表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様やめたい ! 〜万バズから始まるJK三人組の異世界勘違い神話  作者: タキ マサト
第五章 裏切りの女神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/84

37話 一件落着


 スミレの笑い声はすぐに止まった。

 そして、御簾(みす)の隙間から手が伸びた。


「こっちいらっしゃい。千尋ちゃん。日向ちゃん。柚月ちゃん?」


 私の名前を知ってる?

 おいでおいでをしている。

 

「千尋……? ……信用できるの?」

 能面の下で私の眉間にしわが寄るのが分かった。

 不信感が強くあった。

 

 都のスラムとここの豪華な、謁見の間のあまりの違い。

 ミヤビさんの隠れ家にいた協力者の人たちは、無事だろうか。


「スミレさんは、私たちと同じ…… 神にされた人…… 信用できると思う……」

 千尋はうなずいた。

「私たちの将来の姿かも、知れないってこと……?」

「……そう、神様にされて。でも、帰れなくて、神様を辞められなかった人」


 私はため息をついた。

 ミヤビさんたちの思い、アベーノたちの思い。

 事態は、私たちが好むと好まざるにかかわらず、動いている。


「なにを内緒話してるの? 早くいらっしゃい」

「行こうよ! 何か美味しいものでも、あるかも知れないよ?」

 日向が目を輝かして言った。


 確かにお腹は空いていた。

 朱雀の背中に乗ったのは、たぶんまだ午前中だった。

 今は、もう太陽は頂点を過ぎていた。


「柚月、大丈夫だと思う」

「分かった」


 私たちは御簾の中に入った。

 一段高いところに絨毯が敷いてある。


「いらっしゃ~い」


 スミレはマスクとゴーグルを外していた。

 胸で手を合わせ、立って待ち受けていた。


「ごめんなさいね。もう少し早く、声をかけるつもりだったんだけど……」

 眉を寄せてそう言った。

「でも、神獣朱雀が飛んでるのが、ずっと見えてたから、ワクワクしちゃってて……」


 御簾の中は、スザクの神殿とは違って明るかった。

 (すだれ)からは驚くほど鮮明に、謁見の間の様子が見渡せた。

 スザクの燃え上がった大きな体が見える。


「みんなも、お面取ってね」


 私たちはお面を外した。

 ほっと息をつく。


「ケロッパ、きれいになってるね」

「そうだ! 千尋のカバン、見つけた!」


 日向がカバンを渡すと、千尋はカバンを抱きしめてしゃがみ込んだ。


「スマホも入ってるよ!」

「ありがとう……ずび……」


 千尋の声が涙ぐんだ。


 藤の椅子が置いてあった。

 奥には扉が見える。


「でも、すごいわね! 本当に神獣、連れてきちゃうんだから!」

「スザク! おいで!」

「わんわん!」


 その声を聞くと、朱雀の体から炎が消えていく。


——ここまでだな…… 白面の女神よ……


 神獣朱雀の思念が響き渡った。


「神獣朱雀?!」 


 私は消えていく炎に声をかけた。


「ザッキー! ありがとう! 楽しかった!」


 その声に笑ったように炎が揺らいだ。


 炎はみるみる縮み、シベリアンハスキーが姿を現した。

 朱雀の後ろにいたアベーノがひっくり返ったのが見えた。


「まさしく、まさしく…… 神獣の、使いで…… そふらふ……」

「スザク!」

 スザクを呼ぶと御簾の間から顔を出した。


「まさか、スザクが神獣……?」

「ハッハッハッ」


 私はスザクの頭を撫で回した。

 シベリアンハスキーは尻尾を振って甘えている。


「なんか、神獣朱雀が、スザクに乗り移ったみたい」

「柚月! すごいじゃん! どうやって神獣を手懐(てなず)けたの?」


 私は手短にスザク山への道のりについて説明した。

 スミレも興味津々に聞いている。


「二日……も?  私、丸一日以上も、寝てたんだ……」

「そんなに私、浄化槽にいたんだ……」


 二人は愕然(がくぜん)としてつぶやいた。


 火の試練のことを話した時、三人は目を見開いた。


「偉大なる母……? ピーコさんの先祖……?」

「女神じゃなかったら、焼け死んでた……?」

「じゃ、私たち、本物の、女神……?」

「……」

「いや、スザクがいたから…… でも、二人で認めてもらった」


 スミレが私たちに手を振って、簾に向き直った。


「モノノーベ! アベーノ! ものども!!」

「は、はー!」

 二人は平伏した。その後ろに戻ってきた神官、騎士、囚人たちもひれ伏した。


「我らは、この大世界を司る四神(しじん)の女神である!!」


 スミレはいたずらっぽく笑って、振り返った。


「モノノーベ! このたびの三女神への冒涜(ぼうとく)! 許し難き所業(しょぎょう)であるといえども、これまでの功績により、上神官への一等級の降格を命ずる!」


 だが、その顔は一転して厳しくなっていた。


「は、はー!」


 神官たちから、納得できないというようなざわめきが起きた。


