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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第九章 神、還る

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77話 拒絶


——神として生きる意思はあるか……?

——我の器……


 相反する二つの声。


 再び二つの声が同時に聞こえた。

 私は顔を上げた。

 同じく顔を上げた日向、柚月と仮面を見合わせた。


「聞こえた……?」

「さっきと……同じ声……」


 日向が言った。

 二つの石棺の上の影が揺らぐ。


「これって”神託”……?」

「”我の器”……も?」

「うん、二つ……聞こえた」


 スミレが息を飲む音が聞こえた。

 そして手を広げる。


「やったわね! おめでとう!」


 その声が弾んだ。

 ガスマスクの下はきっと満面の笑みだ。


「……神託じゃ。やはり女神様じゃった……」


 タイラーがひれ伏した。


「みんな、なにかしらの絶望を乗り越えて、この世界に生きてるの」


 スミレは、ほっとしたように言った。


「私もそうだった。もう帰れないと悟ったとき、神託が降りてきた」

「……」

「迷い人の中でも、神託が降りるなんて本当に稀なのよ。しかも私と同じ時代に!」


 スミレは嬉しそうにアベーノたちを見回した。

 神官たちがひれ伏した。

 その肩が震えている。


「良い儀式になったわね!」

「……」


 私たちは下を向いた。

 でも、これが神託?

 どこか違和感があった。


「……これで、良かったの?」

「ええ、早く『はい』と答えなさい」


 日向のか細い声に被せるようにスミレが言った。


「……ならない」

「……え?」


 私は小声でつぶやいた。

 日向が顔を上げた。

 私は声の出力を上げた。 


「神様には……ならない」

「……な! なにを?!」

 スミレの声が裏返った。

「千尋?」


 日向が困惑した声を出した。


 マカーベが目を見開いた。

 その手が剣の柄にかかったのを私は見た。


 ここで神の誘いを断ったら、どうなるか分からない。

 でも、違和感の正体……

 今、決められない。


「千尋……?」


 柚月が首をかしげた。


 一度、受けておいて後でまた帰る手段を探せばいい。

 柚月だったら、そう考えそうだった。


 でも、そうしたら一生この世界に閉じ込められる。

 それは確信できた。


「千尋ちゃん? な、なにを言ってるの?」


 スミレの声がひっくり返った。

 神官たちがざわめく。

 ミヤビの目が細くなる。


 さっきから床がかすかに揺れているのが、気になっていた。

 少しずつ大きくなってきている気がした。


 石棺の上に浮かぶ二つの影は沈黙したまま。


——あの声……信用できない。


「あなたは、誰!?」


 私は聞こえてきた声の主に叫んだ。

 返事はない。


「今、私たちに聞こえてきた神託は、ストクでもケイタイでもありません」

「……え?」


 私はスミレに言った。

 神官たちが息を呑む。


「スミレさんのときは、神様は名乗ったの?」


 日向が疑わしげに聞いた。


「ええ、ストクと……」

「じゃあ、違う!」


 日向が叫んだ。

 私が立ち上がったとき、また同じ声が聞こえた。


——神にならぬ、と言うか……


「あなたは、誰!? 名乗りなさい!!」


 日向が声を張り上げた。


「バウバウバウッ!!」


 スザクが吠え始める。


「「余はアントク!! ストクとケイタイを縛る者なり!!」」

「バウバウバウッ!!」

「「器ッ! 余が完全なる神に!!」」


 スザクが吠えるたびに、声が大きくなっていった。

 アントークの影が再び日向を捉えた。


「きゃああッ!!」


 日向が金縛りにあったように硬直した。


「アントーク御神!」


 タイラーが震える声をあげた。


「御鎮まりくだされ!」


 私は日向に叫んだ。


「日向っ! 動ける?!」


 日向は震えながら、顔を私に向けてうなずいた。


「草薙剣を! 剣で! 抵抗するしかない……」

「……わ、分かった」

「柚月ッ! 勾玉を集めて!」

「りょっ!」


 そして、私は八咫鏡を取った。


「な、なにを! 偽女神が、三種の神器に触れるな!」


 ミヤビが私たちに叫んだ。

 その手が懐の鉄扇に伸びる。


「マカーベ!!」


 そのミヤビの手首をマカーベが掴む。


——カイくん、ありがとう!


