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神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第一章 村の守り神

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3/84

3話 スザクと神託

動画タイトル:『地図にないトンネル④』(9:34)

再生回数:1,281,005回視聴 2週間前  1,643件のコメント 


@bandana_hoso_mattyo 14日前

1:22のとこ、コンクリじゃない。

なんか字が書いてある?

good 522 bad

65件の返信  ↑

 @hanepi_dm11 20時間前

 @bandana_hoso_mattyo 拡大してみた。くずし字?赤い字でなんか書いてある。  

 @bandana_hoso_mattyo

  百人一首だね。瀬をはやみ、ってやつ

  good 89 bad  35件の返信 ↓


@pepe_chan 14日前

この動画、やばい。いろんなもんがうつってる……gkbr……

good  1124 bad

256件の返信 ↓


@puriuri_punipuni_uni 14日前

ここは現世と過去をつなぐトンネル

かつての怨霊が立ち込める地図にはない坑道……


そこには、

……

 続きを読む

good 88 bad

22件の返信 ↓


@taki_hubin_sugi 7日前

逃げてえ!!

good 425 bad

65件の返信 ↓


@daily_news_v 

14日前はよ続き。

good 912 bad

214件の返信 ↓





***





『こちらにおわします御三方は、まことある慈しみの心でもって、この地を繁栄させると申しておる!』


 老人が早口の巻き舌で興奮しながら絶叫した。

『マジヤバええ!!』


 煉瓦作りの薄暗い通路に、男たちの野太い巻き舌の声が響き渡った。

 老人が杖を高く掲げ、叫んだ。


「マジヤバヱィィ!!」


 男たちの目も血走っている。狂信者の目だった。

 後ろで日向が小刻みに震えているのが分かった。


 意味が分からない。

 嫌な汗が背中を伝った。


——でも…… 殺される雰囲気じゃなくなってる……?


 そう思った瞬間、張り詰めていた糸がぷつんと切れた。

 さっきまで、極限の緊張と恐怖の連続だった。


 冷静になってみると、このシュールすぎる展開に、頬が自然とぴくついてくる。


——笑っちゃダメ。笑ったらダメだ……、でも……


 そっと日向を振り返る。


『マジャヴァー!!』


 その大柄の鎖帷子の男の叫び声が最後の一押しとなった。


「ぷっ!」


 次の瞬間、日向が吹き出した。


「あーっはっはっはっ!」

「ひゃーっひゃっひゃっ!」

「まじゃばーって!!」


 堪えきれなかった。

 柚月も耐え切れずに笑い出す。

 一度決壊したダムは止まらない。


「マジやばいって! まじゃば…… ぷぷ」


 その笑い声に、その場が静まり返った。


「なあに? なんの冗談?」

 日向がケロッパを揺らす。

「視聴者さん? ドッキリ?」

「……違うと思う」

 私は首を振った。


「お(わら)いに…… なれり……」

 老人の目が見開かれた。


「ガチのやつ?」

「ガチっぽい」

 小声でささやき合う。


「……しっ!」

 私は二人を制した。

 ゆっくりと振り向き、老人の反応を見る。


「我らの祈りを…… 嗤いに変えて、受け入れ給うた……!」


——あ、これまた誤解された。


 私はハッと我に返った。

 笑ってる場合じゃない。


——早く帰って、追試の勉強しないと……


 その時、通路の奥から低い唸り声が響いた。


「グルルル……」


 空気が凍りつく。


——なんか来た!


