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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第一章 村の守り神

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8/84

8話 鬼とマカーべ

【Me Tube】急上昇ランク #1

『地図にないトンネル ⑥』(11:22)

⚪︎HYC x 3jk 3.0万人加入 

 再生回数: 1,590,271回視聴 2日前 1,595件のコメント 


@puripuri_punipuni_uni 6時間前

ここは歴史の表舞台から消え去りしものを留めておく場所。


幾千年に渡りこちらとあちらとを繋いできた場所。


その扉を開いたものは、

……

続きを読む。

good  215 bad

18件の返信 ↓


@hogai_irina_xz11 6時間前

10:15のところ、鍵穴? 前方後円墳?

good 54 bad

24件の返信 ↓


@kuroi_katamari_baba 6時間前

ここどこ?特定班はよ







  ***






「あれって、前方後円墳だよね……?」


 木々の間に見覚えのある鍵穴の形が見えた。

 教科書で見たことがある。


——いや、違う。父の書斎だ。

 

 本で溢れた、古い紙の匂いがこもるあの部屋。

 壁に貼られた航空写真。

 いつも家にはいない父の研究対象だ。


「お墓だよね…… 帰れなかったってこと?」

「え……? やだよ……」


 その意味に気づいた瞬間、胸が締め付けられた。


 前方で何かがぶつかる金属音が響く。

 モノノフたちが剣を振るっているのが木々の間に見えた。

 甲高い吠え声と怒号が混じり合う。


「戦ってる?」

「……あれって何?」


 牛車はそこに向かって坂道を降りていく。


「ちょ、ちょっと、何あれ!?」

「止まってってば!」


 道端に、何かが倒れていた。

 小柄な猿のような、でも猿じゃない。

 イグアナに似た緑色の硬そうな皮膚に、尖った耳、大きな目と鼻と口。

 牙が飛び出している。


 とげとげのついた棍棒が、その手から転がり落ちていた。


 黒い血が地面に広がっている。


「あれって、ゴブリンってやつ?」

「めっちゃ、リアルゴブリン……」

「死んでるよね……?」


 私は目を背けた。

 でも、鼻が曲がりそうな臭いからは逃げられなかった。


——本当に異世界だ。


 心臓の鼓動が激しくなる。

 手足が急激に冷えて、震えが止まらない。


「廟に、巣くった、鬼にて、そふらふ」


 アベーノが震える声で言った。


「めっちゃ、いる……」


 ゴブリンの死体が増えてきていた。

 道の両脇に、五体、十体……


 怪我をした農民がうずくまり、呻いている。


「マジで! やばいから! 帰ろ!」

 日向が叫んだ。


 しかし、牛車は止まらない。


「御方がたの、廟に、戻られたし、という、お望みを、叶えたまい、そふらふ……」


 アベーノの声は揺るがない。

 この人、本気だ。


「……もう、それはいいから! お願いだから!」


 私の懇願は無視され、牛車はガタガタと山道を降りていく。


 眼前に小高い丘が見えてくる。

 怪我をして倒れているモノノフの姿もあった。


「あれって、ホブゴブリン?」


 大人の背丈の鬼が倒れていた。

 筋肉質で、さっきのゴブリンより明らかに強そうだった。


「あれって……八尺じゃないよね?」

「帰って! 戻ろうよ!」


 私は泣きそうな声で叫んだ。

 胃がきりきりと痛む。

 口の中に酸っぱいものがこみ上げてきた。


「グルルルル……」

 スザクが低い唸り声を上げた。

 耳を伏せ、牙を剥いている。


 前方で悲鳴が響いた。


 モノノフが、空中を吹き飛んでいくのが見えた。


 巨大な影が前方で暴れている。

 農民の鍬が手から落ち、へたり込むのが見えた。

 