「アベーノ! 三女神への厚い信仰により、神官長より上神官への一等級の昇級を命ずる!」

「はッ!」


 さらに不服そうな空気感が漂う。


「囚人たちは、乱乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)を働いたもの以外は、解放せよ!」

「はー!」


 だが、逆らおうというものはいなかった。

 モノノーベが、ちらと上げた顔は苦虫を噛み潰しているように見えた。


「ほかのものは、追って沙汰を下す!」

「「はー!!」」

「これにて、一件落着!」


 スミレは私たちにおいでおいでをして、後ろの扉に向かっていく。


「スミレさん、すごい……」

「マジで神!」

 スミレが笑った。


「マジって、久しぶりに聞いたわね。今でも本気(まじ)って使うのね」


 扉の向こうは、落ち着いた明るい部屋だった。


「キンキラだと疲れちゃうし。私はこっちの方がいいのよ」


 スミレは靴を脱いで裸足になった。

 私たちも裸足になる。

 麻のマットにクッションのような座布団が転がっていた。

 石床がひんやりと心地よい。


 スミレは鈴を鳴らした。


『四人分の食事とお茶を』

『かしこまりました……』

 部屋の奥の簾の向こうから女性の声がした。


「それで、帰れるのね?」

 スミレは私たちを見回した。

 千尋がカバンからスマホを出した。

 電源はつかない。


「これが、携帯電話です。電池が切れてるけど……」

「それで、あの勾玉ね」

「残りの勾玉って、やっぱり各地の神殿にあるのかな?」

「ミヤビさんに聞いたら、何かわかるかも?」

「ビャッコの大巫女ね……」


 スミレは微妙な顔をした。

 都に来る前に「偽神」と言い切ったミヤビの顔が思い浮かぶ。


 あの慇懃無礼な不遜な態度で、謁見の間に臨んだのだろうと私は思った。


「スミレさんは何か知ってます?」

 スミレは首を振った。

「私が知ってるのは、ビャッコとセイリューのおよその話を聞いただけ」


 奥から声がかかった。


『大世界神さま、準備が整いましてございます』

『入れ』


 巫女がワゴンを押して入ってくる。


「彼女たちは、目が見えないの。そのままでいいのよ」


 慌てて仮面を取ろうとした私たちをスミレは制した。

 目を閉じた巫女たちが食事とお茶を並べていく。


「うわあ、おいしそう!!」

「お腹空いた……」


 謁見の間からは、ざわめきは消えていた。

 いつの間にか皆、立ち去ったようだった。


「お風呂もあるわよ」

「マジ神!」

「ベッドも?」

「もちろん」

「ほんとに神ッ!」

 

 私たちは、ふかふかのパンと温かなスープと温野菜にがっついた。

 私は巫女たちに食べさせてもらっていたけど、浄化槽にいた日向は空腹の限界だったようだ。


「よくあなた、あの浄化槽から出られたわね?」

「ファヘーノが、ふくってふれたお面があったから……」


 日向は口の中に、パンを突っ込みながら答えた。


「あの地下の広さは、この都と同じくらいの広さがあるの」

 スミレはため息をつきながら話した。

「田んぼ六千枚くらいかな?」

「六千枚……って?」

「そうね、あの夢の国の敷地の三倍くらいの大きさね」

「やば…… 私、よく生きて出られたな」

「どうやって助けるか考えていたけど…… やっぱり、あなたたち本当に女神なんじゃないの?」


 スミレは顔を曇らせた。


「やめてください! 私たち、ただの女子高生です」

「私も、ただの農家の娘よ」


 私たちは顔を見合わせて笑った。


「本当に帰れるのね?」

「そのために、勾玉を集めないと」

「ビャッコとセイリューの神殿に多分あります」

「そういえば、さっき、ビャッコとセイリューの話を……」


 スミレの顔が再び曇った。


「ビャッコは、白い大地。行った事ないけど。ほそぼそと人が暮らしている」

「ミヤビさんたち……?」

「それで、ビャッコの眷属が人を襲ってる……」


「……」


「まずはビャッコに行くか。マカーべも多分いるし」


 日向がお茶を飲み干して、方針を示した。


「ミヤビさんたちも、協力してくれるはず」

 私もうなずいた。

 あの不思議な力を持つ巫女たちが味方についてくれたら、心強い。


 それに——


 玄武は、ヌッシー。

 朱雀は、ザッキー。

 白虎は、ビャッキー?

 白い虎?


 ザッキーみたいに、乗せてくれたらいいな。


 私は巨大な白い虎にまたがって、大地を駆け巡る想像をして胸が(たか)ぶった。


 でも、私はそれよりも、その先が気になっていた。


「……セイリューは?」


 しばらくの沈黙があった。


「人は住んでない…… みたいよ」

「人がいない……?」

「なんで……?」


 嫌な予感が胸を締めつけた。


 スミレが声をひそめた。


「ドラゴンが、暴れ回ってる」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