 老人が血相を変えて叫んだ。


『ものども! 神獣じゃ! 傷をつけてはならぬ!』


 老人が現地語で叫ぶと、男たちが一歩退いた。

 その中を、黒い影がよぎった。


「なに? なんか来るよ……」


 柚月が持っていたライトを照らす。


「おお…… 神の獣の……


 まさか、お召し寄せ給ひしにや……?」



「ハスキーじゃん」


 柚月が声を上げた。


 松明の明かりに照らされて寄ってきたのは、ガリガリに痩せたシベリアンハスキーだった。柚月のライトが赤い首輪についたリングに、キラリと反射した。


「あっ! うちのイタグレのオヤツ持ってる!」


 柚月は背負っていたリュックを下ろして中を探り出した。

 柚月ご自慢のイタリアングレーハウンドのジョジョくんだ。


 スマホの待ち受けにもなっている。

 この状況でも、マイペースなのが柚月なのだ。


「うちの空常承太郎に買ってきたんだけど……」


——こんな時でも、犬優先なんだ……


「いつも、オラついてるから、切らすなって、お父さんが……」


 ビーフジャーキーの袋を開けるとシベリアンハスキーが力なく近寄ってくる。

 警戒は解かないまま歯を剥き出し、(うな)り声を上げた。

 鎖帷子がびくっとして後ずさった。


「可哀想に、こんなに痩せちゃって……」

 柚月は悲しそうな顔をして手を出した。


「いい子だね、お食べ」

 ジャーキーを差し出す。


「グルル……」

「ほら、怖くない」

 ハスキーは能面を見上げて警戒していたようだが、ジャーキーをひったくるようにして噛みついた。


「お腹空いてたんだね……」

 ハスキーはガツガツと(むさぼ)り食った。


 柚月はもう一本ジャーキーを取り出す。

 ハスキーは期待した目で、柚月を見上げた。


「まだ、だめ! ステイ!」


 柚月が手のひらを見せると、ハスキーは腹ばいになった。


「いい子だね」

 そう声を掛けると、ハスキーは柚月の手のジャーキーを舐めた。


「よし!」

 柚月はジャーキーを食べるハスキーの頭を、撫で回した。


 その光景を見て、周囲がざわめいた。


『おおお!! 誰にも懐かなかった神獣が!! 一言で封じるとは!!』

 鎖帷子の人々から興奮した言葉が飛び交った。


「おお……神獣を、手懐(てな)づけ給ひぬ……」


——いや、ジャーキーで釣っただけだから……


 私は頭が痛くなって来た。


「首輪に名前、書いてある」


 柚月はハスキーの頭を撫でながら首輪にライトを当てた。


 SUZAKU


「スザク…… きみはスザク君というのか……」


 その柚月の言葉に、男たちの目が驚愕に見開かれた。


『スザク……』

『……スザク!!』

 ざわめきが広がる。

 どうやら「スザク」という言葉に聞き覚えがあるようだった。


『おお……! 古来より伝わる、スザクの名を言い当て、給うた!』


——いや、ローマ字で書いてあるだけです。


「これぞ奇跡! まさしく、まさしく神の御業(みわざ)なり!!」

『マジヤヴァエーーッ!!』


 男たちのボルテージが最高潮に達した。


「おお……げに、神の(つか)わし給(たま)へる、神獣(しんじゅう)なれば……」


 老人がガタガタと震え出し、その場に平伏(へいふく)した。


「数日前より、主を求めて、吠える神獣の声を、聞くたびに、もしや、もしやと……夜の門を、仰ぎ見ておりました」


「バウッ!」


 「違う」というようにスザクが吠えた。


『皆のもの…… 御神託が下された。このお方たちは、まさしく神である!』


 現地語で叫んだと思うと、私たちに振り返った。


 (おごそ)かに語り出す。


御方(おんかた)がた…… こちらへ、渡らせ、給え」


 もうダメだ、私は首を振った。

 完全に「神さまルート」に入ってしまった。

 私たちは訳も分からず、熱狂する男たちに奥へと導かれていく。


 ハスキーのスザクも柚月の後を追うようについて来た。

 老人を先頭に、導かれるままそこを後にする。


 私は現実逃避するように、ポケットの中のスマホを取り出した。


 19:35 バッテリー52%

 アンテナが一本だけ立っていた。


——え? 電波、つながってる?


 私はスマホを握りしめ、立ち止まった。


 ここは、異世界じゃないの?


 もしかしたら、帰れる……?


 ピロン……


 厳かな空気の中、私のスマホが能天気な通知音を鳴らした。

 全員の視線が私に集まる。


 老人がごくりと喉を鳴らした。


「……まさしく、神の国からの、聖なる調べ…… 啓示にあらずんや……」


 私は恐る恐る画面を見た。


『【Me Tube】あなたの動画が急上昇ランク1位になりました』


——今じゃない!!


 私は心の中で絶叫し、そっとスマホをポケットに戻した。


 これを「神託」だと勘違いされたら、もう後戻りできない気がしたからだ。




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