『グガァァァァァァッ!!』


 低音の叫び声が地面を、空気を震わせた。


 モノノフが後ずさりする。

 カバのような分厚そうな灰色の皮膚に覆われた巨大な鬼が、簾の向こうで丸太を振り回していた。


「……なに、あれ?」

「マジ、ムリ……」

「まさか…… サイクロプス……?」


 一つ目の巨人。ゲームでよく見る、最強クラスのモンスター。

 額から生えたツノ、二メートル以上の巨体。


——こんな序盤で……


 私は呆然となった。


「きゃあ……」

「いやあッ!」

 日向と柚月が仮面の下でガタガタと震えた。

 かすかな悲鳴が知らずに漏れ出る。


 モノノフたちも、固まったように動かない。

 一人のモノノフがその棍棒に吹き飛ばされた。


「わんわんわん!!」

 スザクが吠えた。


『マジヤヴァエヱッ!!』

 そのとき、カモーノの怒号が爆ぜた。

 黒い血が鎖帷子にまだ滴っている。


『マジヤヴァエイッ!!』

 その叫び声に、周囲のモノノフがはっと我に返り、武器を構え直した。


『マジャバーッ!!』

 応えるように、怒号が次々と上がる。


「こっち来る!」

 サイクロプスは、どしんどしんと前の牛車に向かって走ってきた。


 その牛車の御者が慌てて飛び降りたものの、その場で尻餅をついたまま動けない。


 そしてサイクロプスは突然、牛に棍棒を叩きつけた。


「もー!!!」


 牛の断末魔の悲鳴が上がった。

 サイクロプスは頭を割った牛を持ち上げると、頭から貪り食べ始めた。

 肉を食いちぎり、骨をばりばりと砕く咀嚼音が響く。

 血が飛び散り、血と臓物の臭いが漂った。


「うっ……」

 私は仮面を少しずらし、口元を押さえた。

「やば……」

 日向が顔を背けた。

「見ちゃダメ……」

 柚月が目を閉じた。


 その凄惨な光景にモノノフたちの動きが止まる。


 そのときだった。


 一つの黒い影が、風のように走ってきた。

 黒髪、黒いマント。

 槍を構え、跳躍する。

 勢いのまま、槍をサイクロプスの背中に突き立てた。

 抜き放った長剣が夕日を受けて煌めいた。


 背中に突き立てた槍を足場に駆け上り、宙に舞った。


 振り向いたサイクロプスの、一つ目が見開かれる。

 

 剣が、一閃のもとに首を跳ね飛ばした。


 私の視界で、世界がスローモーションになった。


 ほとばしる鮮血が、青空に弧を描く。

 太陽の光を浴びて、黒い雨が降る。


 首を失った体が、どうと地響きを立てて倒れる。

 次いで、一つ目の首がどすんと音を立てて落ち、地面を転がっていった。


「……え?」


 私たちは呆然と見つめることしか、できなかった。


「マカーべ!!」


 ヨシーノが黄色い声を上げた。

 間違いない。あの真壁くん似のモノノフだ。


 午後の日差しの中、風が血生臭い空気を運んだ。

 血塗れの牛と首のないサイクロプス。


 黒髪を風になびかせ、剣の血糊を払う。

 その瞳が、憂いに翳ったように伏せられた。


——強すぎない? サイクロプスを一撃? 人間業じゃない……


「うぇっ……」

「……マジムリ」


 日向も柚月も仮面の下は青ざめているのだろう、仮面の下の口に手を当てた。

 

——この世界、マジやばい……


 そして、あの人、マジやばい……


 背中がぶるっとする。

 恐怖と畏怖と、そして憧憬のようなものが胸に渦を巻いた。

 それが、余計に気持ち悪かった。


 モノノフの一人がアベーノに何かを報告した。

 アベーノが巻き舌で御者に声をかけて、牛車は再び動き出した。


 首のないサイクロプスの隣を通りすぎる。

 マカーべは片膝をつき頭を下げて、私たちを見送った。


 前方の牛車を一頭立てにするべく、御者が震える手で綱を外していた。

 ミワーノがその間、客車の外に出て、嘔吐をしているのが見えた。


 分かる。私も限界だ。


 沈黙。


 誰も何も話さなかった。

 揺れる車内で私たちは言葉を失っていた。

 牛車はゆっくりと進み、目前に前方後円墳が近づいてくる。


 農民、モノノフが血を流して倒れ、無事だった農民が手当てをしている。

 倒れたゴブリンは農民が森の中に運んでいた。


 しばらくしてアベーノが口を開いた。


「御方がた…… 鬼は、すべて、討ち果たしたとのこと……」 

「マカーべがすべて仕留めまして、ごじゃりまする。ツワモノの中のツワモノにて……」


 ヨシーノが自慢するように言う。


「……」


 私は震える拳を握りしめた。


「だからなんなの?!」

 

 私はイラつく気持ちを抑えられなかった。


 これが、異世界?

 私が憧れていた世界?

 ふざけないでよ。


 こんなのただの地獄じゃん!


「こんなの…… 違う! こんなの違うよ……!」

 声が震えた。

 涙が出そうになった。

 

——帰りたい! こんな危険なところ! 神様なんて知らない!


 私はアベーノとヨシーノに、そしてこんな世界に憧れていた自分自身に、強烈な怒りを覚えていた。


 ダース仮面の下で、涙が一筋、頬を伝った。


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