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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第六章 三女神、覚醒

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52話 蛙神の憂鬱


 宮殿のテラスから見下ろす広場は、人で埋め尽くされていた。

 四神(しじん)の女神を讃える言葉が都にこだましている。

 誰もが地面に頭を擦り付けて、私たちを拝んでいた。


「四神の女神さま!!」

「ありがたや!!」

「マジャバー!!」


 私たちは暗澹(あんたん)たる思いで目を逸らした。


「やっぱり、慣れないものね」


 スミレさんが隣で苦笑した。


「スミレさんも、こんな感じだったんですか?」

「ええ。最初の頃は、ね」


 スミレさんは遠い目をした。


「四十年経った今でも、時々、怖くなる」

「……怖い?」

「こんなに多くの人に、信仰されるなんて」


 スミレさんは静かに言った。


「でも、この信仰が、あなたたちを守ることにもなる」

「……守る?」

「ええ。この国の人々は、神を決して見捨てない」


 スミレさんは広場を見下ろした。


「セイリューは……危険よ。ドラゴンが暴れているだけじゃない」

「……」

「でも、あなたたちなら、大丈夫」


 スミレさんは私の肩に手を置いた。


「キマイラを倒したんだもの。あと一つ。最後の勾玉を手に入れて……」


 帰る。


 その言葉は、スミレさんの口からは出なかった。


「……はい」


 私はうなずいた。


 ちらりと眼下を見る。


——やばい……信仰が、広がってる……


 神様になんて、なりたくない。

 神様なんて、今すぐにでも、やめたい。






   *





 私たちがビャッコの神殿を出たのは、あの戦いの翌朝だった。


 初めて乗る馬の背中は気持ちよかった。

 けど、背中に背負う草薙剣は、やっぱり重かった。


 結局、草薙剣は私が持たされた。


 論破した話を聞いた柚月は、引き笑いで爆笑した。

「神の剣を屁理屈で屈服させるとかヤバすぎ」って。


 私はため息をついた。


 柚月と千尋に比べて、私は何もない。


 柚月の運動神経も、千尋の知識も頭もない。

 得意なのは、口喧嘩とゲームだけ。


 本当に普通のゲーム好きの、ただの女子高生。


 家に帰りたい。


 お母さんのカレーをお腹いっぱい食べて、推しのアイドルのライブ動画を見て、アニメを見ながらポテチを食べて、ぐうたら過ごしたい。


 もう、こんな怖いところ、一刻も早く帰りたい……

 早く家族に、あの憎たらしい弟にも、友達にも会いたい……


——だってさ……


 この世界に来てから、もう三週間。


 信じられない。


 たった三週間なのに、元の生活がこんなに遠く感じる。


 千尋はこう言ってた。

 ピーコ姫は「偉大なる母」になりたくなかったんじゃないかって。

 草薙剣でキマイラを斬って全てを終わらせて、勾玉で日本に行こうとした。


 でも……


 ピーコ姫は、死んでしまった……


 それで「偉大なる母」の血統が途絶えちゃった……


 ミヤビさんが悲しげな顔をして、そう言ってた……


 だけど、ピーコ姫は予言で分かってたんじゃないかって。

 新しい「女神」が現れて、ビャッコに「偉大なる母」は必要はなくなるって。


 だから、結婚する前に、日本に逃げようとした……

 子どもが出来たら、その子もビャッコに縛られてしまうから。


 マカーベは、まだピーコ姫のことを引きずってる。

 ピーコ姫とそっくりな千尋を見たら、どうしたって思い出しちゃうよね……


 旅の間、マカーベは私たちとは離れて行動していた。


 マカーベがゲンブのあと、ビャッコに何も言わずに戻った理由も。

 私たちが来ることが分かっていて、キマイラの眷属を討伐して回ってたって、ミヤビから聞いた。


 それでも、あんなにいたけど……


 千尋はマカーベの姿を探してたけど、姿を見せなかった。


 でも、セイリューにも来てくれるって。


 本当に助かる。

 

 側にいるのはミヤビとアベーノとヨシーノ。

 ミワーノは千尋の傷の手当てをしてた。

 ヨシーノは私たちの言葉を書き留めてる。


 キマイラの眷属は男衆と巫女たちで討伐をしていくことになった。

 ビャッコは二人の達人がいなくて心配したけど、神獣白虎も復活したらしいし、きっと大丈夫。


 フォーゲルさんは、スザク城に残った。

 戦いのあとの処理で忙しいからって。


 そうだよね。あんな被害出したんだから……

 カモーノもスザク城で静養するって言ってた。


 酷い怪我してたけど、無事に帰れたんだ。

 良かった。


 でも、あの脳筋の逞しいおじさんと別れるのは少し寂しかった。

 

 ビャッコの土地を出てからは、お面を被らされた。


 スザクの人たちは、私たちの素顔を見たら死罪になるって思っちゃってるらしい。

 まったく、モノノーベの奴、ろくな奴じゃない。


 このお面を見るたびに、いつも後悔する。

 あの日、この青色のケロッパのお面かぶってたせいで……


 ううん、あの日、私が調子こいて撮影に行こうなんて言い出さなければ。


 二人とも、そのことは決して口にしない。


 本当にいい友達……

 絶対に三人で帰る。


 馬車に乗ってる間だけ、お面は外してた。


 都には、モノノーベがいる。

 あいつ、私たちを恨んでる、きっと。


 でも、スミレさんには、優しくしてたんだろうな。

 アベーノみたいに。


 馬車の中では、三人とも疲れてぐったりしてた。

 そりゃ、そうだよね。


 あれだけの大冒険して、キマイラ倒して。


 日本に帰って話しても、絶対に誰も信じてくれない。

 ため息しか出ない。


 そんな疲れた空気でも、スザクは元気だった。

 

 スザクがいてくれて、本当に良かった。

 スザクは私たちの癒しだから。


 スザクといえば、キマイラの炎をたっぷり食べてたから、また神獣朱雀が出てくるかもって、柚月が言ってた。


 柚月はすごい。


 だって、神獣白虎と神獣朱雀、二体の神獣を手懐けたんだから。


 柚月は、将来ペットショップの店員になるから、学校の勉強なんかしなくていいって言ってたけど。

 なんか、朱雀ライドしてから、将来の夢が変わったらしい。


 馬車の中で、千尋の教科書を見て勉強してた。




   *




 そんなわけで、またスザクの都に帰って来てる。


 スミレさんに会って、美味しいもの食べて、お風呂入って、ふかふかのベッドで寝て。


 でも、明日からは……


 ドラゴンの土地、セイリュー……


 どうなるんだろう……


 早く、帰りたい。


 でも、帰るためには、行くしかない。


 神様をやめるために。


 私はため息をついて、草薙剣を背負い直した。


 明日から、ドラゴン退治か……


 マジやばい……



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