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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第九章 神、還る

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73話 帰還前夜


 神廟の前にはすでに陣が敷かれていた。

 夕闇が迫る頃、馬車は一際立派な天幕の中に入っていった。


 天幕の中には、さらに天幕が張られていた。

 篝火が焚かれ、香の匂いが立ち込める中、神官たちがひれ伏している。

 子どものときに見たサーカス団のテントのようだった。


「三女神さまの、おなりいぃぃ!!」


 神官の掛け声が鳴り響いた。

 アベーノとモノノーベが私たちの馬車に歩み寄る。

 ミヤビたち巫女が一列に並び、薙刀を構えた。


「御主女神さまがた……ご機嫌うるわしゅう……」


 モノノーベがうやうやしく頭を下げる。


「ご機嫌は、最悪……」

「グルルル……」


 日向が私の隣でつぶやき、スザクが唸り声を上げた。


「今宵は、大世界神スミレ様と御夕餉を共にされ、明朝、神廟で御儀式と仕り、そふらふ……」

「分かりました……」


 いよいよだ。

 明日、帰れる……


 マカーベくんも、一緒に……


 私は馬車の簾越しにマカーベの姿を探した。

 でも、マカーベの姿は見えなかった。


 馬車は中央の天幕の前につけられた。

 

「大世界神様。三女神様がおつきになられました」

「お通ししなさい」

「はっ」

 盲目の巫女がひれ伏す。

 私たちは馬車を降り、スミレのいる天幕に入った。


「いらっしゃい! あなたたち、やったわね!」


 スミレは満面の笑みで立っていた。

 他の人間はいない。


「スミレさん!」

「うええぇぇん!」

「勾玉取ってきたよ!」

「ほら、泣かない。……明日、帰るんでしょ?」


 スミレは小声で言った。


「うん。絶対に」

「……帰れるといいわね」

「……?」


 はっとしたスミレが笑顔を作った。


「先に食事にしましょう。こんなに痩せちゃって……」


 スミレが手を叩くと、盲目の巫女たちがお盆に食事を持ってきてテーブルに並べていく。


「セイリューじゃご飯、美味しくなかったでしょ? 厳選して作らせたから、たくさん食べてね」

「美味しそう……これグラタン?」

「セイリューにね、ナガノさんていう転移者がいてね……」

「ヒュドラがうじゃうじゃいて、だけど、青竜が助けてくれた」

「わんわんわん!」

「あらあら、一度に話されたら分からないわよ」


 スミレは笑った。

 スザクにも生肉が与えられた。

 日向も久しぶりに笑顔になった。


「大変だったみたいね……」


 私たちは美味しいお茶を飲み、まずお菓子をつまんだ。


「でも、和食を食べられた。お米と納豆、味噌汁!」

「お米?! 味噌汁?! いいなあ……」


 スミレは目を丸くした。


「米農家でしたよね」


 私はかいつまんで説明した。

 ナガノさんたちのこと、八咫鏡のこと、この世界の神様のこと。

 そして、日向の呪い……


「そう……私、スザクじゃなくてセイリューについてたとしたら、死んでたわね……」

 スミレはため息をついた。

「で、日向ちゃんの呪いか……」

「……」


 スミレは真面目な顔になった。


「どうするの……?」

 私は考えていたことを話した。

「勾玉は四つ。私たちとマカーベくん」


 スミレはうなずいた。


「神廟は、おそらく一番強い境界……」

「強制的にまた、あの地図にないトンネルに戻らされるってことは?」


 柚月が首をかしげた。


「可能性はあるけど……」

「でも、呪いが日本でも続くのか、この世界だけの問題なのか」

「日本で、呪いなんて起きないでしょ?」

「もしアントークの魂が日向の中にいるまま日本にきてしまったら?」

「……」


 それを聞いて日向が寒そうに身をすくめた。


「スガワーラさんが言ってた。神廟で千年の眠りを解き放てば、願いは叶えられると」

「それって、勾玉を石室の穴に嵌めるってこと……?」


 日向が不安そうに言った。


「……怖い」


 スプーンを持つ手が震えていた。


「怖いけど……でも三種の神器もある……」


 何が起きるかは全く分からない。

 私も怖い。

