24話 白装束の少女たち
【Ech】オカルト板
【地図にないトンネル】捜索6日目 山形教授現地入り Part17
1: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/24(木) 08:30:11.22
山形教授が今日現地入りするらしい
何するつもりなんだ?
大学に休職届を出したらしい
34: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/24(木) 08:45:33.45
>>1
教授のポスト見た?
「娘は生きている。あのトンネルは物理的な『穴』ではない。
境界として機能している。私は別の方法で接触を試みる」
って書いてあった
67: 地元民 202*/07/24(木) 09:12:22.44
地元の古老に話聞いた。
あのトンネルの場所、昔から「神隠し」が多かったらしい。
50年くらい前にも若い女性が行方不明になって、
3日後に「別の場所」で見つかったって。
本人は「数時間しか経ってない」って主張したらしいけど、
精神的におかしくなったって扱いで終わった。
89: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/24(木) 09:25:11.55
>>67
時間の流れが違う?
タイムスリップ系?
それとも異世界転移?
112: 名無しさん@オカルト好き 202*/07/24(木) 09:34:12.89
大浪府の今城塚古墳の近くにも似たような話があるらしい
継体天皇の墓の周辺で「時間が歪む」って都市伝説
156: puripuri_punipuni_uni 202*/07/24(木) 09:52:11.67
父が娘を探す。
しかし、娘はすでに境の向こう。
黒き者は、白き地で試練を受ける。
次は、鋭き牙を持つ獣。
血が流れる。だが、それは浄化の血。
***
「御主女神さまがた……」
アベーノが立ち上がり、落ちていたケロッパのお面を拾い上げた。
うやうやしく両手で、日向に差し出した。
「なにとぞ…… なにとぞ…… お付けたもれ…… そふらふ……」
日向は薄汚れて、ヒビが入ったプラスチックのお面を受け取った。
ゴムを通す穴が割れているのが見えた。
「女神ってバレたんだから、もういらなくない?」
日向が不満げに言うと、アベーノは首を横に振った。
「なりませぬ。女神は女神でも、ビャッコの女神では、あり申さぬ…… もっと上位の、我らの神。尊き御尊顔を下々の者にお見せになること、あまりにも恐れ多いこと……」
アベーノの声がぞっとするほど厳しくなった。
「ぼろぼろ…… ゴム、通せないんだけど……」
そう言いつつ日向は、大人しくお面を顔に当てがった。
私はダース仮面のヘルメットを持って、ため息をついた。
——もう被りたくない。
でも、外したままだと、この人たちは壊れる。
狂信的なアベーノの目を思い出して、背中がぞくっとする。
ため息をついて傷だらけのヘルメットを被った。
「新しい蛙神の、お面をば…… 早急にご用意、致しまして、そふらふ……」
そして、アベーノは震える手で眼下を指差した。
そこには千名のモノノフとゲンブの村人が手を合わせ、涙を流していた。
泣きながら地面に額をこすりつけ、泥まみれになっていた。
よく見ると白装束の巫女の姿もちらほらと見えた。
「御主女神さまの御威光によりまして、魔性のものは、すべて、土に還りまして、そふらふ……」
カモーノが私たちの前で片膝をついて報告し、アベーノが訳した。
豪雨が血や戦いの後を、きれいに洗い流したようだった。
ロート・フォーゲルとアベーノが私たちを先導していく。
雨上がりの夕日がまぶしく神殿を照らしていた。
私は神殿を振り返った。
あの禍々しく黒ずんだ不気味な神殿の姿は、もうなかった。
静寂の中、私たちは階段をゆっくりと降りていく。
人々の私たちを見る瞳には、「奇跡」を起こした私たちへの深い畏敬と狂信的な光があった。
——マカ、ベくん…… いやだよ、こんなの……
「女神さま…… ゲンブの地は…… ゲンブの住人は…… 魔性のものの、養分と化しておりました……」
階段下に張られた天幕の前で、ミヤビが優雅にひざまずいた。
「生かさず殺さず、生命を吸い取り、死なば、魔性のものにされる…… この世の地獄の地であり申した……」
ミヤビはこの地のことを憂いたように目を伏せた。
——悪い人じゃ、ないんだろうけど……
輝くブロンドと着崩した白装束が、雨に濡れて妖艶な雰囲気を醸し出していた。
大人の女性だった。
ミヤビはすでに崇拝の目はしていなかった。
絶対に勝てない……
