが登ってきた。


「わんわんわん!!」


 スザクは南に向かって吠え続けている。


「みんな、乗ったね!?」

「セーリュー、行くよっ!!」


 青竜は長い胴体を翻して飛び上がった。


 青竜の後頭部、タテガミが密集している場所で皆しがみついた。

 そのとき、神廟前の様子が初めて見てとれた。


「……やば」

「酷い……」


 神廟前の天幕は潰され、魔のものがモノノフたちに襲いかかっていた。

 その中でフォーゲルが大剣を振るっているのが見えた。


「ビャッキー!! ヌッシー!! みんなを守って!!」

「ビャッキー! みんなを! 玄武様の甲羅の上に!!」


 私がそう叫ぶと白い風が、意思を持つように唸った。

 モノノフたちが白い竜巻に飲まれるように浮き上がる。


 入れ違いに青竜はふわりと宙に浮かんだ。

 眼下に風に運ばれてモノノフ、神官たちが甲羅の上に降りていく。


「ビャッキー! ありがとう!」

「早く行かないと!」

「急いで! セーリュー!!」


 青竜は速度を上げた。

 嵐の中、空を切り裂くように青竜は飛ぶ。


「速い! 速い!」

「気持ちいい!!」


 柚月が歓喜の声を上げた。


「アベーノ? なんで、祭壇の扉を開けてはいけないの?」


 私は気になっていたことを聞いた。


「そうだよ! タイラーはセーリューの神殿で鏡を盗もうとしたんだから!」

「マカーベくんもビャッコの祭壇から、草薙剣の鞘を持ってきたんでしょ?」


 タイラーがしょんぼりと下を向き、マカーベがうなずいた。


「ね、なんで?」


 アベーノは言葉に詰まった。

 

「スザクの神殿は、神廟に一番近いゆえ……」

「だから……?」

「……神廟への鍵があるので、ございまする」


 私の息が一瞬、止まった。


「鍵!?」

「鍵って、何?」


 アベーノは首を力なく振った。


「……言い伝えにて。分かりませぬ」


 前方後円墳が鍵穴……

 その鍵……?


「開ければ、ただ悪いことが、起こるとのみ……」

「これ以上、悪いことってある?!」


 日向が突っ込んだ。


——あるかも……私はそう思ったが、口には出さなかった。


「開けるよ! いい?」


 日向の剣幕にアベーノがうなずいた。


「タイラーさん? さっき、麒麟を見て、原初の神って言ってたけど、それは何?」


 私はもう一つ気になっていたことを聞いた。


「老スガワーラが言っていたことで、ございまする」


 タイラーは澄み切った目で、私を見た。


「四神の中央に位置する原初の存在……」

「原初の存在……?」


「それは、この世界の神とは、どう違うの?」


 タイラーは続ける。


「常世の心臓にして、命の源流……」


——この世界の神の源流……?


「この境界を調律するもの……」

「調律……?」


——調律って、何?


 アベーノが言っていた……鍵。


 スザクだけ、勾玉と本尊が遠く離れている理由……


 そして至近距離に神廟がある……


 何かが分かりそうな気がした。


「わんわんわん!!」

「もう見えた!!」

「速い!」


 身を乗り出していた柚月が叫んだ。

 スザクの神殿も嵐に見舞われていた。


 青竜は神殿の入り口に向けて高度を下げていく。

 青竜は、その巨体のまま神殿へ突っ込んだ。


 その重量で石畳が粉々に砕け、振動が頭のてっぺんまで突き抜けた。


 激しい揺れが襲い、アベーノがひっくり返った。

 木の門が吹き飛び、石壁に亀裂が入る。


「門が壊れるで、そふらふ……」

「もう、壊れたから……」

「こっちから降りられる!」

「わんわんわん!!」


 柚月が青竜の頭に乗って叫んだ。

 そのまま青竜の顔を伝って、スザクとともに降りてゆく。

 

「待って!」


 私はタテガミをつかんで頭頂部によじ登った。

 顔の先から神殿の広場に降りられそうだった。


「アベーノ、祭壇の扉の鍵は持ってるの?」

「肌身離さず、ここに……誰かに開けられたら、責任問題にて、そふらふ……」


 アベーノは自分の胸を指した。


「じゃ、早く行こっ!」


 日向が青竜の顔を駆け降りた。


「セーリュー! 顔踏んでごめんね」

「タイラーさん、鏡、持ってて。この鞄も」

「私も待ってるわね……」


 スミレが腰を下ろして私を見た。

 仮面越しに目が合った。


「絶対に! 夢の国に一緒に行きましょう」


 私もそろりそろりと降りてゆく。


「アベーノはマカーベと来て!」

「早く戻らないと! フォーゲルたちが危ないよ!」


 日向が叫んで、神殿の奥に走っていく。

 アベーノはマカーベに担がれる。


「待ってよぉ」


 私も祭壇に向かって走っていく。


 私が追いついたとき、祭壇の扉はアベーノによって開けられた。

 そこはセイリューの神殿で見たものと同じだった。


「スザク行くよ!」

「ワンワンワン!」

 

 柚月とスザクはピラミッド状の階段を登っていく。

 日向とマカーベ、アベーノが続いた。


「はあはあはあ……」


 私が頂上に辿り着いたとき、日向と柚月、スザク、マカーベ、アベーノが待っていた。


「あるの?」

「……あると思う」


 祭壇の上には黒光りする箱が置かれていた。


「アベーノさん。中に入ってるのね?」

「言い伝えによれば……初めてここに入りましたゆえに……」


 アベーノは震える手で鍵を取り出した。


 箱の鍵穴に鍵の先端がぶつかる。


「早く開けて」

「もう! イライラする」

「わんわんわん!!」


「うるさいッ!!」


 アベーノは目を閉じて鍵穴に鍵を差し込んだ。

 その手がガタガタと震え、ギギーっと蓋を開けた。


「あった……」

「……きれい」


 ビロードの枕に乗せられた、赤く光る勾玉があった。


「くうん」


 スザクが柚月のパーカーを噛んで引っ張った。


「よしスザク、見るか」


 柚月がスザクを持ち上げた。


 そのとき、スザクのリングが赤く光った。

 その光は赤い勾玉に吸い込まれる。


「こっちに宿った……?」

「だから、ケータイ祖神も顕現させられなかったんだ……」

 

 赤く光る勾玉は優しく光った。

 勾玉を持っていなければ、神獣は現れない。

 スザクのリングとその勾玉の輝きは同じだった。


「誰が持つ……?」

「柚月が持ってて」


 私と日向は、柚月を見た。


「分かった」


 柚月はためらわずに勾玉を手に取る。

 柚月の巾着の布地を通して四つの勾玉が光を発しているのが見えた。


 そこに無造作に柚月は入れた。


「よし! 戻ろう!」


——これで本当に四つ……揃った。


 麒麟を呼び出して、邪神を祓って壊させない。


 この世界も、私たちも。


 私は拳を握った。


——終わりにするのは、私たちだ。


 そして帰るんだ。


 全員で。

 


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