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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第七章 合わせ鏡の女神と三種の神器

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62話 鏡の牢獄と青き竜


「日向ッ! 柚月ッ!」


 返事はない。

 また、真っ暗……


 草薙剣のときは、日向の声が聞こえてきた。


 だけど、今は「ここ」には、いない……

 なぜだか、それは分かった。


八咫鏡(やたのかがみ)って、どんな意味があるんだっけ……」


 平家物語で壇ノ浦で沈んだんだっけ。

 違う、また浮かび上がったんだ……


「見てはいけないんだよね……」


 何かの本で読んだ知識を思い出す。

 見たら発狂したり、目が潰れたり……


——でも、青竜が鏡に出てきた……


 イシカーワが言ってた。

 こんな風に閉じ込められてる?


 タイラーも……?


「え? もしかして、出られない……?」


 ヤバい……

 急に焦りが出てくる。

 早く神獣青竜を見つけて、ここから出ないとマカーベくんたちが……


「そうだ! 勾玉!」


 胸元のお守りの中の勾玉を触る。

 お守り越しの勾玉は冷たいまま。


 玄武の勾玉じゃ、反応しないか……

 青竜の勾玉だったら……


「神獣青竜さん……どこにいるの?」


 私の問いかけは闇の中に吸い込まれた。

 暗闇の中に一歩を踏み出した。


 足元はあるのか、ないのか分からない。

 方向感覚、上下も分からない。


 怖い……


「青竜さーん!! 玄武さん! 頼みます!」


——お願い! 何か出てきて!






  *






「マジか……」


 さっきから暗闇の中、日向と千尋を探して歩き回っていた。

 でも、いない。


「神獣青竜って、なんて呼べばいいんだろう?」


 不安をごまかすように、どうでもいいことを考える。


 竜だし。……リューちゃん? 


 違う。


 青っち……?


 しっくり来ない。


 まあ、セーリューでいいか……


 動物じゃないし……

 つうか、竜って動物? 爬虫類?


 動物でも爬虫類でも……ない気がする……


「専門外……」


 亀も蛇も鳥も虎も好きだけど。

 でも、あのキマイラはダメだ。

 ヒュドラも……


 あれは、動物への冒涜。


 いや、それよりも……


「日向あ! 千尋お! どーこー?」





  *





「この! 勾玉は! 絶対に渡せぬ!!」

「なんでよッ!?」


 タイラーは胸に手を押さえうずくまった。


「この勾玉がなければ、竜に喰われてしまう……」

「ッ!! 竜って、神獣青竜!?」

「見えないのか!? 目の前にいるッ!」


 タイラーの顔は恐怖にひきつっていた。


「マジか……青竜の勾玉?」

「渡せぬ!!」


 私はため息をついた。


「いい? おじさん?」


 なるべく優しそうな声を出す。


「私たちは、玄武も朱雀も白虎も手懐けたの」


 私は草薙剣(くさなぎのつるぎ)をタイラーに突き出した。


「私が青竜を手懐ける! だから勾玉、ちょうだい!」

「……無理だ! これがないとワシが竜に喰われる!」

「じゃ、斬るよ」

「ひいっ!」

「それを持ってても、あんたは助からないよ」


 私は草薙剣の切っ先を、タイラーの喉元に突きつけた。

 剣が胸元の勾玉に反応し、冷たい光を煌めかせた。


「ひいッ!」

「はあ……仕方ないね……」


 私は草薙剣を頭上高く掲げた。

 斬るつもりはないけど、バレないように。


「死になさい!」

「わ、分かった! 殺さないでくれッ!」


 タイラーは震える手で、首から提げていた勾玉を外した。

 