——そっちのほうが、女神だよ……
「我ら、ビャッコの女神の巫女も…… 幾たびも解放を試みましたが…… あの首なし騎士には手も足も出ず。……お恥ずかしい限り」
淡々と事務的に語っていく。
「我らでも、敵わなかった首なし騎士、怨霊の浄化…… 女神さまで、あればこそ……」
そういうミヤビだったが、その冷徹な視線は明らかに私たちを値踏みしていた。
女神として信じうるに足るか、あの奇跡と実際の私たちの乖離にどこか納得していないようだった。
「くしょん!」
そのとき日向がくしゃみをした。雨に濡れて体が冷えてきていた。
「女神さまがた…… お召し物は、我々のものでよろしければ、ご用意いたしまする」
私たちは巫女たちに促されるまま、天幕の中に入り、白装束に着替えた。
「これ、なんてコスプレ?」
「千尋、似合うじゃん」
日向は着ていた黄色の派手なTシャツを脱ぎ捨てながら言った。
目立つからという理由で、動画撮影に着てきたやつだ。
泥と汗が雨によって茶色く染まっていた。
私も一週間近く着続けて、すっかり汚れてしまった紺色のキュロットとブラウスを脱ぐ。
身バレを気にして選んだ、自分らしくない「お出かけ用の私服」。
黒ずんだブラウスの袖口を見てため息をつく。
柚月のスキニーパンツも、膝がすり切れて白くなっている。
——みんな、ボロボロ……
「千尋、その髪、下ろすと本当に長いよね」
ヘルメットに押し込むために無理やり束ねていた髪は、雨に濡れて重く肩に張り付いていた。
「でも、ミヤビさんの胸、本当におっきいよね」
私たち三人合わせても敵わなかった。
着替えを手伝ってくれるビャッコの巫女たちは、日本語を話せないようだった。
日本の服を脱いで白装束に袖を通すと、嗅いだことのないお香の匂いが漂った。
ひんやりと乾いた感触が肌に心地よい。
——このまま、この世界に馴染んで、いっちゃわないよね……
私は脱いだ洋服を畳む。
洗濯しないと……
着替えが終わると、私たちはようやく三人になれた。
スザクが柚月の白装束の匂いを嗅いでいる。
「これから、どうなるんだろ?」
「わん!」
「お前も帰りたいよな」
「スザクがいてくれなかったら、私、死んでた……」
頭をかすめたデュラハンの剣を思い出して身震いする。
「夏休みが終わるまでに、帰る!」
日向が寝台の上に立ち上がった。
「夏休み……か」
「……もうこっちに来て、六日くらい経つ?」
私がつぶやいた。
「あの神廟で、マカーベも一緒にトンネルに来れたんだからさ……」
日向が思いついたように言った。
「勾玉があれば、スマホの電波の代わりになるよね?」
——勾玉って、そういえば、三種の神器のあれだよね?
神の道具を使うってこと?
「絶対に帰ろうね」
日向が、私と柚月の手を取った。
「うん」
「……うん」
三人で手を重ねる。
「女神って便利じゃん」
日向が何かいたずらを思いついたような目をして笑った。
「うん…… それな」
「……」
女神の地位を利用するってこと……?
アベーノとミヤビの目を思い出して、そんな簡単じゃない気がした。
「じゃ、次の勾玉はビャッコにあるのかな?」
「ビャッコにも、ヌッシーみたいなの、いるよね? あの亀、デカくて可愛かった」
——爬虫類もいけるのか……
マイペースな柚月の軽口に、私は少しだけ気持ちが軽くなった。
あの玄武の目を思い出す。
あれは、私たちを認めたなんて絶対に違う。
——ケツの青い小娘らが…… って目だった……
ミヤビさんも、そんな目をしてた……
マカ、ベくん……
あれからマカーベはカモーノに連れられて、どこかに姿を消していた。
——また、会えるよね?
ミヤビもマカーベと、どこか親しかった。
ヨシーノのマカーベを見る目を思い出して、ため息をついた。
「明日より、スザクの都へと、渡らせ、たもう、そふらふ……」
アベーノが天幕の外から声をかけた。
そのあとヨシーノが夕食を持ってきた。
燭台の蝋燭が揺れた。
「帰りたい…… かへりたし…… 帰る…… か」
疲れ切った私たちは、ぐったりと寝台に横たわった。
——女神の立場を利用して、勾玉を集める。
「神様やめたい」なんて、言ってられない。
マカ、ベくん……
あの逞しい腕の温もりを思い出す。
でも、「オンアルジメガミさま」って、そんな他人行儀な呼び方、聞きたくなかった。
「お面、外すな」ってまた困った顔で言って欲しい。
頬が緩みかけたとき、私の眉が寄った。
——ピーコって誰?
ミヤビさんとどんな関係なの?
知りたい。
私はもっと彼のことを知りたい。
勾玉を集めて家に帰る。
その時、マカーベくんも一緒に……
私は勾玉を握りしめた。
都合の良い夢を見ながら、私は眠りに落ちた。




