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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第七章 合わせ鏡の女神と三種の神器

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61話 鏡の中のクソ野郎


「バウバウバウ!!」


 スザクが吠えて飛び跳ねた。

 スザクの顎が開く。

 まさにミヤビを飲み込もうとしたヒュドラの大口に、スザクの炎が放たれた。


「ミヤビさんッ!!」

「「ヴァアアアッ!!!」」


 朱色の炎がミヤビを包みこみ、その向こうでヒュドラの口の中を焼いた。

 視界が白く輝く炎で閉ざされる。


「グルルル……!!」

「スザク!!」


 炎が消えたとき、ヒュドラは苦痛の息を吐きながら、煉瓦の壁を擦りながら後退していった。

 呆然と立ち尽くしているミヤビの後ろ姿を確認し、私は脱力した。


「ミヤビさん……良かった……」


 その声にミヤビは、はっと身じろぎした。

 ミヤビは通路で唸り声を上げているスザクに頭を下げる。


「神獣……朱雀……様。我が身ごときをお助けくださり、深謝いたしまする……」

「ミヤビさん! また来ます!」


 千尋が叫んだ。

 ヒュドラが消えた通路にまた黒い影が入ってきた。

 壁に巨大な頭が当たり、石材が剥がれ落ちる音が響く。

 牙を剥き出して、ドドドと勢いよく向かってきた。


「早く! 部屋に来て!!」


 柚月が部屋から顔を出して叫んだ。


「ミヤビさんも! スザク! 頼む!」

「わんわんわん!」


 私たちはスザクを残して、部屋に飛び込んだ。

 背後でスザクの炎が再び放たれた。


「鏡は!?」


 部屋が草薙剣で照らされた。

 ひんやりと冷たくカビ臭い。

 煉瓦作りのその部屋は、天井が高かった。


 ちゃぷちゃぷと足元の水が音を立てた。

 振り返ると、再びヒュドラの頭が後退していくのが見えた。


「スザクの炎も、無限じゃない……」


 柚月の声は緊張していた。


——いつかはスザクの炎も尽き、喰われる……


 ヒュドラは無限に頭が再生する……


 部屋の入り口でミヤビとマカーベが武器を構えた。

 イシカーワは松明を持ったまま、立ち尽くしている。


「鏡は、多分あの上……」

 柚月が指差す。


 部屋の中央に階段状のピラミッドがあった。

 高い天井ギリギリまで(そび)えている。


「めっちゃ、広い……」

「すごい高いところにあるね……」

「よし! すぐ行こう!」


 私たちは階段を登り始めた。

 柚月が真っ先に登っていき、千尋が遅れる。


「イシカーワさんも来て!」

 イシカーワも慌てて昇ってきた。


「スザクの神殿も同じ作りなのかな……?」

「多分、そう……」


 ゲンブもビャッコも、もしかして同じかも……


 まさか、重要アイテムを取り忘れたなんてこと、ないよね……

 またビャッコまで行くことになったら、目も当てられない。


「着いた……」

「これだね……」


 石造りの台がある。

 その上に蓋が開いた木の箱。

 鏡はその中の布の上で伏せられていた。

 教室の時計くらいの大きさで、古くなった十円玉のような円形状。


「重そう……」

「りゅ、りゅ、竜が……中に……」

「うん、青竜だね」

「やっぱり、この中か……」


 千尋が遅れて昇ってきて言った。


「勾玉もここにあるのかな? イシカーワさん? 知らない?」


 イシカーワは首を横に振った。


「とりあえず、ひっくり返すか……」


 柚月が言うと、イシカーワの顔が青ざめた。


「く、く、喰われる……」

「多分、大丈夫。女神だから」

「イシカーワさん、怖かったら下に降りてて」


 イシカーワはごくりと唾を飲み込むと、首を横に振った。

 下ではヒュドラがまたずりずりと通路を這ってくる音が響いていた。


「早く、青竜を探さないと! ミヤビさんたちヤバい」

「いいの? ひっくり返すよ?」


 イシカーワに確認するのも待たずに手をかける。


「「せえの!」」


 私たちは三人で鏡をひっくり返した。

