19話 折れた光の剣と二つ目の勾玉
Yafooニュース【速報】
【行方不明JK3人の父親が会見「必ず生きている」】
群玉県前澤市で行方不明となっている女子高校生3人のうち、山形千尋さん
(16)の父親で、群玉大学で古代史を専門とする山形隆教授が21日、記者
会見を開いた。教授は「娘から『無事』『必ず帰る』というメールを受け取
っている。あのトンネルは私の研究対象だった。娘は生きている。そして、
あの場所には特別な意味がある」と述べ、警察に対し「掘削ではなく、別の
アプローチ」を要請していることを明らかにした。教授の研究は「境界儀礼」
を専門としており、「このトンネルは古代から『境』として機能してきた可
能性がある」と主張している。警察は引き続き慎重に捜索を続けている。
(群玉新報・21日 18:34)
コメント欄:
⚪︎nko******
父親の気持ちを考えると…でも「別のアプローチ」って何?
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⚪︎ research_otaku
山形教授の論文読んだことあるけど、マジで境界儀礼の第一人者。
トンネルが「あちら」と「こちら」を繋ぐ装置だって言ってた。
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***
——デュラハン……
全身を包む鋼の鎧。
幅広の刃がついた大剣。
RPGでお馴染みの装備だ、としゃがみ込みながら場違いなことを考えていた。
がちゃりと、それが一歩踏み出した。
——そんな…… 魔性のものって、スケルトンじゃ、ないの……?
スケルトンとは、存在感、圧迫感が全く違う。
私が書く予定の小説だったら、レベル80はないと倒せない。
誰も何も言えなかった。
スザクも尻尾を丸めて、怯えている。
デュラハンがゆっくりと剣を振り上げた。
首から上がない。
代わりに頭を形作る黒い闇が、こちらを「見て」いるのが分かった。
デュラハンの鎧の胸元が光った。
青く輝く光。
——勾玉……
やっぱりあった!
私は振り下ろされるブロードソードを、ただぼんやりと見ていた。
——勾玉見つけたけど、死んだ……
フォースセイバーを握る手が、震えて止まらない。
足が動かない。
声も出ない。
私が目を閉じた時、頭上で激しい金属音が響いた。
「え……」
私の目の前でロート・フォーゲルが大剣で、デュラハンの剣を受け止めているのが見えた。
『ヌアアァァァッ!!』
脳筋のロート・フォーゲルが雄叫びを上げた。
デュラハンの剣を気合いで押し返す。
デュラハンの後ろから数人のモノノフが、剣を閃かせる。
剣が鎧に当たる金属音が響いた。
——それじゃ、ダメ……
ダメージは通らない、きっと……
『ぎゃああ!!』
デュラハンのブロードソードが、モノノフの体を無慈悲に切り裂いた。
私の目の前で血が跳ね、膝から崩れ落ちる。
「ひっ!」
デュラハンの剣の切っ先が、私の方を向いた。
『ウオオオッ!!』
ロート・フォーゲルがその膂力で、剣を押し込み、デュラハンを突き飛ばした。
デュラハンはバランスを崩して、二、三歩後ろに下がったが、倒れず剣を構え直す。
——強すぎる……
こんなの勝てっこない……
私に向かってきてる……
「に、逃げないと……」
「グルルル……」
しかし、体が言うことを聞かない。
足が自分の足ではないみたいだった。
私を守るようにモノノフが剣を構えた。
デュラハンの胸元の勾玉がきらりと輝いた。
私はがたがたと震える手で、フォースセイバーを握りしめた。
デュラハンが剣を振り上げる。
その刃が、松明の明かりで光る。
——死ぬ。
ここで、死ぬ。
お父さん、ごめん。
約束、守れなかった。
ダース仮面の下で息がこもる。
過呼吸で、意識が飛びそうになる。
『かかれ!』
三人のモノノフが同時に切りかかった。
デュラハンはまるで虫を払うように剣を一閃した。
『ぐあっ!』
一瞬で血がほとばしり、三人は崩れ落ちた。
別のモノノフが切り掛かり、返す剣で切り伏せられた。
デュラハンのブロードソードが閃くと、私を守っていた二人も崩れ落ちた。
デュラハンの剣の切っ先が再び私に向いた。
「や、やめて……」
『オォォォッ!!』
ロート・フォーゲルが全力で剣を振り下ろした。
大剣がデュラハンに直撃する。
しかし、鎧に傷一つつかない。
次の瞬間、デュラハンの剣が閃いた。
ロート・フォーゲルの大剣が、真っ二つに折れる。
驚愕の表情のまま、ロート・フォーゲルが吹き飛ばされる。
石柱に叩きつけられ、崩れ落ちた。
動かない。
——嘘…… フォーゲルさんが……?
絶望が、胸を締め付けた。
「バウウゥゥッ!!」
スザクが飛び出した。
デュラハンの足に噛み付く。
ガチャリ…… デュラハンの動きが一瞬止まった。
松明の明かりで首輪のライトが赤く瞬いた。
「スザク! ダメ!」
我に返った私が叫ぶ。
デュラハンがスザクに剣を向けた。
——やめて!
私は無我夢中でフォースセイバーを突き出した。
ブブブ……
びしっ! フォースセイバーのプラスチックの先端が、ひび割れた感触があった。
——どこかに、当たった?
目を開けると、デュラハンの腰当てに赤くヒビが入っているのが見えた。
その鎧が剣を振り上げたまま、雷に撃たれたように止まっている。
フォースセイバーはまだ弱々しく、赤く光っていた。
「やめて!! スザクに触らないでッ!!」
恐怖も理性も吹き飛んだ。
私は半狂乱になりながら、へっぴり腰でフォースセイバーを胸元の勾玉に向かって突き出した。
ミシッ! フォースセイバーに亀裂が入る。
バチバチと小さな電子音を立てて、赤い光が一瞬だけ強く輝いた。
胸元の勾玉の光が消える。
次の瞬間、デュラハンの鎧にもヒビが入っていく。
私の前で、スローモーションのように、後ろに倒れ——
金属音が、神殿内に鳴り響いた。
フォースセイバーは、すでに光が消えていた。
ひび割れたプラスチックの先端から、基盤が見えている。
「壊れ、ちゃった……」
私は荒い呼吸を繰り返していた。
恐怖が今更ながら広がっていく。
フォースセイバーが、手から落ちて乾いた音を立てた。
ものを持てないほど手は震えていた。
やがて、静寂が歓声で破られた。
『ウオオオ!! 魔性のものを! 我が神が、倒した!!』
『マジヤバエッ!!』
——そうだ、勾玉!
私は震える膝で這うように、崩れたデュラハンに近寄る。
バラバラになった鎧の真ん中にそれは、あった。
すでに光を失っていたそれを、私は震える手で握りしめた。
ひんやりとした感触。
これが、私たちを家に帰してくれる鍵?
——あと、二つ。
私はそれを、胸に抱きしめた。




