26話 スザクの都と黄金の神官
【地図にないトンネル】ヤバすぎ!消えたjk3人組の謎を追う②
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狗猿の月に吼えろ
「はあいくんばんはぁ。私都市伝説チャンネル『月に吼えろ』のいぬざるです。
うおぉぉーん! ウォンッ! さて月に吼えたところでぇ、今回はあの例の動画『地図にないトンネル』ネタです。私あれから動画全ッ部見返して、さらにあの山形教授の論文を読みましたぁ。それで! 新発見したことを考察していきたいと思いまぁす。古来より日本には神隠し、隠れ里など失踪に超常的な現象が関わったと思われる事案がたびたび発生しています。ほとんどは犯罪や事故に巻き込まれたというのが真相でしょうが、今回のこの女子高生三人組失踪事件に限っては、ただのトンネルの崩落に巻き込まれたとは、どうしても思えない。実際に向こうの世界というものはあって、帰ってきた人の証言によりますと『向こうの世界は時間の流れかたが違う』とか『性格が変わってしまった』って話なんですよね。結論から言います。”向こう側”はある可能性が高い。そして時間の流れが違う。失踪した三人は、生きてます。その根拠となるのは、この山形教授の論文……」Me tube自動文字起こし機能。以下続きを読む。
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都の大宮殿の立派な尖塔が夕日に輝いていた。
牛車は峠を降りていく。
「神殿っぽくないね」
「美味しいもの、食べられるかな?」
「もし、スミレ神が、日本人だったら、お風呂とかもあるかも」
私たちは期待に胸を膨らませた。
勾玉をあと二つ集めて、神廟に戻って日本に帰る。
トンネルは崩れたけど、あの扉の向こうはきっと外に出られる。
三人でそう話し合っていた。
「なんか…… 貧乏くさいね……」
「あのお城は、立派だけど?」
時折、現れる物売りが担ぐ野菜や果物は艶がなく、ヒビ割れていた。
薄汚れた村人たちは、光のない目で牛車を見送る。
街道沿いに貧しい民家が増えてきた。峠から見えた城壁の外側には、スラムのような小屋が密集している。
そのさらに先、城門へと続く大通りを塞ぐように、大勢の軍勢が待ち構えていた。
私たちの表情が曇っていく。
「モノノーベって絶対、悪人だよね」
「まだ、神殿の村の方がマシだったよね」
ひそひそとささやき合う。
「スザクの神殿は、ストーク御神より、賜りし土地ゆえ……」
ヨシーノがその会話に口を挟んだ。
「本来、神殿のある、あの我らの土地が、スザクの都であり申した……」
「いろいろ、あるんだねえ……」
私たち一行は、ロート・フォーゲルとアベーノたちのモノノフ千人に囲まれて進んでいく。ビャッコの巫女たちは、ミヤビとともに姿を消していた。
牛車の前方に騎士の軍勢が見えた。
モノノフというよりも西洋の騎士風だった。
城壁の前に、街道を塞ぐように列を作っている。
「なんか、やばそう……」
前を行く牛車が止められた。
アベーノが牛車から降りて、何かを叫んでいる。
「歓迎されてる雰囲気じゃない……」
「あっ! アベーノさん、殴られた……」
「……なんで?」
アベーノは、神官の格好をした一団に囲まれていた。
何かを言い争っている。
アベーノは騎士に縛り上げられた。
「……ヨシーノさん? 何、言ってるの……?」
「……謀られ、申した……」
ヨシーノの声が震えた。
「神をたばかる、不埒なものども…… と申して、ごじゃります……」
「えっ……?」
「なんで……? 亀に女神認定されたじゃん?」
牛車は一気に不穏な空気に包まれた。
「此度の神廟の解放によりて、大神官モノノーベより恩賞のお沙汰が、あり申した……」
「……もしかして、功績を上げすぎた……?」
私はぽつりとつぶやいた。
「どういうこと……?」
「ゲンブまで解放したから、大神官と大世界神の権威を脅かした。神を名乗るものが増えたら、大世界神の価値が下がる……」
「そういうことなの……?」
「分からないけど……」
神官と騎士が数人、私たちの牛車の前まで来た。
牛車は止められた。
一際、立派な服を着た中年の神官が前に出てきた。
趣味の悪い黄金の首飾りをしている。
「大世界神スミレ様の神託により、新たな女神の出現は『偽り』と断じられた!」
流暢な日本語だった。
「大神官モノノーベ様は仰せられた。”偽りの女神は国を乱す”と」
神官が文書を手に大音声で読み上げた。
「辺境の民を惑わし、反乱を企てた罪により、全員捕縛せよとの、大神官モノノーベ様の御裁断が下され給うた!」
「なんて……?」
「それ、言いがかりじゃん!」
「どうなっちゃうの? ヨシーノさん?」
アベーノは後ろ手に縄をかけられ、連行されつつあった。
ロート・フォーゲルが包帯を巻いた姿で、抗議をしているようだったが、何かを言われて、押し黙った。
自らの軍勢を手で押し留めるように、武装解除に大人しく従っている。
私たちの牛車を悔しげな顔で見て、首を振った。
——私たちを人質に、取られた……?
「フォーゲルさんでも、ダメなの?」
「グルルルル……」
スザクが唸り出した。
牛車は騎士に囲まれる。
「女神を偽称するその方ら、大人しく簾をあげい!」
「御主女神さまがた、お面をお付けくださいまし!」
「バウバウッ!!」
ヨシーノが鋭い声を発し、スザクが吠え立てた。
私たちがお面を付けたと同時に簾が引き上げられた。
「きゃあ!」
「ヨシーノさん!」
ヨシーノが騎士により牛車から、引きずり下ろされた。
「ヴァンヴァン!!」
「スザク! ステイ!」
柚月が小さく命ずると、スザクは黙った。
『このまま、連行しろ!』
ヨシーノも縄にかけられ、牛車の御者も騎士に取って代わられた。
牛車は簾を上げたまま、騎士と神官の大軍の中に入っていく。
「日向…… 私たち、どうなっちゃうのかな?」
日向はアベーノから新しくもらった蛙のお面を付けている。
ケロッパとは似ても似つかない不気味なお面。
ひんむかれた目、耳まで裂けた口、まるで呪いのお面のようなそれを見た瞬間、日向は悲鳴を上げたものだった。
「千尋…… これガチ、ヤバいやつ……」
「逃げられないかな……」
柚月がぽつりと言った。
「……逃げるって、どこに……?」
「それよりも、ミヤビさんが助けてくれるかも……?」
「マカーベも、もしかしたら……」
——ミヤビさんは、こうなることを分かっていた?
あるいは、もう捕まってるのかも?
マカ、ベくんは、どこにいるの?
モノノーベのモノノフと神官に囲まれて、牛車は城門に入っていく。
石造りの高い天井と長い通路。
松明の明かりがぼんやりと先を照らしていた。
焦りが募る。
——勾玉を集めて帰るどころか……
死罪も、ある……?
ここから先に入ったら、もう後戻りができない気がした。