 ミヤビの手首を掴むマカーベの腕の筋肉が盛り上がり、血管が浮き上がった。


「くッ! マカーベ!」

「ミヤビさん! この神託は、アントークの罠!」


 私はミヤビに叫んだ。


「アントークを祓う!」

「……ッ!!」


 ミヤビが声にならない声を上げた。


「「器をよこせ……」」


 影の気配を後ろに感じた。


 私が八咫鏡を手に取ったとき、日向も草薙剣の柄に手をかけた。

 仮面を見合わせて、うなずく。


「ぽろぽろ取れる!」

 その真ん中で柚月が勾玉を外していく。

 磁石に吸い込まれるように嵌った勾玉は、柚月の指で取り出せた。


「日向っ! 大丈夫?」

「なんとか……あいつが来たら、この剣で……」


 日向は震える手で剣を鞘から抜いた。

 そのとき、影から絶叫がほとばしった。


「「ぎゃあああッ!!」」


 アントークの影は日向が草薙剣を持った瞬間、苦しげに叫んだ。


——良かった……まだ、日向は草薙剣に認められてる。


 まだ何かに、選ばれている。


 安心したのも束の間、手に持つ八咫鏡の重さで現実に引き戻された。


 そう、八咫鏡。

 

「真実を映し出す鏡」


——これでアントークを暴く。


 鏡面は壁に向かっている。

 誰も映さないように。


 私は石棺の上に浮かぶ影を見た。


 どっちかの影にアントークは隠れた。


 二神を呼び出す儀式も不完全。


 アントークの呪いのせい。


——ストークとアントークは同時代を生きて、一方は邪神化した。


 なら、恨んでいるのは……


「こっち!」


 私は八咫鏡をストークの石棺の上の影に向けた。

 鏡が影の姿を捉えているかは分からない。


 だけど、手応えがあった。


「「呪いはすでに……満ちた……」」


 アントークは最後まで言えなかった。

 八咫鏡に影が吸い込まれていく。


 鏡の奥でぴきっと嫌な音が鳴り、石棺の上の影が膨らんだ気がした。

 石棺の上の勾玉が怪しく点滅し、影が不気味に踊った。


 次の瞬間、地響きが起こった。


「な、なに?」

「ストク様!」


 スミレが叫んだ。石棺の上の影が揺らいだ。

 人影を作ろうとして影が崩れる。


「はじめて、御目にかかるというのにッ!」


 スミレの声は悲痛な叫びとなった。

 二つの影が苦しげに呻きながら膨張していく。


「スミレさん?」

「……邪神化していく」


 タイラーがつぶやいた。


 私はまた八咫鏡をその影に向けた。

 そのとき一際大きい揺れが玄室を襲った。

 揺れで、狙いが定まらない。


「「かへりたし!! 我、かへらんと欲す!!」」


 影が絶叫した。

 その響きは空気を震わせ、壁に天井に床に亀裂を走らせていく。


「ストーク御神様……」

「……ケータイ祖神様」


 アベーノとモノノーベが絶望の声を上げ、へたり込んだ。


「きゃあ!!」

「ミヤビさん!!」


 ミヤビの上に天井の石材が崩れ落ちる。

 間一髪、マカーベが引き寄せた。

 轟音を残して床に大穴が開く。


「逃げてーッ!!」


 私は叫んだ。

 四方の石材に亀裂が走っていく。


「アベーノ!! タイラー!! 立って!!」


 日向が叫んだ。


「スミレさん! 危ない!」


 この鏡を邪神化した影に……

 でも、もう鏡を正確に向けられないほど、揺れが酷くなってきた。


「玄武様ッ!!」


 私は無意識に胸元のお守りを探った。

 しかし、そこは空っぽだった。


「玄武様! お願い……助けて!」

「ヌッシー! ビャッキー! セーリュー! ザッキーも! お願い!!」


 柚月が集めた勾玉を天井に向けて高く掲げた。


「邪神を封じるんでしょ!!」


 そのとき、勾玉が光った。



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