「剣にかけなさい」


 タイラーは震える手で勾玉の紐を剣にかけた。


 剣を引き寄せ、剣先を下に向けると私の手に勾玉が転がり落ちた。

 勾玉は紐で縛られている。


「これで、四つ揃った!! ありがと!!」


 これで帰れるはず……


 そのとき、背後にぞわっとする冷気が押し寄せた。

 闇の奥で、何か巨大なものがゆっくりと呼吸していた。

 おそるおそる振り返る。


「マ、ジか……」


 暗闇に巨大な竜が浮かんでいた。


 西洋のドラゴンとは違う。

 首の長い蛇のような……


「神獣! 青竜!」

「竜が、消えた……」


 タイラーがへたり込んだ。


「カッコいい!」


 思わずその姿に見とれた。

 スカジャンに刺繍したら、絶対に映える。


「でも、なんか、寂しそう?」


 神獣青竜は何も言わない。

 その深い青色の瞳は、長い孤独に耐えているように悲しげに見えた。

 よく見ると、黒い蛇のようなものが鎖のように体に巻き付いている。


「ヒュドラ……の影?」


 その長い口にも黒い影が巻き付いていた。


「鏡に閉じ込められて……さらに、ヒュドラに捕まってるのか……」


 その声に青竜の瞳がこちらを向いた。


「助けてほしいの?」


 青竜がうなずいたように見えた。

 そのとき、左手に持つ勾玉が光った。

 熱をもっていく。


「青竜の勾玉……」


 そして、それに呼応するように草薙剣も光り出す。


「斬れって?」


 勾玉がそれに応えるように点滅した。


 私は勾玉を首にかけた。

 両手で草薙剣を握りしめる。


「届かないけど……」


 でも、大丈夫、そんな気がした。


「いくよ!」

 草薙剣を高く掲げる。


——千尋、柚月。


 絶対に帰るからッ!


「えいッ!!」


 そのまま振り下ろした。

 草薙剣から光が放たれる。

 その光は青竜にまとわりつくヒュドラの影を、一瞬で消滅させた。


 同時に、ぱりん……と何かが割れる音。

 世界そのものにヒビが入った感覚。


 そして暗闇に青い湖が浮かび上がった。


 真ん中に神殿?

 朱色の鳥居……


 鏡のような湖面に竜の姿が沈んでいるのが見える。

 その竜はヒュドラに巻き付かれていた。


 視界が再び、暗転した。


「うわ! じょ、上神官どの!」

 

 イシカーワの叫び声が響いた。


「まぶしい……」


 手に持つ草薙剣がさらに強い光を発していた。

 胸元の勾玉がその光を受けて、青白く輝く。


「日向っ……!」


 目が慣れてくると柚月と千尋が、鏡を見る前と同じ態勢で立っていた。


「わ! タイラーも!?」


 私たちの向かいに白い法衣を着たタイラーが立っていた。


「帰ってきた……」

「今、湖が見えた!」

 千尋が言った。

「うん、青竜がいたね」


 柚月が応える。


「もしかして日向が?」


 二人は私が持つ光り輝く草薙剣を見つめた。


「それって、セーリューの勾玉?」

「神獣青竜に会えたの?」

「そう! 会った! で、四つ揃った!」


 私は首にかけた勾玉を見せた。


「……で、この人だれ?」


 二人はタイラーを(いぶか)しげな目で見た。


「イシカーワ……」

 タイラーはイシカーワを見つめた。

「タイラー上神官どの……」

 その目に涙が浮かんだ。


「……」


 感動の再会を横目に、柚月が冷静に言った。


「でも、まだヒュドラがいるよね……」


 私は、はっとした。

 まだ、終わってない、というかこのままじゃ帰れない。


「ミヤビさんたちは?」


 私たちが祭壇の下を見ると、ミヤビもマカーベも肩で息をしていた。

 服と武器が、ヒュドラの返り血と粘液でどろどろになっていた。


「わん……わん」


 スザクが力なく吠えている。


「スザク……」

「もしかして、スザクの炎、打ち止め?」

「早く、降りよう」


 私はタイラーを振り返った。


「タイラー! その鏡、持ってきて!」

「は? はッ!」

「イシカーワさんと二人で!」


 タイラーとイシカーワは鏡を箱に入れて蓋を閉めた。

 二人がかりで担ぐ。


「ミヤビさーん!! マカーベ!!」

「女神様がた……またもや助かり申した」


 ミヤビがほっとした顔をし、頭を下げた。


「その草薙剣の光で、ヒュドラはまた退散いたし申した」


 扉の向こうの通路は、壁は抉られ、粘液と血痕、焦げ跡が残されていた。


「戻るには、この通路を行かなければ、なりますまい……」


 神殿全体が揺れている。


 通路の奥から不気味な振動。

 その向こうには多数のヒュドラが蠢く気配が濃厚に漂っていた。


 胸元の勾玉が、青く脈打った。

 


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