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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第一章 村の守り神

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4話 和歌とアベーノ

動画タイトル:『地図にないトンネル③』(8:34)

再生回数:1,491,899回視聴 3週間前 2,098件のコメント 


@guran_hank_lv 3週間前

ここどこよ? 特定班はよ

good 115 bad

78件の返信  ↓


@omka_moi 3週間前

1:13 トンネルの入り口に上下逆さまの鳥居が一瞬映ったんですけど……

good  432 bad

45件の返信 ↓


@puriuri_punipuni_uni 3週間前

ここは現世とあちらの世界とをつなぐトンネル

行ってしまったものは、帰ってこられない


ある方法を除いては、

…… 

 続きを読む

good 110 bad

25件の返信 ↓


@daily_news_v 3週間前

はよ続き。

good 45 bad

24件の返信 ↓





  ***





 私たちは老人に先導されて、半ば 拉致(らち)されるように煉瓦造りの通路を進んだ。


 煉瓦の壁はすぐに途切れ、石段が現れた。

 湿った空気が、少しずつ乾いていく。

 暗く狭い階段を登ると、重厚な木製の扉が立ちはだかった。


 そこを開けると、ひんやりとした広い石造りの通路に出た。


 薄暗い中、松明の明かりと柚月のライトが空間を照らした。

 私はフォースセイバーのスイッチを切った。


「ここ、どこ?」

 日向がキョロキョロと見回す。

「……異世界ってやつ?」

 柚月が冷静につぶやいた。


——異世界…… 憧れてた異世界。でも、この展開は全然思ってたのと違う……


「さっき、トンネルでスマホのアンテナが立ってた」

「うそっ? ダメ、圏外だよ」


 日向が慌ててスマホを取り出すが、圏外の表示を見てため息をついた。


「おかしい……」

 さっきの場所はアンテナ一本立ってたはず。

「あのトンネルじゃないと、繋がらない?」



「御方がた…… 此方(こなた)をば、ご(らん)じ給え」


 老人が空間の一角に手を向けた。


 老人の呼び声に応えるように、奥の暗がりから鈴の音が響いた。

 ちりん、ちりん……

 現れたのは紅白の装束(しょうぞく)に身を包んだ、小柄な若い女性だった。


 ぱっちりとした金髪碧眼(へきがん)と巫女の姿には違和感があった。


「可愛い……」


 ぼそっと日向がつぶやいた。


 その巫女はスザクを見て、後ずさりした。

 老人と巫女は何かを話している。


 巫女の目がやがて大きく見開かれる。


 三人を見るその目に畏敬(いけい)の光が宿った。


「遅まきながら名乗りをば仕らせ、そふらふ。


 我が名は、アベーノ・ヒコマーロと、申す者にて、そふらふ」


「ヒコマーロ?」

「宝石箱だーの人?」


 日向と柚月が小声で反応した。


——違うと思う。絶対に違うと思う。


 阿倍仲麻呂の系譜(けいふ)……?


 そして隣の巫女のような格好の女性を指し示した。


「こちらに控えしは、孫にて、そふらふ。ヨシーノと申すなり」


「ヨシーノ、で、ごじゃります」


 ヨシーノは巻き舌で挨拶して、ぺこりと頭を下げた。


「また、此方に控えしは、カモーノ家の、モノノフにて、そふらふ」

「今、モノノフって言った?」

「モノノフって武士?」


 老人が鎖帷子の大柄な男に声をかけると、年長の一人が(ひざまず)いた。


「あ、マジャバーの人だ」

「マジャバーだね」

 日向と柚月がひそひそと確認し合う。


『カモーノ・メーチョーでござる』

「……」


 私たちの困惑はどんどん深まっていく。


 明らかに西洋風の武具に身を固めた騎士が、モノノフ?

 みるからに西洋ファンタジーの住人が、アベーノとカモーノ?


 仮面の下で、この茶番を早く終わらせたいと強く願い、顔が強張っていく。


「ヨシーノさん? ここはどこ?」


 日向が焦った口調で質問した。


 ヨシーノは困った顔をして、アベーノを見た。


「御方がた……此方のヨシーノ、やまとことばに、習い浅く、そうらえども、いかなるお沙汰も、(うけたまわ)り、そうらふ……」


「早く、帰りたいんだけど……」


 柚月が圏外となったスマホを見て、悲しそうな声を出した。

 

 アベーノとヨシーノは困った顔をした。


「御方がた、神の御国に、帰らまほしと、仰せられしか……」


 アベーノが目を閉じて、首を振った。


「御方がた…… 此方をば、ご覧じ給え」


 アベーノは簾がかかった一角へ三人を誘導していく。


 (すだれ)をうやうやしく寄せて、三人を手招きする。


 三方に簾がかかったその場所は、四畳半ほどの板の間が一段高く設置されていた。


 その奥に小部屋へと続く、八畳ほどの部屋があった。

 アベーノが松明の火で燭台(しょくだい)に明かりをつける。


 正面にぼんやりと掛け軸が浮かんだ。


「昔の字だね……」

「国語の教科書に載ってた」


 ひそひそと柚月と言葉を交わす。


「せ、を、は、やま~」


 え?


「い~わにせ、か~るる」


 そのイントネーションの悪さに私の眉がぴくりと動いた。


「た、きが、わぁの」


 ヨシーノがつっかえながらも簾の外から読み上げる。


「これって?」

「百人一首?」


 私はあの名作アニメ「ちはや」を何度も見返していた。

 イライラする。

 リズムが違う。

 句切れが悪い。

 百人一首オタクの私の血が騒ぐ。

 訂正したい。

 喉元まで出かかった正しいリズムを、抑えきれない。


「……岩にせかるる 滝川のぉ」


 私は無意識に、途中から口ずさんでいた。


「われても末に あはむとぞ思ふ~」


 気づくと、その場が静まり返っていた。

 アベーノとヨシーノが雷に打たれたように硬直している。


「あ……」


 やっちゃった、と思ったがもう遅かった。


「お、おおお……!!」

 アベーノが膝から崩れ落ちるように平伏した。


 その時、ほんの一瞬、かすかに気がつく程度に、掛け軸が光ったような気がした。


『本物だ……』

『完全なる詠唱!!』


 カモーノ家の、モノノフからも感嘆の声が上がった。


「かつて、この地に、降臨したまい、御神の、残した歌で、ごじゃります」


 ヨシーノが感極まったようにそう話し、簾の外で三人に平伏した。


「ちょ、ちょっとヨシーノさん、やめてよ……」


「我ら、アベーノ家と、カモーノ家が、この御社(おやしろ)にて、神の御降臨を、幾星霜、待ち(はべ)りし、そふらふ……」


 アベーノの目に涙が滲む。


 平伏したまま顔を上げた。


 カモーノ家の、モノノフも同じく平伏している。


「どう、なってるの?」


「まじやばえええ!!」

 アベーノが叫び、一同が唱和した。


『マジヤヴァエエエィ!!』

 その叫びは熱を帯び、崇拝の響きに変わった。


 ダース仮面の下で、強張こわばる顔が引きつっていくのが分かった。


——終わった。完全に終わった。


 トンネルに入ったことを猛烈に後悔した。


——詰んだ。


 テストも詰んだけど、異世界でも詰んだ。


 肩に食い込む鞄の重さだけが、遠のいていく日常との唯一の繋がりだった。


 もう毎日、補習でもいいから、日本に帰りたい!



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