 全部集めたら、どうなるかは今まで誰も言ってなかった。

 でも、私は何が起きるかを確かめずには帰れないと思っていた。


「……」


 沈黙。


「やめよ」


 柚月が言った。


「そんなの、何が起こるか分からないんだし、普通やらないでしょ」

「……」

「あのトンネルの奥の扉、あそこからきっと外に出られる」


 地図にないトンネルが崩落して逃げ込んだ扉の奥は、神廟の玄室だった。

 あの扉の向こうには何があるのか、でもそこも埋もれていたとしたら……


「……崩れたトンネルに出たら、生き埋めだよ……」


 私は首を振った。

 あのナガノさんの家で見た夢を思い出す。


「その可能性もあるか……」

「じゃあさ、どうするの?」


 日向がクリームシチューにパンを浸しながら言った。


「私たち四人とマカーベくん、この五人で石室に行く」

「わんわんわん!」

「もちろんスザクも」

「バウっ!」


 みんなうなずいた。


「分かった。私がモノノーベにそう伝えておくけど……」

「まず、三種の神器のうち、八咫鏡と草薙剣を奉納する」

「うん」

「で、最後、勾玉を嵌める。それまで勾玉は絶対に外には出さない」

「でも、それで光り出さない?」


 日向は不安そうな声を出した。


「あのときは電波を探してたから反応したと思う」

「そうか……」

「嵌めたらどうなるの?」

「……眠りから覚めた"何か"に、私たちの願いを叶えてもらう」

「そうだね」


 私たちは目を合わせて、うなずき合った。


——でも、本当に……願いは、叶う……?


 その不安は、とても口にできるものではなかった。


「……それが一番、”都合”がいいわね」


 スミレが、自分に言い聞かせるようにぼそっとつぶやいた。


「え?」


 私のフォークが一瞬、止まった。

 今、スミレさんはなんと言った?

 誰に取っての都合?


 日向は聞こえなかったらしい。

 ぽつりとつぶやいた。


「マカーベは今でも日本に来たいと思ってるのかな?」

「ピーコ姫と日本に行こうとしてたんだよね?」


 柚月が疑問を出した。


「……明日、会えるわ。聞いてみればいいわよ」


 スミレが答えた。


「そうだね」


 私は大きく息を吐いた。

 でも、なにかが引っかかった。


 食事は美味しかった。

 私たちは黙々と夕食を取った。

 ナガノさんの和食も美味しかったけど、スミレさんの洋食も素晴らしかった。


 天幕には三つの仕切りがあった。

 一つはスミレの寝室。

 もう一つは湯浴み場とトイレ。

 もう一つが私たちの寝室。


 私たちは食後に湯浴みを済ませた。

 新しい巫女の服に着替える。


 日本から着てきた服は、旅の間に洗濯をしてもらっていた。

 明日は日本の服を着て、神廟に行く。

 久しぶりに仮面もつける。

 最後までアベーノやミヤビたちを騙さないといけない。


——神様なんて、やめて日本に帰る。


 できれば、マカーベくんも……一緒に。


 それで、みんなで夢の国に行く。


 私は不安な気持ちを押し殺し、寝台に潜り込んだ。


 全ては明日で、終わる。


 戻れなかったら、一生ここで過ごすことになる。


——でも。


 何かが、待ってる気がした。



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

物語はいよいよ、最終章である「第九章」へと突入いたしました。

現在、本編は第81話まで執筆を終えており、あとは推敲とエピローグを残すのみとなっております。

全部で約27万字、彼女たちの歩みを見守ってくださった皆様には感謝しかありません。

「地図にないトンネル」に迷い込んだ三人の女子高生。

果たして彼女たちが紡いだ物語は、どのような結末を迎え、どのような「神話」となるのか。

最後まで一気に駆け抜けますので、ぜひお付き合いいただければ幸いです。

【作者からのお願い】

もし少しでも「面白い」「結末が気になる!」と思っていただけましたら、

下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価をいただけたり、ブックマークで応援いただけると、執筆の大きな励みになります!

引き続き、よろしくお願いいたします。


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