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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第九章 神、還る

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78話 滅すべし


「バウバウバウ!!」


 スザクが狂ったように吠え立てた。


 白い風が唸る。

 同時に轟音とともに石壁が崩れ落ちた。


——あ、死んだ……


 頭上から巨大な石塊が落ちてくる。

 スローモーションのように、それが見えた。


 次の瞬間、松明の火が消える。


 ダース仮面にパラパラと小石が降り注いだ。

 でも、来るべき石材は来なかった。


 目を開ける。

 白い風が、光を帯びて渦巻いていた。


「ビャッキー!!」


 柚月が叫んだ。


 風はドームのように広がり、石材を押し返していく。


「きゃッ!!」


 足元の石床が崩れた。

 バランスを崩し、膝と片手をつく。

 片手には重たい八咫鏡。

 鞄が肩からずり落ちる。


——落ちる!!


 浮遊感。


 だが次の瞬間、下から岩盤がせり上がった。

 ざらついた硬い感触。


 それはそのまま持ち上がり、私たちは上昇していく。

 服が風圧で皮膚に張りつき、鞄が肩に食い込んだ。


「きゃああっ!!」

「うわあああッ!!」


「玄武様ッ!?」


——玄武の甲羅……!


 周囲の白い風の壁が、落ちてくる瓦礫を弾き飛ばす。

 みな、呆然と座り込んでいた。


 一際、耳をつんざく破壊音。

 そして、視界が一気に開けた。


 青空。


 大量の土砂と石材が宙に舞う。

 埃が舞い、誰かが咳き込んだ。


 まぶしい光に、思わず目を細めた。


 太陽が頭上で輝いた。


——外に出た……?


 神廟は……?


 前方後円墳の前方部が、崩れ落ちていた。

 山ごと陥没し、巨大な穴が口を開けている。


 そこは見えない。


 私たちは、その後円部。

 巨大な甲羅の上に乗っていた。


「マジ……か……?」


 玄武の長い首がこちらを向く。


「玄武様……!」


 巨体が、縁に爪をかけている。


「ストクさま……」


 スミレが崩れるように倒れた。

 慌ててモノノーベが駆け寄る。


「助かったの……?」


 日向が言った。


「大巫女さま……」


 倒れたミヤビをマカーベは介抱していた。

 ミヤビは頭から血を流していた。

 その頭をマカーベは布で押さえている。


「いや、まだ……」


 私は目を離せなかった。


 前方部の上空。

 浮かび上がる”影”。


 後ろでアベーノとタイラーが抱き合って震えていた。


「邪神化……だよね?」


 柚月が唾を飲む。


「あの、黒い渦、私の中にいたのと同じ……」


 日向が腕を抱いた。


「「境界に閉じ込められし我ら……」」


 影が言葉を放つ。


「「かへれぬなら——救済の破滅を!!」」


 影は膨張していく。


「は?」

「意味わかんない……」

「……破滅って?」


 空の端に、暗雲が湧き始める。


「……ヤバい」

「早く! 鏡!」

「封印……!」


 落とした八咫鏡を持ち上げる。


「重い……」

「ちょっと! こっち向けない!」

「ごめん……」

「あ……雲が……」

「マジやば……」


 鏡は一瞬、光を捉え、そして消えた。


「向けてるけど……」

「効いてない……?」


 吸い込むには、その影は大き過ぎた。


 そのとき。


「「かへれぬならば、境界を滅すべし!!」」


 絶叫。


 直後、穴の奥から、無数の呻き声が響いた。

 空気を震わせ、鉛色の雲が空を覆っていく。


——「かへりたし」って叫んでいたのに……


 滅ぼすの……?

 それって……


 下の天幕から叫び声が上がった。


「魔のものだ!!」

「鬼だッ!!」

「助けてくれ!!」


 穴の闇が盛り上がる。


「……なに、あれ? ……キマイラ?」

「……ヒュドラ?」

「サイクロプスも……」

「なにが起きているの?」


 スミレがゆっくりと体を起こした。


「ここは……?」

「スミレさん……」

「千尋ちゃん?」


 スミレはガスマスクを外した。

 その顔は、急激に老け込んで見えた。


「私も、本当は……夢の国、行きたかったな」


 その言葉に私の胸が張り裂けた。


——酷すぎる……!!


 こんな! こんな!!


 この世界の人だって、頑張って生きてるのに!!


 帰れないからって、滅ぼすだなんて……


「スミレさん! 絶対に帰る!」

「……千尋ちゃん?」


 その目が見開かれる。


「……夢の国、連れて行って」


 スミレはうなずいた。


「うん! なんとかする!」

 

 その奥でモノノーベが立ち上がった。  


「この邪神がああッ!!」


 モノノーベが私たちに指を向けて叫んだ。


「おまえらが来てからというものッ!! ろくなことが起きぬわッ!!」

「終わりで、そふらふ……」


 アベーノとタイラーが頭を抱えて突っ伏した。


「仕方ないでしょ!! 知らなかったんだから!!」

「邪神はあっちッ!!」

「今はそれどころじゃない!」


 私も思わず叫んでしまう。


「喧嘩しても、仕方ない。ビャッキー! なんとか持ちこたえられる?」


 柚月が必死に白虎に呼びかけると、白い風がその声に応えるように唸った。


「青竜は?! セーリュー!! 助けてよッ!!」


 日向の叫び。


 その瞬間——


 雲を割って、青竜が現れる。


「「この呪われた世界! 滅すべし!!」」


 邪神が叫んだとき、暗雲から巨大な稲妻が落ちた。

 それを合図に豪雨となった。


 すべての音が激しい雨音に消されていく。

 雷鳴と光が交互に私たちを襲った。


「きゃあっ!!」


 瞬く間に全身ずぶ濡れになった。


 まるで、世界の終わりのようだった。


 なに、……これ?

 こんな終わり方ある……?


 本当に、帰れるの……?


 ダース仮面の下で私は虚な目を虚空に向けた。

 雨で視界がけぶる中、赤い光が跳ねているのが見えた。


 赤い光……?


 私は目の焦点を赤い光に合わせた。

 スザクが飛び跳ねながら、吠えていた。

 そのリングが赤く光っている。

 何に吠えてるの……?

 

 スザクは南——邪神の逆に向かって吠えていた。


——スザク……?


「神獣朱雀!!」


 私は目を見開いた。


「アベーノさん!」


 私はアベーノの元に、にじり寄った。

 突っ伏しているその肩を揺すった。


「アベーノさん!」

「……終わりで、そふらふ……」

「アベーノ!! 聞いて!!」


 私はアベーノの耳に口を近づけた。


「スザクの神殿に! 祭壇に! 勾玉はあるのッ?」

「……は?」


 アベーノは顔を上げた。

 その目の焦点は合っていない。


「祭壇を開けにいくよ!!」

「は?」

「日向ーッ!!」


 私は日向に怒鳴った。


「なにーッ!!」


 日向も怒鳴り返す。


「青竜を呼んで!! 青竜に乗せてもらう!」


 息を吸う。


「スザクの神殿に行く!!」


 四神の勾玉が揃えば……


 麒麟が完全になる……!


 そうしたら……きっと、あいつを止められる!

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