 鏡面は黒ずみ、青緑色の錆に覆われていた。


「……汚れてるよ?」

「何も、見えないよ?」


 私たちは鏡を覗き込んだ。

 鏡面の黒ずんだ錆がゆっくりと波打った。


 そのとき、視界が暗転した。


「また食われた!」


 イシカーワの悲しげな声が響いた。


「きゃ……」

「わ……」


 二人の声が途切れて消えた。


——また、暗闇……


 もう、勘弁して……


「柚月! 千尋!」


 私は呼びかけてみた。

 でも、二人からの返事はない。

 そんな事だろうと思う。


 分かってる。


「神獣青竜さん?」


 ため息をついて、私は暗闇の中に声をかけた。

 私は草薙剣を抜いた。

 しかし草薙剣の感触はあるが、光は失っていた。


「誰もいないってことはないでしょ?」


 その投げかけは、暗闇に吸い込まれるように消えた。


 返事はない。


「斬るよ?」


 私は草薙剣を持ち上げた。


「……」

「返事しなさい!!」


 私は怒鳴った。

 また、なんか出てきたら、論破してやる。


「……」


「誰か! なんかいるでしょ?! 分かってんだから!!」

「うるさい!」


 闇から怒鳴り声が聞こえた。


「ほら、いるじゃん!」

「黙れ!」

「つーか、あんたが神獣青竜?」

「この馬鹿タレがッ!!」

「馬鹿タレって……青竜って、口悪いなあ」


 目の前にぼんやりと白い法衣の太った中年の男が浮かんだ。

 黒く(よど)んだ目を向ける。


「あんたって、もしかして……あのクソのタイラー?」


 ハナから喧嘩腰で煽ってみた。


「く、く、くそ、だと! この小娘があ!!」

「だって、あのクソのタキを担いで、鏡に喰われたんでしょ?」

「タ、タキ……あのクソのせいで、ワシはッ!」

「あーはっはっは! ……馬鹿じゃないの?」


 冷たく言い放つ。


「ワシをコケにするか!」

「何!? やる気? 私は草薙剣、持ってんだからね!」


 私は草薙剣をタイラーに向けた。


「そ、それは……?」

「そう! ビャッコの神殿で手に入れた草薙剣!」

「も、もしかして……?」

「そう! 私はこの剣に認められた女神ッ!!」

「やはりか! ビャッコの邪神があ!!」

「私は大世界神スミレにも認められた!!」


 私は胸を張った。

 どうだ! ぐうの音も出まい!


「あの偽神! クソ佞臣(ねいしん)モノノーベの!」

 タイラーは言い切った。

「確かに!! モノノーベはクソ!!」


 思わず同意してしまう。


「お? 邪神のくせに、物を分かっておるな?」

「そっか……おじさん、モノノーベにいじめられたんだね……」

「にっくきモノノーベ! ワシのタキを神にしたあかつきには、あやつに神罰を下す!」

「もう、モノノーベはやっつけたよ? タキは処刑されたよ?」


 タイラーは目を見張った。


「な、な、な、なんと?」

「だから、モノノーベはやっつけたって!」

「タキが処刑?」

「うん、二十年前に。騒乱の罪で処刑ってスミレさんが言ってた」

「お、お、お、に、二十年前……? では、ワシも……処刑に、なる?」


 タイラーが膝から崩れ落ちた。


 二十年も鏡の中……?

 なんかすごい可哀想な気がしてきた。


「私が、処刑なんて、絶対にさせない!」


 その言葉にタイラーの顔が上がった。

 同時に、その胸元に何かが光った。


「ちょ! それって勾玉じゃん! 何であんたが持ってるの!!」

「これは……ここで見つけた勾玉! これがあればあのタキも神に……」

「もう死んでるんだってば! 私にちょうだい!」

「これは……」

「分かった! 私があんたの神になる!」


 言ってしまってから、しまったと思った。


「一時的にだけど……」

「な、なんと?」

「だ・か・ら! ちょうだいッ!!」


 私は一歩踏み出した。

 タイラーの胸で、青白く怪しく光る勾玉。


「私が終わらせる!! あんたを! ここから出す!!」


——これで、四つ揃う!!


 だから——


「その勾玉! 私にッ!!」


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